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44話 アメリアとのデート その2
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「はい、春人。あ~~~んっ」
「い、いや……アメリア。こういうのは不味いって」
彼らは裏路地を離れ、時計塔近くまで足を運んでいた。そして、これ見よがしに近くの店で購入したパンを春人に食べさせようとするアメリア。周囲は当然彼らに気付いており、小さな歓声が聞こえていた。
「なんでよ? いやなの?」
「嫌と言うわけじゃないけど……周囲の目もあるしさ」
「今更でしょ? 私たちなんてとっくに噂されてるんだから」
そう言いながらアメリアは春人の口にパンを強引に押し込んだ。押し込まれた春人は吐き出すわけにはいかず、そのまま食べることになる。二人きりであればともかく、この公衆の面前ではただのバカップルだ。以前のキスが要因なのか、アメリアは大胆な行動を春人に対してするようになっていた。
「どう? おいしい?」
「そりゃ、旨いけど……一応、エミルとは付き合ってる設定なんだしさ……こういうのは」
「と言っても、偽の恋人って噂も広まってるみたいよ? それ以上に、ソード&メイジが彼女をガードしてるって言われてるから、今まで以上にエミルの安全は確保できてると思うけど」
春人としても初耳な言葉だった。エミルとの恋人関係が偽であると漏れている……それはアメリアとの関係性などからも仕方ないかもしれない。
しかし、ソード&メイジが守っているという噂はいい傾向と言える。おそらく、アメリアがバーモンドの酒場に下宿したことから広まったのだろうと、春人は考えた。
「ま、そんなわけだから。私と仲良くしてても問題ないでしょ?」
「え~、そうかな……? ま、まあ……」
春人としてはアメリアと仲良くすることに異存はない。ただし、脳裏に焼き付く乾いたエミルの笑いを無視できればだが。
「ほら、向こう言ってみようよ」
「あ、うん……」
そんな煮え切らない春人を前に、アメリアは積極的に彼の腕を取り、雑貨屋の方向へと足を進めた。
----------------------------------
「やっぱり、この辺りは色々な店が揃ってていいわね」
「まあ、そうだね」
二人が訪れた場所は、春人が初めてエミルとデートした場所でもあった。巨大な池がある観光地だ。春とはエミルと何度か来ている釣り堀を眺めていたが、アメリアはアクセサリーショップを見ていた。
「なにか、欲しい物とかあるの?」
「えっと……これ」
少し恥ずかしそうにしながらも、アメリアはしっかりとした態度で指差しをして欲しい物を春人に伝えた。
それは……ペアリングだった。ゴールド調のシンプルなデザインだが、価格はそれなりにしそうな雰囲気だ。
「こ、これは……ええ!?」
「嫌? ……春人は」
アメリアからの魅惑的な言葉……彼女はそのペアリングを春人と一緒に付けることを望んでいる。春人としてもそれは理解できた……嫌なはずはない。
「い、嫌なわけはないけど……」
「なら、さ。いいでしょ?」
春人の中にはエミルを初め、様々な人物の顔が思い浮かべられた。しかし、首を払って妙な雑念は振り解く。
彼は、頭の中に渦巻く色々な感情を押し殺したのだ。今、パートナーのアメリアが望んでいること。それを断る理由なんて、自分にはないと言える。春人はそのように考えをまとめた。
「アメリアが欲しいなら……買おうか」
「ホント? よかった……えへへ」
普段のアメリアからは、あまり想像できない嬉しそうな表情。春人は思わず顔が熱くなるのを感じた。そして、そのままの勢いで金のペアリングを購入する。価格は5万ゴールドだったが、彼らからすれば大した額ではない。
「はい、アメリア」
「ん、ありがと……どこの指に付けようかな~? ねえ、春人?」
そんなことを言いながら、アメリアは笑顔で春人に回答を求める。春人としても、非常に恥ずかしくなる問いかけだ。
どこの指にするのか……彼としては、全ての指の意味は到底、知り得なかったが、ここの世界の常識も日本と同じであれば薬指はまだ避けた方が無難だ。そのような考えを持ちながら、春人は回答を導き出した。
「小指……とか?」
「まあ、無難なところかしらね。じゃあ、春人も早く付けてよ」
春人は自分の回答が、なかなか上手く言ったことに安堵していた。アメリアは嬉しそうにペアリングの片方を左手の小指に付けた。春人も彼女に続いて、同じ場所に付ける。
「あれ?」
と、その時、春人は重要なことに気が付いた。
「ん? どうしたの?」
アメリアも不思議そうな顔をする。ペアリングを付けた……ということは……少し、春人の顔が青ざめる。
「これ……ずっと付けてるの?」
「当たり前でしょ? 外していいのはお風呂か、寝る時くらいよ」
彼は言葉を失った。ペアリングを付けるというのは、当然そのような意味合いがある。つまり、春人はエミルに見られることを、潜在的に恐れていたのだ。
「う、うん……まあ、そうだよね……あはははっ」
「言っておくけど、エミルの前で外すとかしたら、怒るから」
アメリアは春人が想像していることがわかったのか、先に釘を刺してきた。これでは春人は逃げ場がない。そして、そのまま春人に抱き着くアメリア。
「あ、あの……色々と、危険な香りが……」
「まあ、女たらしの春人が悪いのよ。いいじゃない、役得でしょ」
アメリアは春人に抱き着きながらそう言った。役得と言えばそうかもしれない。春人としても、納得できる気持ちもあるが、女たらしについては彼の本意ではなかった。
「別に、俺は女たらしじゃないよ……」
「何言ってんのよ、このスケベ。今まで、自分はモテないとか思って周囲に優しさを振りまいて来たツケでしょ。バカ……ホント、バカ……」
アメリアは少しむくれた表情で言った。そのしぐさはとても可愛く、思わず春人も抱きしめたくなるほどであった。こんな彼女の表情を見られるなら、今の立場は悪くないかもしれない……彼は知らず知らずの間に、女たらしの道を加速させていた。
「アメリアも色々と反則だと思う……はあ」
「? どういう意味よ? まあ、いいわ。ね、向こうも見てみましょうよ」
アメリアは春人とのデートが余程楽しいのか、違う店にも興味を持って春人を促した。春人もそんなアメリアに笑いかけながら、彼女の後を追うように追いかけた。二人のデートはその後もしばらく続いたという。
「い、いや……アメリア。こういうのは不味いって」
彼らは裏路地を離れ、時計塔近くまで足を運んでいた。そして、これ見よがしに近くの店で購入したパンを春人に食べさせようとするアメリア。周囲は当然彼らに気付いており、小さな歓声が聞こえていた。
「なんでよ? いやなの?」
「嫌と言うわけじゃないけど……周囲の目もあるしさ」
「今更でしょ? 私たちなんてとっくに噂されてるんだから」
そう言いながらアメリアは春人の口にパンを強引に押し込んだ。押し込まれた春人は吐き出すわけにはいかず、そのまま食べることになる。二人きりであればともかく、この公衆の面前ではただのバカップルだ。以前のキスが要因なのか、アメリアは大胆な行動を春人に対してするようになっていた。
「どう? おいしい?」
「そりゃ、旨いけど……一応、エミルとは付き合ってる設定なんだしさ……こういうのは」
「と言っても、偽の恋人って噂も広まってるみたいよ? それ以上に、ソード&メイジが彼女をガードしてるって言われてるから、今まで以上にエミルの安全は確保できてると思うけど」
春人としても初耳な言葉だった。エミルとの恋人関係が偽であると漏れている……それはアメリアとの関係性などからも仕方ないかもしれない。
しかし、ソード&メイジが守っているという噂はいい傾向と言える。おそらく、アメリアがバーモンドの酒場に下宿したことから広まったのだろうと、春人は考えた。
「ま、そんなわけだから。私と仲良くしてても問題ないでしょ?」
「え~、そうかな……? ま、まあ……」
春人としてはアメリアと仲良くすることに異存はない。ただし、脳裏に焼き付く乾いたエミルの笑いを無視できればだが。
「ほら、向こう言ってみようよ」
「あ、うん……」
そんな煮え切らない春人を前に、アメリアは積極的に彼の腕を取り、雑貨屋の方向へと足を進めた。
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「やっぱり、この辺りは色々な店が揃ってていいわね」
「まあ、そうだね」
二人が訪れた場所は、春人が初めてエミルとデートした場所でもあった。巨大な池がある観光地だ。春とはエミルと何度か来ている釣り堀を眺めていたが、アメリアはアクセサリーショップを見ていた。
「なにか、欲しい物とかあるの?」
「えっと……これ」
少し恥ずかしそうにしながらも、アメリアはしっかりとした態度で指差しをして欲しい物を春人に伝えた。
それは……ペアリングだった。ゴールド調のシンプルなデザインだが、価格はそれなりにしそうな雰囲気だ。
「こ、これは……ええ!?」
「嫌? ……春人は」
アメリアからの魅惑的な言葉……彼女はそのペアリングを春人と一緒に付けることを望んでいる。春人としてもそれは理解できた……嫌なはずはない。
「い、嫌なわけはないけど……」
「なら、さ。いいでしょ?」
春人の中にはエミルを初め、様々な人物の顔が思い浮かべられた。しかし、首を払って妙な雑念は振り解く。
彼は、頭の中に渦巻く色々な感情を押し殺したのだ。今、パートナーのアメリアが望んでいること。それを断る理由なんて、自分にはないと言える。春人はそのように考えをまとめた。
「アメリアが欲しいなら……買おうか」
「ホント? よかった……えへへ」
普段のアメリアからは、あまり想像できない嬉しそうな表情。春人は思わず顔が熱くなるのを感じた。そして、そのままの勢いで金のペアリングを購入する。価格は5万ゴールドだったが、彼らからすれば大した額ではない。
「はい、アメリア」
「ん、ありがと……どこの指に付けようかな~? ねえ、春人?」
そんなことを言いながら、アメリアは笑顔で春人に回答を求める。春人としても、非常に恥ずかしくなる問いかけだ。
どこの指にするのか……彼としては、全ての指の意味は到底、知り得なかったが、ここの世界の常識も日本と同じであれば薬指はまだ避けた方が無難だ。そのような考えを持ちながら、春人は回答を導き出した。
「小指……とか?」
「まあ、無難なところかしらね。じゃあ、春人も早く付けてよ」
春人は自分の回答が、なかなか上手く言ったことに安堵していた。アメリアは嬉しそうにペアリングの片方を左手の小指に付けた。春人も彼女に続いて、同じ場所に付ける。
「あれ?」
と、その時、春人は重要なことに気が付いた。
「ん? どうしたの?」
アメリアも不思議そうな顔をする。ペアリングを付けた……ということは……少し、春人の顔が青ざめる。
「これ……ずっと付けてるの?」
「当たり前でしょ? 外していいのはお風呂か、寝る時くらいよ」
彼は言葉を失った。ペアリングを付けるというのは、当然そのような意味合いがある。つまり、春人はエミルに見られることを、潜在的に恐れていたのだ。
「う、うん……まあ、そうだよね……あはははっ」
「言っておくけど、エミルの前で外すとかしたら、怒るから」
アメリアは春人が想像していることがわかったのか、先に釘を刺してきた。これでは春人は逃げ場がない。そして、そのまま春人に抱き着くアメリア。
「あ、あの……色々と、危険な香りが……」
「まあ、女たらしの春人が悪いのよ。いいじゃない、役得でしょ」
アメリアは春人に抱き着きながらそう言った。役得と言えばそうかもしれない。春人としても、納得できる気持ちもあるが、女たらしについては彼の本意ではなかった。
「別に、俺は女たらしじゃないよ……」
「何言ってんのよ、このスケベ。今まで、自分はモテないとか思って周囲に優しさを振りまいて来たツケでしょ。バカ……ホント、バカ……」
アメリアは少しむくれた表情で言った。そのしぐさはとても可愛く、思わず春人も抱きしめたくなるほどであった。こんな彼女の表情を見られるなら、今の立場は悪くないかもしれない……彼は知らず知らずの間に、女たらしの道を加速させていた。
「アメリアも色々と反則だと思う……はあ」
「? どういう意味よ? まあ、いいわ。ね、向こうも見てみましょうよ」
アメリアは春人とのデートが余程楽しいのか、違う店にも興味を持って春人を促した。春人もそんなアメリアに笑いかけながら、彼女の後を追うように追いかけた。二人のデートはその後もしばらく続いたという。
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