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20話
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「ああ……1ついいかな、デナン殿」
「は、はい……なんでしょうか、バルサーク様?」
「今回、私やローザ嬢が訪れた理由をちゃんと理解しているのか?」
まずはそこからの話だった。デナン様はきっと焦りが先行していて、まともに状況を呑み込めていないだろうから。バルサーク様は出来る限り冷静に話を続けている。嘘を吐けばそこで終了……という雰囲気を出しながら。
「そ、それは……私の新しい婚約者のリシェル・クラウドの暴走について、ということは理解しております」
「暴走、と言う言葉がやけに他人行儀ではあるが……正しく理解できているようで安心したよ」
「あ、ありがとうございます……」
バルサーク様は少年をあやしている大人のような態度だ。それくらい、デナン様が幼く見えてしまう。こんなにデナン様って幼かったっけ? 彼の本性が分かる前までの態度はもっと大人なイメージだったけど……モルドレート家の当主、侯爵様の肩書きに恥じないレベルで。
「リシェル嬢、質問があるのだが?」
「は、はい……バルサーク様! なんでしょうか?」
いきなり話しかけられたリシェルは、バルサーク様に慌てて向き直っていた。最早、完全に従順な配下になっているわね……。ますます、デナン様は自らの罪から逃れられなくなっている気がする。実行犯のリシェルがこちらの味方になっているのだから。
「リシェル嬢のローザハウス奪取事件についてだが、デナン殿はどうやら、其方の暴走と言う言葉で片付けようとしているらしいぞ」
「えっ、そ、そんな……」
リシェルは不満気にデナン様を睨んでいた。デナン様はその睨みに恐れおののいている。
「バルサーク様、よろしいでしょうか?」
「ああ、バーン。上手くまとめてもらえるか?」
「畏まりました。デナン・モルドレート侯爵は理不尽な婚約破棄を行い、その新しい相手であるリシェル様の暴走を黙認していたのでしょう。この屋敷の使用人達がローザハウスの奪取に加担していることから、デナン様がどの程度状況を把握していたかは、大した問題ではないと思われます」
「うむ、分かりやすいまとめをありがとう」
「ありがとうございます」
デナン様がどの程度知っていたかというのは、大した問題ではない……というところがミソね。バーンさんって、いつの間にデナン様の執事として潜入していたのかしら……? 不思議だわ。
「リシェル嬢、もう一度聞くが……なぜ、ローザハウスを奪取するなんて行動に出たのだ?」
「そ、それは……デナン様の名前があれば、もみ消せると考えたからです……」
「随分と短絡的な考えだな。若気の至りなのかもしれないが……いや、そんな言葉では言い表せないか」
「も、申し訳ありませんでした……」
どんどんと話が進んでいる。私達にとっては非常に喜ばしいことなんだけれど……デナン様にとっては最悪だろう。彼の顔面は蒼白になっていた。
「は、はい……なんでしょうか、バルサーク様?」
「今回、私やローザ嬢が訪れた理由をちゃんと理解しているのか?」
まずはそこからの話だった。デナン様はきっと焦りが先行していて、まともに状況を呑み込めていないだろうから。バルサーク様は出来る限り冷静に話を続けている。嘘を吐けばそこで終了……という雰囲気を出しながら。
「そ、それは……私の新しい婚約者のリシェル・クラウドの暴走について、ということは理解しております」
「暴走、と言う言葉がやけに他人行儀ではあるが……正しく理解できているようで安心したよ」
「あ、ありがとうございます……」
バルサーク様は少年をあやしている大人のような態度だ。それくらい、デナン様が幼く見えてしまう。こんなにデナン様って幼かったっけ? 彼の本性が分かる前までの態度はもっと大人なイメージだったけど……モルドレート家の当主、侯爵様の肩書きに恥じないレベルで。
「リシェル嬢、質問があるのだが?」
「は、はい……バルサーク様! なんでしょうか?」
いきなり話しかけられたリシェルは、バルサーク様に慌てて向き直っていた。最早、完全に従順な配下になっているわね……。ますます、デナン様は自らの罪から逃れられなくなっている気がする。実行犯のリシェルがこちらの味方になっているのだから。
「リシェル嬢のローザハウス奪取事件についてだが、デナン殿はどうやら、其方の暴走と言う言葉で片付けようとしているらしいぞ」
「えっ、そ、そんな……」
リシェルは不満気にデナン様を睨んでいた。デナン様はその睨みに恐れおののいている。
「バルサーク様、よろしいでしょうか?」
「ああ、バーン。上手くまとめてもらえるか?」
「畏まりました。デナン・モルドレート侯爵は理不尽な婚約破棄を行い、その新しい相手であるリシェル様の暴走を黙認していたのでしょう。この屋敷の使用人達がローザハウスの奪取に加担していることから、デナン様がどの程度状況を把握していたかは、大した問題ではないと思われます」
「うむ、分かりやすいまとめをありがとう」
「ありがとうございます」
デナン様がどの程度知っていたかというのは、大した問題ではない……というところがミソね。バーンさんって、いつの間にデナン様の執事として潜入していたのかしら……? 不思議だわ。
「リシェル嬢、もう一度聞くが……なぜ、ローザハウスを奪取するなんて行動に出たのだ?」
「そ、それは……デナン様の名前があれば、もみ消せると考えたからです……」
「随分と短絡的な考えだな。若気の至りなのかもしれないが……いや、そんな言葉では言い表せないか」
「も、申し訳ありませんでした……」
どんどんと話が進んでいる。私達にとっては非常に喜ばしいことなんだけれど……デナン様にとっては最悪だろう。彼の顔面は蒼白になっていた。
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