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6話 グランとローザ その1
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(グラン視点)
僕はローザと二人で私室から窓の外を見ていた。外に広がるのは我が家の庭園だ。伯爵家だけあって結構広く出来ているのだ。
「はあ……私は幸せを手に入れたのね。グランと一緒になることでそれが手に入ると。本当に嬉しいわ」
「そう言ってもらえて僕も嬉しいよ、ローザ。これから僕はコーデル家の当主への上りあがる。そこにローザが隣にいてくれれば、何でもできそうな気がしてしまうよ」
「そうね、グラン。立派な当主様になってくれることを期待しているわ。私に楽をさせてちょうだいね?」
「ははは、ローザってば」
「うふふふふ」
僕とローザの関係は歪なものだった。タイダル王国ではあまり良しとされてない方法で彼女を手に入れることになったのだから。いわゆる浮気……しかも既に身体の関係になってしまっているのだ。結婚どころか、時期を考えてまだ婚約すらしていない二人がだ。しかも、伯爵家に属する二人……。
ローザとアイシャは親友だと思っていた。それはこれからも変わらないだろうと。しかし僕は自らの欲望に負けてしまったのだ。親友であるはずの婚約者であるアイシャを裏切ってしまった。ローザを手に入れる為に。
「うふふふ、私はとても幸せだわ! 鬱陶しいアイシャも消えてくれたし!」
「……ははは」
アイシャとローザはどうやら親友関係にはなれなかったようだ。親友だと思い込んでいたのはアイシャだけなのだろう。17年間親友だと思い込んでいた相手は全くそんなことを考えていなかった……ある意味では滑稽な話だが、可哀想だと思う一面もある。
ローザは自らの欲望にストレートに動くのだ。だからこそ、思い通りにならなかった時は癇癪を起しやすい。そういう一面がある為に昔からローザはアイシャを恨んでいたのではないだろうか。嫉妬と言えば聞こえは良いがそれは可愛い言い方の気がする。彼女はずっと狙っていたに違いないアイシャが失脚するタイミングを。
「そしてそれが今、果たされたということか」
「あら、どうかしたのグラン?」
「いや……少しアイシャのことを考えていただけさ。今頃、どうしているかってね」
それを聞いてローザはさらに笑顔になった。私は少し引いてしまうが……美しい顔であることに変わりはない。
「性懲りもなく幾つかのパーティーには出ているそうよ。周りの反応は予想通り煙たがっているみたいだけれど。なかなか面白いことになっているわね」
「なるほど……オルセイト家の今後を考えれば出席しないわけにはいかないということか」
「まあ、そういうことでしょうね。本当に良い気味だわ。昔から私を差し置いて良い気分に浸っていたあの女の末路というわけね」
親友に対する言葉ではないのは明白だ。やはり昔から恨んでいたのか。まあ、この恨みと言うのは逆恨みでしかないのだろうがな。アイシャがわざとそんなことをするとは考えにくいし。
「そういえば噂では、今の彼女に近づいた物好きがいたらしいわよ」
「ほう、それは初耳だな。どんな人物なんだ?」
「そこまでは分からないけれど、きっと男爵とか身分の低い貴族でしょう。相手が噂のアイシャでも少しでも恩恵にあやかりたいのよ。なんというか……アイシャも可哀想ね」
どの口が言っているのかという突っ込みが飛んできそうだった。まったく、ローザは恐ろしい人物だ。ここまで完璧にアイシャを落とすとは思っていなかったからな。その後に関しても予想通りなのだろうか。それにしてもアイシャに話し相手ができた、か。ローザの言う通り男爵か誰かなのだろうが、それは面白そうだ。
最近はパーティー出席を控えていたがアイシャの様子を窺う為にも出席しても良いかもしれないな。滑稽な彼女の姿が見えるかもしれないし。
僕はローザと二人で私室から窓の外を見ていた。外に広がるのは我が家の庭園だ。伯爵家だけあって結構広く出来ているのだ。
「はあ……私は幸せを手に入れたのね。グランと一緒になることでそれが手に入ると。本当に嬉しいわ」
「そう言ってもらえて僕も嬉しいよ、ローザ。これから僕はコーデル家の当主への上りあがる。そこにローザが隣にいてくれれば、何でもできそうな気がしてしまうよ」
「そうね、グラン。立派な当主様になってくれることを期待しているわ。私に楽をさせてちょうだいね?」
「ははは、ローザってば」
「うふふふふ」
僕とローザの関係は歪なものだった。タイダル王国ではあまり良しとされてない方法で彼女を手に入れることになったのだから。いわゆる浮気……しかも既に身体の関係になってしまっているのだ。結婚どころか、時期を考えてまだ婚約すらしていない二人がだ。しかも、伯爵家に属する二人……。
ローザとアイシャは親友だと思っていた。それはこれからも変わらないだろうと。しかし僕は自らの欲望に負けてしまったのだ。親友であるはずの婚約者であるアイシャを裏切ってしまった。ローザを手に入れる為に。
「うふふふ、私はとても幸せだわ! 鬱陶しいアイシャも消えてくれたし!」
「……ははは」
アイシャとローザはどうやら親友関係にはなれなかったようだ。親友だと思い込んでいたのはアイシャだけなのだろう。17年間親友だと思い込んでいた相手は全くそんなことを考えていなかった……ある意味では滑稽な話だが、可哀想だと思う一面もある。
ローザは自らの欲望にストレートに動くのだ。だからこそ、思い通りにならなかった時は癇癪を起しやすい。そういう一面がある為に昔からローザはアイシャを恨んでいたのではないだろうか。嫉妬と言えば聞こえは良いがそれは可愛い言い方の気がする。彼女はずっと狙っていたに違いないアイシャが失脚するタイミングを。
「そしてそれが今、果たされたということか」
「あら、どうかしたのグラン?」
「いや……少しアイシャのことを考えていただけさ。今頃、どうしているかってね」
それを聞いてローザはさらに笑顔になった。私は少し引いてしまうが……美しい顔であることに変わりはない。
「性懲りもなく幾つかのパーティーには出ているそうよ。周りの反応は予想通り煙たがっているみたいだけれど。なかなか面白いことになっているわね」
「なるほど……オルセイト家の今後を考えれば出席しないわけにはいかないということか」
「まあ、そういうことでしょうね。本当に良い気味だわ。昔から私を差し置いて良い気分に浸っていたあの女の末路というわけね」
親友に対する言葉ではないのは明白だ。やはり昔から恨んでいたのか。まあ、この恨みと言うのは逆恨みでしかないのだろうがな。アイシャがわざとそんなことをするとは考えにくいし。
「そういえば噂では、今の彼女に近づいた物好きがいたらしいわよ」
「ほう、それは初耳だな。どんな人物なんだ?」
「そこまでは分からないけれど、きっと男爵とか身分の低い貴族でしょう。相手が噂のアイシャでも少しでも恩恵にあやかりたいのよ。なんというか……アイシャも可哀想ね」
どの口が言っているのかという突っ込みが飛んできそうだった。まったく、ローザは恐ろしい人物だ。ここまで完璧にアイシャを落とすとは思っていなかったからな。その後に関しても予想通りなのだろうか。それにしてもアイシャに話し相手ができた、か。ローザの言う通り男爵か誰かなのだろうが、それは面白そうだ。
最近はパーティー出席を控えていたがアイシャの様子を窺う為にも出席しても良いかもしれないな。滑稽な彼女の姿が見えるかもしれないし。
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