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11話

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「さて、ビルデ・フォース侯爵の屋敷の前に来ているわけだが……エンリ、思うところがあるんじゃないか?」

「そうですね、グリアム国王陛下。思うところは色々あります。ビルデ様には酷い扱いを受けたので」


 婚約破棄の一件の全ての元凶と言っても過言ではない。私のところに動物の死体や不幸の手紙が送られたのも、ビルデ様の責任とも言えるのだから。例え実行犯ではなかったにしても、彼が強引な婚約破棄を行わなければこんなことにはならなかった。


 同様に、彼の信者からの嫌がらせを受けることもなかったわけで……私はビルデ様への恨みを募らせていた。考えられる限りの最大の罰を受けてもらいたいという思いがある。ただ、私が罰を与える立場にはなれないのだけれど、裁判でしかるべき罰は受けて欲しいと思っている。


「さて、では行くとしようか」

「はい、グリアム陛下!」


 私達は気を引き締めながら、ビルデ様の屋敷の門をたたいた───。



--------------------------------------


(ビルデ・フォース侯爵視点)


「グリアム国王陛下とエンリの二人が現れたのだな?」

「はい、ビルデ様。応接室にお通ししてもよろしいでしょうか?」

「仕方あるまい……丁重に通すんだ」

「畏まりました」


 護衛兼執事のハモンドは私の言葉を聞いて去って行った。言い付け通り、二人を応接室に通すのだろう。同時に来ているであろう護衛の面子も通すことになるだろうか。くそ……どうしてこのような事態になったのか。


 私は単に自分の趣味を妻になるはずのエンリに押し付けただけだ。それのどこが悪いと言うのだ? 侯爵と言う立場は領民の管理1つをとってもストレスが伴う。伯爵以下の連中と比べて治める範囲が多いからな。それだけに不満も多く出て来るというものなのだ。それらを処理するには多大な労力を有する。

 領民の中から美人を選択して招き、様々な道具を用いて楽しむ……そのくらいのご褒美がなければ、とてもやっていられない仕事なのだ。それで領民達は平和な暮らしが出来るのだから、安いものではないか?

 それを妻になるはずだったエンリに強制して何が悪いと言うのか……ダメだ、あの国王陛下は理解していない。なんとか理解してもらう必要があるだろう。それは私の話術次第だろうか。

 待っていろ……確実に攻め落としてやるからな。
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