2 / 11
2話
しおりを挟む
「別れたという噂までは聞いていたが……まさか、お互いの性格の不一致などではなく、一方的な婚約破棄だったのか……」
「ええ、そういうことになるわね……グレイ」
グレイに婚約破棄の事情を話したけれど、話していて自分でもまだ信じられなかった。トワイキン様からのまさかの婚約破棄……こんなことが現実に起こるなんてね。彼との婚約時はお父様からも喜ばれ幸せだったのだけれど……人生は本当に分からないものだわ。
「トワイキン・ホース伯爵……評判はそれほど悪くなかったと記憶しているが、単なるクズ人間だったようだな」
「ええ、信じられないけれど」
「婚約破棄を平気で行える人間が伯爵として一定の土地の領主を務めている時点で、貴族社会はマズいと言わざるを得ないな」
「そうかもしれないわね」
トワイキン様が統治している領民には同情すらしてしまうわ。イメージ的にも嫌だろうしね……。
「まあいい。とりあえず、メローナ君はこれからどうするつもりなんだ?」
「わからないわ。トワイキン様に未練はないけれど……本当に今後、どのように生きて行けばいいのか……」
理由はどうであれ、私は伯爵様に振られた人間と言うことになる。貴族の間では勝手に私の人間性に言及する者もいるかもしれない。貴族社会は相手を蹴落とすことで上位に立つ風潮も少なからず存在しているからだ。
「婚約破棄された身としては、今後が心配というわけか」
「そうね、グレイ。心配していないと言えばウソになるわ」
「ふむ……そうか」
少し考えるようにして、グレイは再び口を開いた。
「メローナの立場を考えればそうだな……婚約破棄というレッテルを貼られなければ、幾分かマシになるんじゃないか?」
「それはそうだけれど……レッテルを貼られないようにするにはどうすればいいの? 結構、難しいことだと思うのだけれど……」
婚約破棄のレッテルが貼られなければ大丈夫なことは間違いない。でも、その貼られない方法が難しいのだった。私程度ではすぐに考えは生まれないわ。
「簡単なことだよ、婚約者が現れればいいんだ。そうすれば、多少の賛否はあれど悪い方向ばかりにはいかないだろう」
「婚約者って……それを見つけるのがどれだけ大変か……」
婚約破棄された私をすぐに救い上げてくれる人がいるとは思えない。婚約者は慎重になるだろうから……私が再婚約するのはより難しいということになるわね。はあ、どうすればいいのかしら。
「簡単なことだよ。俺が婚約者に名乗りあげればいい。俺に婚約者はまだいないし、問題ないだろう?」
「えっ……グレイ?」
私は一瞬、彼の言った言葉の意味が理解できなかった……嘘でしょ?
「ええ、そういうことになるわね……グレイ」
グレイに婚約破棄の事情を話したけれど、話していて自分でもまだ信じられなかった。トワイキン様からのまさかの婚約破棄……こんなことが現実に起こるなんてね。彼との婚約時はお父様からも喜ばれ幸せだったのだけれど……人生は本当に分からないものだわ。
「トワイキン・ホース伯爵……評判はそれほど悪くなかったと記憶しているが、単なるクズ人間だったようだな」
「ええ、信じられないけれど」
「婚約破棄を平気で行える人間が伯爵として一定の土地の領主を務めている時点で、貴族社会はマズいと言わざるを得ないな」
「そうかもしれないわね」
トワイキン様が統治している領民には同情すらしてしまうわ。イメージ的にも嫌だろうしね……。
「まあいい。とりあえず、メローナ君はこれからどうするつもりなんだ?」
「わからないわ。トワイキン様に未練はないけれど……本当に今後、どのように生きて行けばいいのか……」
理由はどうであれ、私は伯爵様に振られた人間と言うことになる。貴族の間では勝手に私の人間性に言及する者もいるかもしれない。貴族社会は相手を蹴落とすことで上位に立つ風潮も少なからず存在しているからだ。
「婚約破棄された身としては、今後が心配というわけか」
「そうね、グレイ。心配していないと言えばウソになるわ」
「ふむ……そうか」
少し考えるようにして、グレイは再び口を開いた。
「メローナの立場を考えればそうだな……婚約破棄というレッテルを貼られなければ、幾分かマシになるんじゃないか?」
「それはそうだけれど……レッテルを貼られないようにするにはどうすればいいの? 結構、難しいことだと思うのだけれど……」
婚約破棄のレッテルが貼られなければ大丈夫なことは間違いない。でも、その貼られない方法が難しいのだった。私程度ではすぐに考えは生まれないわ。
「簡単なことだよ、婚約者が現れればいいんだ。そうすれば、多少の賛否はあれど悪い方向ばかりにはいかないだろう」
「婚約者って……それを見つけるのがどれだけ大変か……」
婚約破棄された私をすぐに救い上げてくれる人がいるとは思えない。婚約者は慎重になるだろうから……私が再婚約するのはより難しいということになるわね。はあ、どうすればいいのかしら。
「簡単なことだよ。俺が婚約者に名乗りあげればいい。俺に婚約者はまだいないし、問題ないだろう?」
「えっ……グレイ?」
私は一瞬、彼の言った言葉の意味が理解できなかった……嘘でしょ?
1
お気に入りに追加
974
あなたにおすすめの小説
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
【本編完結】番って便利な言葉ね
朝山みどり
恋愛
番だと言われて異世界に召喚されたわたしは、番との永遠の愛に胸躍らせたが、番は迎えに来なかった。
召喚者が持つ能力もなく。番の家も冷たかった。
しかし、能力があることが分かり、わたしは一人で生きて行こうと思った・・・・
本編完結しましたが、ときおり番外編をあげます。
ぜひ読んで下さい。
「第17回恋愛小説大賞」 で奨励賞をいただきました。 ありがとうございます
短編から長編へ変更しました。
62話で完結しました。
【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。
鏑木 うりこ
恋愛
クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!
茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。
ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?
(´・ω・`)普通……。
でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。
全てを諦めた令嬢の幸福
セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。
諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。
※途中シリアスな話もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる