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16話
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「ウィンベル……! ど、どうしてここに……!?」
ウィンベルの登場には私達も驚いたけれど、一番驚いていたのはレントだった。普通だったらここまで驚く必要はないのだけれど……後ろめたいことがある証拠とも言える。そのあたりはホルム王子も気付いているだろうけどね。
「セリア様、フィリップ様のことでお話することがあります! ホルム王子殿下、聞いて頂けませんでしょうか?」
「ウィンベル、お前……」
「……」
ウィンベルの気弱な部分が見られなかった。私達も面食らっているけど、それはレントも同じだったようで……。
「構いませんよね、レント様!」
「うぃ、ウィンベル……!」
強気なウィンベル相手に、レントは強く出ることができなかった。こういうところは小心者というか……肝が据わっていないわよね。
「いいだろう、ウィンベル嬢。話があるとのことだが、言ってみてくれないか?」
ホルム王子はそんなウィンベルを、優しく迎え入れたようだ。
「ありがとうございます、ホルム王子殿下。私が話したいことは、いじめの件でございまして……レント様が言ったことは全くの嘘です! 私も加担してしまいましたが、いじめ自体、存在しませんでした!」
「ほう、そういうことか」
「はい! 申し訳ありません!」
ウィンベルは信じられないくらいハッキリとした声で、真相を語った。私なんかよりはるかにハキハキとしゃべっている。なにか吹っ切れたのだろうか。
「ウィンベル! お前は何を言っているんだ!」
「うっ……レント様……!」
「ウィンベル嬢に当たるな、レント。彼女の言葉ではそういうことらしいが、お前は何か弁解することがあるのか?」
あくまでも公平な立場でホルム王子は見ているようだった。頭ごなしにレントを責めたりはしない。王子様の鑑というやつね。
「べ、弁解は……ありません……」
レントが弁解できることは存在しなかった。彼は静かに頷くだけだ。最初からいじめなんてなかったんだから、当然だけれどね。ホルム王子もそのように感じていたのか……
「そうか、よくわかった」
と、一言加えるだけに留まった。
ウィンベルの登場には私達も驚いたけれど、一番驚いていたのはレントだった。普通だったらここまで驚く必要はないのだけれど……後ろめたいことがある証拠とも言える。そのあたりはホルム王子も気付いているだろうけどね。
「セリア様、フィリップ様のことでお話することがあります! ホルム王子殿下、聞いて頂けませんでしょうか?」
「ウィンベル、お前……」
「……」
ウィンベルの気弱な部分が見られなかった。私達も面食らっているけど、それはレントも同じだったようで……。
「構いませんよね、レント様!」
「うぃ、ウィンベル……!」
強気なウィンベル相手に、レントは強く出ることができなかった。こういうところは小心者というか……肝が据わっていないわよね。
「いいだろう、ウィンベル嬢。話があるとのことだが、言ってみてくれないか?」
ホルム王子はそんなウィンベルを、優しく迎え入れたようだ。
「ありがとうございます、ホルム王子殿下。私が話したいことは、いじめの件でございまして……レント様が言ったことは全くの嘘です! 私も加担してしまいましたが、いじめ自体、存在しませんでした!」
「ほう、そういうことか」
「はい! 申し訳ありません!」
ウィンベルは信じられないくらいハッキリとした声で、真相を語った。私なんかよりはるかにハキハキとしゃべっている。なにか吹っ切れたのだろうか。
「ウィンベル! お前は何を言っているんだ!」
「うっ……レント様……!」
「ウィンベル嬢に当たるな、レント。彼女の言葉ではそういうことらしいが、お前は何か弁解することがあるのか?」
あくまでも公平な立場でホルム王子は見ているようだった。頭ごなしにレントを責めたりはしない。王子様の鑑というやつね。
「べ、弁解は……ありません……」
レントが弁解できることは存在しなかった。彼は静かに頷くだけだ。最初からいじめなんてなかったんだから、当然だけれどね。ホルム王子もそのように感じていたのか……
「そうか、よくわかった」
と、一言加えるだけに留まった。
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