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8話
しおりを挟むシグマ様の告白は嬉しかった。私は現在はライド様への愛情がないから、シグマ様の方が好きとさえ言えるし。でも、私はライド様を選んだ。私は彼とは一緒になれない。
「ライド様、シグマ様はまだこの屋敷に出入りされるんですか?」
「どうしてだ、シルヴィア? なにか問題でもあったのか?」
「え、ええ……問題と言うか、なんというか」
「……」
ライド様は明らかに怪しんでいるようだった。シグマ様の近くにいなければ大丈夫……そんな風に考えてシグマ様を屋敷から離すように、それとなく伝えてみたけれど。逆にライド様の不信を買ってしまったようだ。前みたいにキレないといいけれど……。
「シグマのことが好きなんだろう? シルヴィア」
「えっ? な、何のことですか……?」
「隠さなくてもいい。お前達がお互いをどう思っているのかは、前々から分かっていた。だからこそ、婚約破棄の話に発展したのだからな」
ライド様はどうやら見抜いているようだった。それに意外と冷静だわ……もしかすると、私が告白されたことも気付いているかもしれない。
「聡明なお前のことだ。シグマから何かを言われ、危険だと判断してシグマから離れようとしているんだろう?」
「ど、どうしてそんなことが分かるんですか……?」
的を得た回答に私は驚いてしまった。まさか、あのライド様がそこまで見抜いているなんて……信じれない。
「あの婚約破棄の日から、少し冷静にお前のことを観察していたんだ。そうすると見えて来るものがあった。おそらくお前は私に対して愛情は持っていないことも分かっているさ」
「ら、ライド様……そんなことは」
「隠さなくてもいい。これもシグマの存在のおかげなんだ。私に考える時をくれた」
「考える時ですか……?」
「ああ。私はお前を失いたくはない」
シグマ様に続いてライド様からの告白だった。これは意外な展開だ。何よりもライド様が怒っていないのが意外だった。
「シグマはシルヴィアの隣に立てる器量を持っているだろう。しかし、今の私は隣には立てない。見ていてくれ、必ず今までの自分を反省し、お前の隣に立てる男になってみせる」
「ライド様……まさか、そのようなことをおっしゃるなんて……」
「お前と今後、苦楽を共にするのなら、お前の能力に見合った人間にならなくてはな。まずは読書から開始しようと思う。知識は持っているに越したことがないからな」
ライド様なりの心構えの変化だった。まさか、ここまで言ってくれるなんて思わなかったけれど……私はとても嬉しい。
「ライド様、とても嬉しいです。ですが、あまり無理はしないようにしてくださいね? 私もサポート致しますので」
「無理をしなければシグマに取られてしまうからな。倒れない程度には頑張らなくては」
「あはは……」
ライド様が私と同等の能力を身に付ける為に頑張ってくれる……そんなことは期待していなかったけれど、まさか実現する可能性が出て来るなんて。その実現のためにはシグマ様の存在が必要不可欠なわけか。ライド様を奮い立たせる存在が近くにいないと駄目なわけね。
正直、私はどういう顔をしてシグマ様に会えばいいか分からない。でも、ライド様の考えは分かるので、それが正しいのだと思う。私とライド様、シグマ様の三角関係……それはこれからも続いていくのだった。
さて、どういう結末を迎えるのかしらね……それは誰にも分からないわ。
おしまい
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【著作者:天羽尤】【無断転載禁止】【以下のサイトでのみ掲載を認めます。これ以外は無断転載です〔小説家になろう/カクヨム/アルファポリス/マグネット〕】
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