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13話 アイシャとチェスター その2

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「チェスター様、アイシャ……この間は本当にごめんなさい。私、どうかしていました」

「ローザ?」


 明るく挨拶をしたと思ったら、急にこの前のことを謝りはじめるローザ。


「ごめんなさい……」


 わざとらしくはないけれど、私から見ると怪しい。チェスター様はどう思っているのかしら?


「あの、チェスター様? 如何いたしましょうか」

「うん、そうですね。私が言えたことではありませんので。やはり、アイシャ様の想いが重要ではないでしょうか」

「なるほど……」

 やはりそうよね。チェスター様は当事者だけれど、私達の事態には無関係だもの。私の判断を尊重してくれる様子のようだ。そうね、私は……。


「前のパーティーのことを謝りたいのなら、グランと一緒に来るべきじゃないかしら?」

「え……それはそうだけれど、何とか先に謝罪だけでもしようかと思って……!」

「ふ~ん」

 なんだかローザの態度がおかしい。気のせいかチェスター様の様子を窺っているようにも見えるし……。まあ、何を企んでいようと、私が言えることは限られてるわね。


「この前のパーティーの件を謝罪したいなら、グランと一緒に来て」

「そ、そんな……私は……」

「そうでなければ認めないし。それに、あなたがグランと婚約して、私を裏切ったことはどのみち許さないわよ」


 妙な噂も流されたのだし、許せるわけはなかった。二人同時に来たら許すというのは、あくまでもこの前のパーティーの件に関してだ。


「ということらしい、ローザ嬢。分かったら出直してきてくれないか? 私達は今、楽しい食事の最中なんだ。それを邪魔しないでもらいたい」

「そんな……チェスター様まで……」

「…………」


 やはり私と言うより、チェスター様を気に掛けているようだ。何となく読めて来た……ローザはチェスター様に対する心証を回復させようとしているのね。私に対する心証ではなくて。


「チェスター様の言う通りよ、ローザ。出直してきてちょうだい。帰らないのなら、私達が出て行くわ」

「アイシャ……わかったわよ……」


 ローザはそう言うと、肩を落としながらレストランから出て行った。なにを企んでいたのかは明確ではないけれど、私とチェスター様を引き離そうとしたとか? グランと私を引き離した過去もあるし、それが目的なのかしらね。

 どのみち、考え無しの行動過ぎるけれど……その後、チェスター様はローザのことなんて気にする様子を見せていなかったし。彼女の計画? は失敗に終わったようね。
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