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3話
しおりを挟む「メリスとの婚約は破棄だ! 私はアニスと婚約することにする!」
「は、はあ?」
私はブルー様のあまりの言葉に、ついつい気が抜けてしまった。呆けたと言っても過言ではないかもしれない。それほどに彼の言葉は常軌を逸していたからだ。
「何を言っているんですか、ブルー様! いきなり婚約破棄だなんて……! 意味が分かりません!」
今回の事件はブルー様のわがままみたいなものだ。それを静めれば終わるはずの事態……それがなぜか、婚約破棄にまで発展していた。
「婚約破棄は婚約破棄だ、メリス。私は今までのお前の態度が気に入らなかった」
「私の態度が……ですか?」
「ああ、その通りだ。お前は私に嫉妬するあまり、娼婦を連れ込むのにも不満を持っていただろう?」
「それは……」
当り前のことだ。私はブルー様の婚約者なんだから……。どこの世界に夫になる人物が娼婦を連れ込むのを黙認する相手がいるのだろうか。まだ、そういう店に内緒で行くのであればいいんだけれど……声まで聞こえて来ては黙認することも出来ない。これは嫉妬とは別次元の問題だった。例え嫉妬していたとしても、完全にブルー様が悪いのだし……。
「本当に迷惑をしていたんだよ。お前自身は身体を許さないくせして、娼婦を連れ込むのを禁止するその態度がな!」
「まだ結婚してないんですから、身体の関係にならないのは当然じゃないですか」
「何を言っているんだ? そんな昔からの慣習に縛られやがって……お前と言う女は……」
慣習……? まあ、確かに結婚しなければ身体の関係にならないというのは、貴族社会での慣習みたいなものだろうけれど。どうしてブルー様はこんなに変なことを言うのだろうか?
「貴族社会では当たり前のことでしょう?」
「ふん、そんな昔の風習を守っている者がどれだけいるかだな。まあいい……どのみち、お前との婚約は破棄だ。すぐに出て行ってもらおうか」
「な、何を言っているんですか? そんな横暴な……!!」
「お前は終わりだ、メリス。私はアニスと婚約することにするからな」
「ちょっ! ブルー様!?」
ブルー様はこれみよがしにアニスを囲い、私は執事に部屋を追い出されてしまう。護衛達と一緒に……。あり得ない……何がどうなっているの?
「ふざけないでください! ブルー様!!」
「ふざけているのは、お前だ。この屋敷が誰の屋敷か忘れたのか? シルヴィア侯爵家の屋敷だぞ? お前に自由などないのだよ」
「私はあなたの婚約者です!」
「もう、婚約破棄だがな」
「姉さま……!」
「アニス……!」
私は出来る限りの抵抗をしたけど、ブルー様や執事達に逆らうことが出来ずに荷物ごと外へと出されてしまった。
「申し訳ありません、メリス様! あなた様の身の安全しか守ることが出来ずに……!」
「あなた達はアニスの護衛でしょう? 彼女を救えないでどうするのよ。私が言えたことではないけれど……」
「本当に申し訳ありません……シルヴィア家の屋敷で強行手段に出れば、色々とまずいかと思いまして」
「確かにそうね……」
伯爵家が侯爵家に逆らえばどうなるか……それは本当に気を付けなければならない。そういう意味では護衛の態度は正しかったと言えるだろう。とにかく、自分の屋敷に帰って作戦を練らなければ……妹は絶対に助けてみせるわ!
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