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2話

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「ふう……グレンデル様からの婚約破棄……意外ときついものね……」


 私はアルサード家に戻って来た。お父様たちに婚約破棄の話をして、今は自室にいるのだけれど。じわじわと婚約破棄の悲しみが伝わって来ていた。グレンデル・ボアール侯爵は私の話は聞かずに言い訳ばかりで呆れたけれど。

 彼に振られたことよりも、婚約破棄そのものの事実が嫌だった。私はこれからどういう生活をしていけば良いのだろうか。


「アリス様。まさか、ボアール侯爵が婚約破棄をするなんて……信じられませんわ」

「そうよね、レイチェル。私も驚きでしかないわ」

 言い訳ばかりの男で最後は直角に話を捻じ曲げた。一刻も早く忘れたい存在だけれど、なかなかそうはいかないだろう。ちなみに話している相手はメイドのレイチェルだ。私の同じ18歳になる。


「アレッサ様と浮気をしていたし、程なくして付き合うでしょうね」

「そうなると、パーティーなどではお二人と顔を合わせるということに……」


 レイチェルの言う通りだ。パーティーで出会った場合、グレンデル様の隣にはアレッサ様がいる可能性が高いだろう。ハッキリ言ってそんなシーンは想像したくないけれど、私は捨てられた身として哀れみを受けるかもしれない。

 グレンデル様への批判に繋がればいいんだけれどね。


「はあ、面倒なことになりそうだわ。正直、もう会いたくないのだけれど」

「大変でございますね、アリス様。心中お察しいたします」

「ありがとう、レイチェル」

「あ、そういえばアリス様にお手紙が届いておりましたよ」

「あら、そうなの?」


 最近はグレンデル様の屋敷に行っていたから、アルサード家には帰って来ていなかった。だから、手紙はすっかり見落としていたわ。レイチェルから手紙を受け取って封を開く。

「ええと……あれ? これって……」


 私は自分宛の手紙を読んだのだけれど……その差出人の名前のところで手が止まった。


「マルクス・ファーム……? ええ?」

「マルクス・ファーム様……そのお名前は確か」


 私の幼馴染の名前である。それは良いのだけれど……ええと、マルクス・ファーム大公と書かれていた。えっ、それって……。

「大公殿下って……偉いわよね?」

「当たり前じゃないですか。大公殿下と言えば、王家の次の位と言っても過言ではありませんよ? 我が国の貴族の中では最高位です!」


 レイチェルも貴族出身なのだけれど怒られてしまった。私はどうかしていたわ……でも、あのマルクスが大公殿下って。まさか、そんな地位になっていたの?
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