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9話 王子殿下が訪れた その2

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「け、ケルビン王子殿下……!?」

「ディノス・カンブリア侯爵令息……それから、メリナ・アールド侯爵令嬢。ずいぶんと楽しい会話をしているな」

「あ、いえ……!」


 ディノス様の真後ろに居た形のケルビン様。確実に聞かれていたことは間違いない。ディノス様もそれが分かっている為に、非常に焦っているのだ。

 周囲の貴族達も何事かと私達を見ているようだった。無駄に注目を浴びているわね。ディノス様とメリナ様にとっては、ハッキリ言って最悪でしょうね……。


「き、聞かれていたのですか……?」

「なんだ? 私に聞かれては困ることだったのか?」

「い、いえ……決してそういうわけでは……」

「それはそうだろうな。まさか、天下のカンブリア家の次期当主ともあろう者が、公共の場で聞かれてマズイ発言をするわけがないからな」

「さ、左様でございますね……ははは……」


 ディノス様はケルビン様に恐れを成している。まあ、先ほどまでの会話を聞かれていたとしたら当然のことだけれど……もしかして、このまま逃げ切れるとか考えているのかしら? そんなわけないわよね。


「リディア、なかなか面白い話をしていたようだが……君の口から聞かせてもらっても構わないかな?」

「分かりました、ケルビン様」


 ケルビン様は私に話すように促しているようだ。その方が、ディノス差やメリナ様にダメージを与えられると踏んでいるのかもしれない。

「こういったパーティーで話す内容ではありませんが、宜しいのですか?」

「ああ、構わない。君に流れている理不尽な噂を消すことにも繋がるだろうからな」


 ケルビン様は即答してくれた。なら、私が遠慮する必要は一切ないわね。

「ディノス様とメリナ様は……」

「ま、待て! リディア!」


 私が話をしようとした時、ディノス様はパーティー会場全体に響く程の叫び声をあげた。私の名前をそんな大きな声で呼ばないで欲しいわ。ただでさえ、私の名前は悪い意味で流れているのに……誰かさんのせいで。

「なんですか? ディノス様……」

「お、落ち着いてくれ、リディア!」

 いや、落ち着くのはあなたでしょう……何を言っているのかしら本当に……。


「私が悪かった……! 謝罪をして慰謝料もしっかりと支払う! だからその……勘弁してくれ!」


 ディノス様は何を勘弁してくれとは言わなかった。まあ、ケルビン様に伝わることを心配したのでしょうけれど……もう遅い。今更、謝罪とか慰謝料支払うとか……舐めているのだろうか。私がそれで首を縦に振るとでも思っているの?
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