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4話
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「……ということがありまして。私はボイド・カーティス様に婚約破棄をされてしまいました」
「あらそう。そんな愉快なことがあったの。へえ」
「ね、姉さま……?」
私は内心、ビクビクしながらソアラ姉さまに事の顛末をは話していた。ビクビクする必要がないのは分かっているけれど、条件反射というやつかもしれない。
ボイド様の裏切りとイレーヌという令嬢との浮気、そして婚約破棄……この辺り全てを話し終えた時、ソアラ姉さまの表情は明らかに変化していた。
「ソアラ姉さま……?」
「あら、ごめんなさいね。何かしら? レミュラ」
しかし、私がもう一度話しかけると、いつもの優しい姉さまの表情に戻っていた。私を怖がらせない為の配慮をしてくれたのかもしれない。
メイドのライザも顔色を変えながら見守っている。私の話を聞いて、ソアラ姉さまがどういう行動に出るのかを警戒しているのだろう。このタイミングで話して大丈夫だったのかな……なんだかとても怖くなってきた……。
----------------------
「ふふふ、ボイド・カーティス公爵。なかなか、面白いことをしてくれたわね」
「失礼ながら姉さま。面白いことでございますか……?」
「面白いことじゃない。私のレミュラとの婚約を理不尽過ぎる理由で破棄するなんて……面白い、という以外の形容の仕方が思いつかないわ」
ソアラ姉さまは表情こそ通常通りだけれど、その言葉遣いや語気の強さはいつもとは違っていた。面白い、という言葉を使っているのも変だし。
まるで、内側から溢れ出て来る怒りを必死に抑えようとしているような……そんな雰囲気が出ている。
「ら、ライザ……!」
「は、はい! レミュラ様、如何なさいましたか?」
「こ、紅茶のおかわりを貰えるかしら?」
「畏まりました、今すぐ!」
「なら、私もついでに頂ける?」
「は、はい……! すぐにお持ち致します……!」
すぐ近くに紅茶の入ったポットがあったはずなのに、ライザはそのまま部屋から出て行ってしまった。おそらくは緊張のあまり、まともな行動が取れていないんだと思う。あの様子だと、調理場に取りに行ったのかな?
「やれやれ、ライザは一体、どういうつもりなのかしら……? 新手のギャグのつもり?」
「さ、さあ……どういうつもりでしょうね……あはははっ」
ソアラ姉さまは溜息を付きながら、自らポットを持ってきて私のカップに紅茶を淹れてくれた。自分のにも淹れる。
「あ、ありがとうございます、姉さま」
「いいのよ、気にしないで。悲しみの真っただ中にあるあなたに、この動作はキツイかもしれないでしょう?」
「あ、あはは……」
流石に紅茶を淹れるくらいは可能だけど……というよりも、ソアラ姉さまのおかげで悲しみが薄らいでいることを実感していた。正確には薄らいでいるというよりも、姉さまのインパクトの強さが勝っているだけではあるけれど。
「さてと、レミュラ」
「は、はい……!」
「婚約破棄だなんて酷い仕打ちを受けてよく耐えたわね。それでこそ、シェルブール家の次女だわ」
「姉さま……ありがとうございます……」
私は再び涙が溢れていた。先ほどまで忘れていたのが嘘のようだ。
「ボイド・カーティスとイレーヌ・ミラーには、しっかりと報いを受けてもらうとして……1つ提案があるのだけれど」
「提案でございますか? なんでしょうか?」
「今度、サンピエス宮殿にて王族の方々も参加する舞踏会があるの。そこに参加してくれないかしら?」
「えっ、そんな格式の高い舞踏会に……?」
「ええ」
ソアラ姉さまはさも当然のように相槌を打っているけれど、私の心臓は急に鼓動を早めだした。格式が非常に高い舞踏会への参加……その言葉を聞くだけでこのありさまなんだから。
「あらそう。そんな愉快なことがあったの。へえ」
「ね、姉さま……?」
私は内心、ビクビクしながらソアラ姉さまに事の顛末をは話していた。ビクビクする必要がないのは分かっているけれど、条件反射というやつかもしれない。
ボイド様の裏切りとイレーヌという令嬢との浮気、そして婚約破棄……この辺り全てを話し終えた時、ソアラ姉さまの表情は明らかに変化していた。
「ソアラ姉さま……?」
「あら、ごめんなさいね。何かしら? レミュラ」
しかし、私がもう一度話しかけると、いつもの優しい姉さまの表情に戻っていた。私を怖がらせない為の配慮をしてくれたのかもしれない。
メイドのライザも顔色を変えながら見守っている。私の話を聞いて、ソアラ姉さまがどういう行動に出るのかを警戒しているのだろう。このタイミングで話して大丈夫だったのかな……なんだかとても怖くなってきた……。
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「ふふふ、ボイド・カーティス公爵。なかなか、面白いことをしてくれたわね」
「失礼ながら姉さま。面白いことでございますか……?」
「面白いことじゃない。私のレミュラとの婚約を理不尽過ぎる理由で破棄するなんて……面白い、という以外の形容の仕方が思いつかないわ」
ソアラ姉さまは表情こそ通常通りだけれど、その言葉遣いや語気の強さはいつもとは違っていた。面白い、という言葉を使っているのも変だし。
まるで、内側から溢れ出て来る怒りを必死に抑えようとしているような……そんな雰囲気が出ている。
「ら、ライザ……!」
「は、はい! レミュラ様、如何なさいましたか?」
「こ、紅茶のおかわりを貰えるかしら?」
「畏まりました、今すぐ!」
「なら、私もついでに頂ける?」
「は、はい……! すぐにお持ち致します……!」
すぐ近くに紅茶の入ったポットがあったはずなのに、ライザはそのまま部屋から出て行ってしまった。おそらくは緊張のあまり、まともな行動が取れていないんだと思う。あの様子だと、調理場に取りに行ったのかな?
「やれやれ、ライザは一体、どういうつもりなのかしら……? 新手のギャグのつもり?」
「さ、さあ……どういうつもりでしょうね……あはははっ」
ソアラ姉さまは溜息を付きながら、自らポットを持ってきて私のカップに紅茶を淹れてくれた。自分のにも淹れる。
「あ、ありがとうございます、姉さま」
「いいのよ、気にしないで。悲しみの真っただ中にあるあなたに、この動作はキツイかもしれないでしょう?」
「あ、あはは……」
流石に紅茶を淹れるくらいは可能だけど……というよりも、ソアラ姉さまのおかげで悲しみが薄らいでいることを実感していた。正確には薄らいでいるというよりも、姉さまのインパクトの強さが勝っているだけではあるけれど。
「さてと、レミュラ」
「は、はい……!」
「婚約破棄だなんて酷い仕打ちを受けてよく耐えたわね。それでこそ、シェルブール家の次女だわ」
「姉さま……ありがとうございます……」
私は再び涙が溢れていた。先ほどまで忘れていたのが嘘のようだ。
「ボイド・カーティスとイレーヌ・ミラーには、しっかりと報いを受けてもらうとして……1つ提案があるのだけれど」
「提案でございますか? なんでしょうか?」
「今度、サンピエス宮殿にて王族の方々も参加する舞踏会があるの。そこに参加してくれないかしら?」
「えっ、そんな格式の高い舞踏会に……?」
「ええ」
ソアラ姉さまはさも当然のように相槌を打っているけれど、私の心臓は急に鼓動を早めだした。格式が非常に高い舞踏会への参加……その言葉を聞くだけでこのありさまなんだから。
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