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14話 想い その1

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「くそう……私はこれからどうすれば良いのだ……? エリアス抜きで……」

「アレク様、まずは薬の改良から始めるしかありませんな……上手く行くかは置いておいて」

「そんなことが可能なのか……?」

「それは私にも分かりませんよ」


 アレク様と工場長はその後、屋敷から立ち去って行った。私のきっぱりとした拒絶に流石にアレク様も観念したようだし。

「ふう……なんとか去って行ったわね。助かりましたわ、ラターザ様」

「いえ、私は何もしていませんよ。断りの言葉を浴びせたのはエリアス嬢ですしね」

「いえ、ありがとうございました。ラターザ様がいらっしゃらなかったら、アレク様を追い返せたか分かりませんでしたので」


 ラターザ様がいない状態で私が断ったとしても、アレク様は諦めなかっただろう。場合によっては越権行為に及んでいたかもしれない。そのくらい、アレク様は危険というか……往生際が悪い気がするし。

「まあなんにせよ、本当に良かった。また、アレク殿に何かされた時は遠慮なく言ってください。その時はブラック家も黙ってはいませんので」

「勿体ないお言葉、ありがとうございます」


 私も姉さまもラターザ様に頭を下げた。本当に助けられてしまった。今回の感謝は私の仕事で返していけたら、と思っている。


--------------------------


 それから少し時間が経過した。私はラターザ様への感謝も含めて、ブラック家の大規模生産工場で働いていた。


「調子はどうかな?」

「あ、ラターザ様! はい、なんとか仕事にも慣れて来たように思います!」

「そうか、それは何よりだ。それにしても……」


 私は大規模生産工場の従業員だけれど、働いている区画は異なっている。薬の効力や消費期限が違うので混ざってしまわないように配慮されている。そんな薬を見ながらラターザ様は話し始めた。


「消費期限3年以上の薬をこんなに……いや、本当に驚きだよエリアス嬢」

「ありがとうございます。ラターザ様にはアレク様の件で恩がありますので。はりきって作りました!」

「はは、そう言ってもらえると嬉しいかな」

「うふふ」

 なんだかちょっとだけいい雰囲気になっているかもしれない。私はそう感じていた。


「ふむ、今言うべきことではないのかもしれないが……」

「どうかしましたか、ラターザ様?」

「今度よければ二人で食事にでも行かないか?」

「えっ、私とですか?」

「うん、そうだよ」


 流れるような会話に私はビックリしてしまった。これはデートの誘いというやつだろうか? ……あ、よく考えるとラターザ様は私のことを気に入っていたと姉さまも言ってたっけ……。
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