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3話

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「どうしてあんな嫌がらせが起きているのかしら……」


 数日前に起きた動物の死体や不幸の手紙での嫌がらせ……あれ以来、屋敷の外への警備を増やしているから、もう起きないとは思うけれど。気分も悪くなるし最低だわ。


「エンリ様……やはりビルデ・フォース侯爵の手の者の仕業ではないでしょうか。そうとしか考えられません」


 専属のメイドのソフィーが言った。やっぱり彼女もそう考えているのね。まあ、すぐに思いつく人物がビルデ様以外にいないからだろうけどね。


「タイミング的には無関係ではなさそうだけれど。でも、あんな嫌がらせをする意味が分からないわ」


 ビルデ様は強引に婚約破棄をしたのだ。その話しも滞りなく進んでいたはず。その上で私に嫌がらせのつもりで動物の死体や手紙を送って来たのだとしたら、その狙いはなんだろうか? 単なる嫌がらせにしては意味がなさすぎるし酷過ぎる。


 私は犯人がビルデ様と決めつけて考えていたけれど、もう少し柔軟に物事を見た方が良いのかもしれないわね。まあ、犯人捜しは私だけでなくお父様やお母様も行っているはずだから、そちらに任せた方が良いかもしれないわね。


 私が考えても限界があるし……。


「エンリよ。少し話があるのだが……入っても大丈夫か?」

「お父様のようね。はい、大丈夫です!」

 私は直接、扉を開けようとしたけれど、メイドのソフィーが代わりに開けてくれた。

「ありがとう、ソフィー」

「いえ、とんでもないことでございます」

「大丈夫だったか。例の嫌がらせの件に関してなんだが……良いかな?」


 お父様は私の顔色を伺っている。おそらく、気分が悪くなっていないかを心配してくれているのだろう。私は軽く頷いてから答えた。


「大丈夫です、お父様」

「わかった。実は少々進展があってな」

「えっ、犯人が分かったのですか?」

「いや、そういうことではないが……」


 私は前のめりで聞いてしまったけれど、流石にそんなに都合の良い話ではなかったか。ちょっとだけ恥ずかしくなってしまった。


「それでは進展があったというのは、何のことですか?」

「今回の件について、王家に連絡を取ったのだ」

「えっ……王家に?」

「うむ」


 お父様が前に報告をしておくといったのを思い出したけれど……もしかして、相手はサイラス王家だったと言うの? 嘘でしょ……。


「ですが、お父様……サイラス王家が伯爵家の為に動いてくれるのでしょうか?」

「それは心配ない。エンリ、お前には隠していたこともあるしな」

「隠していたことですか……それは一体……」

「まあ、ここで話すのもなんだ。とにかく、王家の方がこちらに来てくれるので、その時に話そうと思う。しばらく、待っていてくれ」

「……」


 私は言葉を失っていた。王家の方が直接、この屋敷に来るというのだから。なんて大事なのかしら……。
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