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20話

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「グレンデル様……久しぶりですね」

「あ、ああ……そうだな、アリス。こうして会えて嬉しいよ」

「そうですか……」


 私としては全く嬉しくない。ハッキリ言ってすぐに追い出したい気さえ起こっている。今さら何の用事で来たのだろうか。

「なにか御用ですか? もうあなたは侯爵ではないはずですので、こうして敬語を使うのもどうかとは思うのですが」


 貴族としての地位すら剥奪されかねない状態だ。私の方が立場は上になっているけれど、いつもの癖で敬語になっていた。護衛の人達が周りを固めてくれなければ、こんなに冷静に対応は出来なかったと思うけど。


「すまない……用件の方を話さなくてはな。もう知っているかと思うが、私は無期謹慎で収容所に閉じ込められるのだ」

「それは聞いています。それで?」


 私はどこまでも無機質だった。グレンデル様と会話することに意味を持てないからだ。早く終わらせてしまいたい。

「そ、それでだな……今は最後の権限を使って、収容所行きを遅らせて貰っている」

「最後の権限って……」


 まだ自分が侯爵閣下だとでも思っているのだろうか。もう二度と戻れない地位のはずなのに……彼の親族は今は大変な時期だろう。グレンデル様にはすぐにでも収容所に入ってもらいたいはずだ。それをギリギリで止めているといったところかしら。

 そんなことを考えていたら、グレンデル様はいきなり土下座をし始めた。

「グレンデル様……?」

「本当にすまなかった、アリス! 今までのことはこの通り、しっかりと謝罪をさせていただきたい!」

 元侯爵とは思えない態度だった。額を庭の地面につけているのだから。何かの冗談にしか見えないけれど。

「どういうつもりですか……? 今さら謝罪って言われても……」

「しっかり謝罪をさせていただき、迷惑料も支払わせていただく! だから、私の減刑をマルクス様に言って貰えないだろうか!? 頼む、この通りだ!」

「……」


 最後の悪あがきがそれか……マルクスの地位を使って減刑をして欲しいなんてね。我が儘にもほどがあるわ。
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