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1話 ぜひ婚約破棄をお願いします
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「もう駄目……我慢の限界だわ……」
私は自室で独り言を呟いていた。最近は色々と悩みがあるのだ。
「レイナ様、そんなに悩まれていてはお身体に……」
「分かっているわ、ありがとう」
「いえ、とんでもないことでございます」
屋敷のメイドが私の心配をしてくれた。申し訳ないことだ。私はカルナボイ王国の伯爵令嬢としてダート・スヴェル公爵令息と婚約をしているのだけれど……これが悩みの種となっているのだ。
お父様の計らいで決まった婚約。実際にダート様に会うのは婚約した時が初めてだった。その時の彼はとても好青年に見えたのだけれど。実際の私生活を覗くと180度違っていたのだ。
「ダート様がこんなに酷い方だとは思っていなかったわ……浮気に金遣いの荒さ、領民への態度など、とても上位貴族だとは思えない」
「申し訳ありません、レイナ様。私には何も言えません……」
「そうよね、つまらない話をしてしまったわ」
彼女はダート様の屋敷のメイドなのだから、彼を悪く言えるはずがない。私は申し訳ないことを言ってしまったようね。まあ、それはともかくとして私はダート様に我慢の限界が来ていた。
「レイナ? いるか?」
「ダート様?」
そんな時、部屋の外からダート様の声がした。
「入るぞ」
私の了解を得る間もなく、悩みの種そのものが入って来る。今は彼の顔を見れる状態ではなかったのに……。
「ダート様……一体なんの御用でしょうか?」
「ああ、今日はレイナに大事な話があったんだ。時間は大丈夫だな?」
「はい。大丈夫ですけれど……」
ダート様は偉そうに近くのソファに座った。ちょうど私とは対面になっている。
「ご用件はなんでしょうか?」
「まあ、そう焦るなよ。実はな……この前のパーティでとても美しい女性に会ったんだ」
「はあ……そうなんですか」
彼は浮気を全く隠す気がないようだ。上位の貴族だから私にバレても問題ないと思っているらしい。
「隣国の王女でこれがとても綺麗だった。挨拶もさせてもらったが、とても丁寧に対応してくれたよ」
「それは良かったですね」
隣国と言えば、周辺国家で最高勢力とされるハイメガ王国のことだろうか。ハイメガ王国の王女なら、ダート様よりも位は高いだろう。
「そのお方がどうかされたのですか?」
「ああ、話はここからなんだが……その女性、ミリアス・シルファメア嬢と婚約することを決めたのだ。済まないがお前との婚約はなかったことにしてもらおう」
「えっ……? 婚約をなかったことに?」
一瞬、ダート様が何を言っているのか理解出来なかったけれど……どうやら彼は婚約破棄をして欲しいと言っているようだ。このノリで婚約破棄……信じられないセリフだった。
「本気ですか?」
「当たり前だ。こんなこと冗談で言うはずがないだろう? お前がどんなに喚いたとしても……」
喚く? そんなわけはない。私は次の第一声が大きくなってしまう。
「もちろん承知いたします! 婚約破棄いたしましょう!」
やったわ! まさかダート様の方から婚約破棄を言って来るなんて! 私は思わず立ち上がっていた。それにしても、彼の口から出て来た名前……ミリアスって。私の幼馴染の名前と同じだ。まあ、今は考えることではないわね。
私は自室で独り言を呟いていた。最近は色々と悩みがあるのだ。
「レイナ様、そんなに悩まれていてはお身体に……」
「分かっているわ、ありがとう」
「いえ、とんでもないことでございます」
屋敷のメイドが私の心配をしてくれた。申し訳ないことだ。私はカルナボイ王国の伯爵令嬢としてダート・スヴェル公爵令息と婚約をしているのだけれど……これが悩みの種となっているのだ。
お父様の計らいで決まった婚約。実際にダート様に会うのは婚約した時が初めてだった。その時の彼はとても好青年に見えたのだけれど。実際の私生活を覗くと180度違っていたのだ。
「ダート様がこんなに酷い方だとは思っていなかったわ……浮気に金遣いの荒さ、領民への態度など、とても上位貴族だとは思えない」
「申し訳ありません、レイナ様。私には何も言えません……」
「そうよね、つまらない話をしてしまったわ」
彼女はダート様の屋敷のメイドなのだから、彼を悪く言えるはずがない。私は申し訳ないことを言ってしまったようね。まあ、それはともかくとして私はダート様に我慢の限界が来ていた。
「レイナ? いるか?」
「ダート様?」
そんな時、部屋の外からダート様の声がした。
「入るぞ」
私の了解を得る間もなく、悩みの種そのものが入って来る。今は彼の顔を見れる状態ではなかったのに……。
「ダート様……一体なんの御用でしょうか?」
「ああ、今日はレイナに大事な話があったんだ。時間は大丈夫だな?」
「はい。大丈夫ですけれど……」
ダート様は偉そうに近くのソファに座った。ちょうど私とは対面になっている。
「ご用件はなんでしょうか?」
「まあ、そう焦るなよ。実はな……この前のパーティでとても美しい女性に会ったんだ」
「はあ……そうなんですか」
彼は浮気を全く隠す気がないようだ。上位の貴族だから私にバレても問題ないと思っているらしい。
「隣国の王女でこれがとても綺麗だった。挨拶もさせてもらったが、とても丁寧に対応してくれたよ」
「それは良かったですね」
隣国と言えば、周辺国家で最高勢力とされるハイメガ王国のことだろうか。ハイメガ王国の王女なら、ダート様よりも位は高いだろう。
「そのお方がどうかされたのですか?」
「ああ、話はここからなんだが……その女性、ミリアス・シルファメア嬢と婚約することを決めたのだ。済まないがお前との婚約はなかったことにしてもらおう」
「えっ……? 婚約をなかったことに?」
一瞬、ダート様が何を言っているのか理解出来なかったけれど……どうやら彼は婚約破棄をして欲しいと言っているようだ。このノリで婚約破棄……信じられないセリフだった。
「本気ですか?」
「当たり前だ。こんなこと冗談で言うはずがないだろう? お前がどんなに喚いたとしても……」
喚く? そんなわけはない。私は次の第一声が大きくなってしまう。
「もちろん承知いたします! 婚約破棄いたしましょう!」
やったわ! まさかダート様の方から婚約破棄を言って来るなんて! 私は思わず立ち上がっていた。それにしても、彼の口から出て来た名前……ミリアスって。私の幼馴染の名前と同じだ。まあ、今は考えることではないわね。
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