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2話

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「別れたという噂までは聞いていたが……まさか、お互いの性格の不一致などではなく、一方的な婚約破棄だったのか……」

「ええ、そういうことになるわね……グレイ」


 グレイに婚約破棄の事情を話したけれど、話していて自分でもまだ信じられなかった。トワイキン様からのまさかの婚約破棄……こんなことが現実に起こるなんてね。彼との婚約時はお父様からも喜ばれ幸せだったのだけれど……人生は本当に分からないものだわ。


「トワイキン・ホース伯爵……評判はそれほど悪くなかったと記憶しているが、単なるクズ人間だったようだな」

「ええ、信じられないけれど」

「婚約破棄を平気で行える人間が伯爵として一定の土地の領主を務めている時点で、貴族社会はマズいと言わざるを得ないな」

「そうかもしれないわね」


 トワイキン様が統治している領民には同情すらしてしまうわ。イメージ的にも嫌だろうしね……。


「まあいい。とりあえず、メローナ君はこれからどうするつもりなんだ?」

「わからないわ。トワイキン様に未練はないけれど……本当に今後、どのように生きて行けばいいのか……」


 理由はどうであれ、私は伯爵様に振られた人間と言うことになる。貴族の間では勝手に私の人間性に言及する者もいるかもしれない。貴族社会は相手を蹴落とすことで上位に立つ風潮も少なからず存在しているからだ。


「婚約破棄された身としては、今後が心配というわけか」

「そうね、グレイ。心配していないと言えばウソになるわ」

「ふむ……そうか」


 少し考えるようにして、グレイは再び口を開いた。


「メローナの立場を考えればそうだな……婚約破棄というレッテルを貼られなければ、幾分かマシになるんじゃないか?」

「それはそうだけれど……レッテルを貼られないようにするにはどうすればいいの? 結構、難しいことだと思うのだけれど……」


 婚約破棄のレッテルが貼られなければ大丈夫なことは間違いない。でも、その貼られない方法が難しいのだった。私程度ではすぐに考えは生まれないわ。

「簡単なことだよ、婚約者が現れればいいんだ。そうすれば、多少の賛否はあれど悪い方向ばかりにはいかないだろう」

「婚約者って……それを見つけるのがどれだけ大変か……」


 婚約破棄された私をすぐに救い上げてくれる人がいるとは思えない。婚約者は慎重になるだろうから……私が再婚約するのはより難しいということになるわね。はあ、どうすればいいのかしら。


「簡単なことだよ。俺が婚約者に名乗りあげればいい。俺に婚約者はまだいないし、問題ないだろう?」

「えっ……グレイ?」


 私は一瞬、彼の言った言葉の意味が理解できなかった……嘘でしょ?
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