7 / 9
7話
しおりを挟む「ブルー様! 正確に言ってください! 妹のアニスはどうしているんですか!?」
「め、メリス……いや、それはだな……なんというか……」
「ブルー殿、ちゃんと伝えた方が身のためだぞ? 私を敵に回すのはどうかと思うがな」
「ゆ、ユアン王子殿下……!」
流石のブルー様でもユアンの言葉は無視することができないはず……妹の状況を伝える以外にはないはずだ。
「あ、アニスは……その……!」
「もしかして処女を奪ったと言うんですか? それなら……許せません!」
「う、うう……! メリス……それは……!」
私が屋敷から追い出されてしまった罪……妹であるアニスに対して何も出来なかった罪だ。私はそのことを深く考えていた。だからこそ、ブルー様に強く問いかけているわけで……。
「ブルー殿、観念して答えるんだ」
「ユアン王子殿下……」
「まずは、彼女の妹のアニスについてだ。処女を奪ったと俺達は見ているわけだが……その辺りはどうなんだ?」
「ち、違います……! それは誤解です、王子殿下……!」
あれ? これはもしかすると大丈夫なのかもしれない。私はそのように感じた。この極限の状況で、ブルー様が嘘を吐くとは思えなかったからだ。
「じゃあ、妹は無事なんですね? そうなんですよね、ブルー様!?」
「いや……無事なことは間違いない……私も彼女の処女を奪ったりはしていない……」
「……?」
あれ……なんだろうか、この違和感は……? ブルー様は確かにアニスの処女を奪っていないと言った。それならばもっと、前面に押し出しても良いはず……。この微妙な雰囲気は一体……?
「ブルー殿、メリスの妹であるアニスはどこにいるんだ? 正直に答えろ」
「は、はい……その……現在は地下室の方に……」
「……!?」
地下室……様々な拷問道具が置かれていた場所だ。こんな部屋に運ばれる人がいるのかと疑いたくなるところではあったけれど……まさか、その場所に妹のアニスがいるなんて信じられなかった。
「地下室ですって!? なぜ、そんなところに妹を連れ出したのですか!」
「め、メリス……済まない……色々とあってだな……」
「この男……!」
答えは一つしかない……自らの欲望のために、アニスを地下室へと運び出したのだ。そこで行われていたことは……想像するだけでも恐ろしい。私とユアンはすぐに護衛達を連れて屋敷の地下室へと向かった。
アニス……どうか無事でいてちょうだい……!
0
お気に入りに追加
396
あなたにおすすめの小説
冤罪により婚約破棄されて国外追放された王女は、隣国の王子に結婚を申し込まれました。
香取鞠里
恋愛
「マーガレット、お前は恥だ。この城から、いやこの王国から出ていけ!」
姉の吹き込んだ嘘により、婚約パーティーの日に婚約破棄と勘当、国外追放を受けたマーガレット。
「では、こうしましょう。マーガレット、きみを僕のものにしよう」
けれど、追放された先で隣国の王子に拾われて!?
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
不貞の罪でっち上げで次期王妃の座を奪われましたが、自らの手を下さずとも奪い返してみせますわ。そしてあっさり捨てて差し上げましょう
松ノ木るな
恋愛
カンテミール侯爵家の娘ノエルは理知的で高潔な令嬢と広く認められた次期王妃。その隠れたもうひとつの顔は、ご令嬢方のあいだで大人気の、恋愛小説の作者であった。
ある時彼女を陥れようと画策した令嬢に、物語の原稿を盗まれた上、不貞の日記だとでっち上げの告発をされ、王太子に婚約破棄されてしまう。
そこに彼女の無実を信じると言い切った、麗しき黒衣裳の騎士が現れる。そして彼は言う。
「私があなたをこの窮地から救いあげる。これであなたへの愛の証としよう」
令嬢ノエルが最後に選んだものは…… 地位? それとも愛?
婚約破棄されて無職、家無しになったので、錬金術師になって研究ライフを送ります
かざはなよぞら
恋愛
ソフィー・ド・セイリグ。
彼女はジュリアン王子との婚約発表のパーティー会場にて、婚約破棄を言い渡されてしまう。
理由は錬金術で同じ学園に通うマリオンに対し、危険な嫌がらせ行為を行っていたから。
身に覚えのない理由で、婚約破棄を言い渡され、しかも父親から家から追放されることとなってしまう。
王子との婚約から一転、ソフィーは帰る家もないお金もない、知り合いにも頼れない、生きていくことも難しいほど追い詰められてしまう。
しかし、紆余曲折の末、ソフィーは趣味であった錬金術でお金を稼ぐこととなり、自分の工房を持つことが出来た。
そこからソフィーの錬金術師としての人生が始まっていくのだ――
「婚約破棄、ですね?」
だましだまし
恋愛
「君とは婚約破棄をする!」
「殿下、もう一度仰ってください」
「何度聞いても同じだ!婚約を破棄する!」
「婚約破棄、ですね?」
近頃流行りの物語にある婚約破棄騒動。
まさか私が受けるとは…。
でもしっかり聞きましたからね?
二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。
当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。
しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。
最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。
それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。
婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。
だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。
これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる