上 下
6 / 7

6話 アリアハル視点

しおりを挟む
(アリアハル視点)


 私は侯爵令息という立場にある……それだけに相応の相手が必要なのだ。そういう意味ではエトナをゲットできたのは大きいと言えるだろうか。伯爵令嬢という地位の彼女は見た目も相応しく美しい。私の隣に立たせてパーティーに出ることは、それだけでもたらす恩恵があるというものだ。

 周りからも羨ましがられる存在になれる。これは私が侯爵になる上で絶対に必要なことだろう。あと数カ月もすればエトナとの結婚が可能になるだろう。そうすればあの美しい身体を手に入れることができる。それまでは浮気三昧で紛らわせるとするか。まあ、結婚した後も我慢はできないと思うがな。


 エトナを妻として迎え入れれば、さらに貴族の中では確固たる地位につくことが出来るだろう。真に優秀な貴族は美しい相方をめとることが出来る。これは貴族社会ではよく言われていることだ。確か、別の侯爵家は地位は高いがそこそこの見た目の令嬢と結婚したために、良くない噂を流されたとも聞くしな。


「さて、エトナの様子はどうだ? マガレフよ」

 
 隣に立っている執事のマガレフに声を掛けた。

「はっ。本日は例のパーティーに行っているはずです。護衛としてハリングやドーム、セルジュを連れて」

「ああ、そうだったか」


 私は別件で行けなかったが、運よく早く片付いたので戻って来たのだ。まあ、エトナとは色々あったしな。今回のパーティー出席で婚約破棄の件を忘れてくれれば良いのだが。でなければ、軟禁せざるを得ないかもしれん。


「若い娘を軟禁などしたくないからな……」


 マグレフは驚いている様子だった。


「エトナ様にそのようなことをするのは……賛同できませんが……」

「大丈夫だ、心配するな。あくまでも最終手段だからな。わははははははははっ」


 私は笑ってみせたがマグレフは笑ってはいなかった。まあ、当たり前か……はははは。


「エトナ様を軟禁したとなると、いくらアリアハル様でも問題になるかと存じます。あまり、迂闊なことは言われない方がよろしいかと……」

「わかっている。少し、強めに行っただけだ。そんなに邪険にするでない」

「も、申し訳ありません……」



 まったく、冗談の通じない奴だ。まあ、冗談というわけではないのだがな。

 しかし、エトナか……あまりにも私の意向に逆らうようならば、軟禁という手段も辞さないということだろうか。


「エトナを注意してみているのだぞ。なにかあればしっかりと知らせるのだ」

「……畏まりました、アリアハル様」


 何があってもエトナと別れるつもりはない。それだけは分からせないといけないな。ふははははははっ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたのいない世界、うふふ。

やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。 しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。 とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。 =========== 感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。 4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

手のひら返しが凄すぎて引くんですけど

マルローネ
恋愛
男爵令嬢のエリナは侯爵令息のクラウドに婚約破棄をされてしまった。 地位が低すぎるというのがその理由だったのだ。 悲しみに暮れたエリナは新しい恋に生きることを誓った。 新しい相手も見つかった時、侯爵令息のクラウドが急に手のひらを返し始める。 その理由はエリナの父親の地位が急に上がったのが原因だったのだが……。

大好きな彼女と幸せになってください

四季
恋愛
王女ルシエラには婚約者がいる。その名はオリバー、王子である。身分としては問題ない二人。だが、二人の関係は、望ましいとは到底言えそうにないもので……。

【完結】え? いえ殿下、それは私ではないのですが。本当ですよ…?

にがりの少なかった豆腐
恋愛
毎年、年末の王城のホールで行われる夜会 この場は、出会いや一部の貴族の婚約を発表する場として使われている夜会で、今年も去年と同じように何事もなく終えられると思ったのですけれど、今年はどうやら違うようです ふんわり設定です。 ※この作品は過去に公開していた作品を加筆・修正した物です。

王子様、あなたの不貞を私は知っております

岡暁舟
恋愛
第一王子アンソニーの婚約者、正妻として名高い公爵令嬢のクレアは、アンソニーが自分のことをそこまで本気に愛していないことを知っている。彼が夢中になっているのは、同じ公爵令嬢だが、自分よりも大部下品なソーニャだった。 「私は知っております。王子様の不貞を……」 場合によっては離縁……様々な危険をはらんでいたが、クレアはなぜか余裕で? 本編終了しました。明日以降、続編を新たに書いていきます。

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される

琴葉悠
恋愛
 エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。  そんな彼女に婚約者がいた。  彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。  エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。  冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──

処理中です...