17 / 40
17話 集まった王子達 その1
しおりを挟む
「エリザ・ガーランドと申します。以後お見知りおきを……」
「エラルド王国伯爵、フィッシャー・ホライズンと申します。よろしくお願いいたします」
「ホライズン伯爵、存じております。確か、管理されている地方の山岳開拓をされているとか……」
「よく知っておられますな。その通りでございます。あの、山岳地帯はまだ眠っている鉱脈があり……」
フリック様の放心状態は気がかりではあったけれど、私はアルゼイ様と共に、隣国の貴族の方々とのコミュニケーションを取っていた。アルゼイ様からは、それほど固くならないようにと言われていたので、言葉遣いなどは崩して応対する。
ホライズン伯爵を初め、隣国からの参加者は多かった。基本的にはアルゼイ様のサポートとして動いているけれど、私個人に興味を持たれているのか、私に対する挨拶も多い。まあ、アルゼイ様が私を婚約者として紹介したのだから、当然なんだけれど。
これだけの他国の方々との接触は久しぶりだ。それだけに緊張感はどうしても出てしまっていた。全員が、ファブナー・エッセル公爵のように気さくなお方ではないからね。礼儀を重んじる度合いは、その人によって大分違ってくるし。なかなかに難しいところだ。
「アルゼイ・サンマルト王子殿下、お久しぶりでございますな!」
「おお、これはタキネス侯爵ではありませんか。お久しぶりですね」
早速、新しい貴族の方が現れた。さてと、しっかりと挨拶から始めて行かないとね──。
------------------------------
「エリザ、疲れていないか?」
「いえ、私は大丈夫です、アルゼイ様」
「そうか? あまり無理をしないでくれよ? 婚約者に無理をさせるなんて、王族精神を疑われるからな」
「あはは……」
フリック様への皮肉が含まれているようだった。アルゼイ様が私を心配してくれている。連続で何十人もの貴族と挨拶をするのは、精神的に削られる作業だった。しかも今回は、隣国のエラルド王国の貴族の方との挨拶が中心なだけに、余計に疲れてしまう。まあ、それは仕方のないことではあるけれど。
それにしても……先ほどから、私やアルゼイ様への視線が気になってしまう。いえ、アルゼイ様というよりは、私に視線が集中していない? おそらく、気のせいではないはず。
「噂には聞いておりましたが……流石はアルゼイ様と婚約されているだけのことはあるな」
「本当ですね、まだお若いでしょうに、手際の良さと言えばいいのかしら? 素晴らしいわ」
「舞踏会会場での基本が備わっている印象ですな……いやはや、サポート能力とはよく言ったものです」
なんだか、小さな声ではあるけれど、私のことを言っているような……?
「姉さん、凄いじゃない」
「シリカ……どういうことよ?」
「分かってるんでしょ? 自分のサポート能力の高さとか、コミュニケーション能力の高さが秀逸だってこと。他国の方々はそれについて賞賛してるのよ」
「な、なるほど……あの視線はそういうことだったのね」
素直に嬉しいと思えた。隣国のエラルド王国の貴族にも認められれば最早、お世辞ではないと考えて大丈夫だろうし。正確に言えば、自分のサポート能力等の高さには自信はあったけれど、フリック様との婚約破棄の一件で、自信を失くしていたってところね。
でも今回の舞踏会で、それを実感できた。こんなにも実感できたのはおそらく初めてだわ。
「あとは……フリック王子殿下がどう出るか、だけ心配していれば大丈夫だろうけど」
「そうね……」
シリカもちゃんと気付いている。フリック様は先ほどから、シャーリー嬢とは話しているみたいだけれど、特に何もしていない。エラルド王国の貴族が近づいても、無視を決め込んでいる状態だ。あれでは心象が悪くなりそうだけれど。
「私の大笑いが効いているのかしら? フリック王子殿下ってメンタル面、弱すぎない? せっかく、私がフォローしてあげたんだから、上手く利用して欲しかったのに……あれじゃあ、次期国王様なんて絶対に無理ね」
シリカは容赦がなかった。でも確かに、現在のフリック様が国王陛下になることは不可能だと思う。私の婚約者であるアルゼイ様が居るし。そして……第二王子殿下のジェイド様もいらっしゃるのだから。
「アルゼイ様とジェイド様が居る限りは、確かに難しいわね」
「姉さん、噂をすればっていうやつよ。第二王子殿下が来たわ」
シリカに促され、私は彼女と同じ方向に視線を向ける。舞踏会会場の入り口が大きく開かれ、ジェイド・サンマルト第二王子殿下が姿を現した。周囲の貴族達の顔色が明らかに変化していた。
この会場に王位継承権1位、2位、3位の全員が集まったのだから当然かもしれない。殺伐とした雰囲気にならないと良いけれど……大丈夫かしら。
「エラルド王国伯爵、フィッシャー・ホライズンと申します。よろしくお願いいたします」
「ホライズン伯爵、存じております。確か、管理されている地方の山岳開拓をされているとか……」
「よく知っておられますな。その通りでございます。あの、山岳地帯はまだ眠っている鉱脈があり……」
フリック様の放心状態は気がかりではあったけれど、私はアルゼイ様と共に、隣国の貴族の方々とのコミュニケーションを取っていた。アルゼイ様からは、それほど固くならないようにと言われていたので、言葉遣いなどは崩して応対する。
ホライズン伯爵を初め、隣国からの参加者は多かった。基本的にはアルゼイ様のサポートとして動いているけれど、私個人に興味を持たれているのか、私に対する挨拶も多い。まあ、アルゼイ様が私を婚約者として紹介したのだから、当然なんだけれど。
これだけの他国の方々との接触は久しぶりだ。それだけに緊張感はどうしても出てしまっていた。全員が、ファブナー・エッセル公爵のように気さくなお方ではないからね。礼儀を重んじる度合いは、その人によって大分違ってくるし。なかなかに難しいところだ。
「アルゼイ・サンマルト王子殿下、お久しぶりでございますな!」
「おお、これはタキネス侯爵ではありませんか。お久しぶりですね」
早速、新しい貴族の方が現れた。さてと、しっかりと挨拶から始めて行かないとね──。
------------------------------
「エリザ、疲れていないか?」
「いえ、私は大丈夫です、アルゼイ様」
「そうか? あまり無理をしないでくれよ? 婚約者に無理をさせるなんて、王族精神を疑われるからな」
「あはは……」
フリック様への皮肉が含まれているようだった。アルゼイ様が私を心配してくれている。連続で何十人もの貴族と挨拶をするのは、精神的に削られる作業だった。しかも今回は、隣国のエラルド王国の貴族の方との挨拶が中心なだけに、余計に疲れてしまう。まあ、それは仕方のないことではあるけれど。
それにしても……先ほどから、私やアルゼイ様への視線が気になってしまう。いえ、アルゼイ様というよりは、私に視線が集中していない? おそらく、気のせいではないはず。
「噂には聞いておりましたが……流石はアルゼイ様と婚約されているだけのことはあるな」
「本当ですね、まだお若いでしょうに、手際の良さと言えばいいのかしら? 素晴らしいわ」
「舞踏会会場での基本が備わっている印象ですな……いやはや、サポート能力とはよく言ったものです」
なんだか、小さな声ではあるけれど、私のことを言っているような……?
「姉さん、凄いじゃない」
「シリカ……どういうことよ?」
「分かってるんでしょ? 自分のサポート能力の高さとか、コミュニケーション能力の高さが秀逸だってこと。他国の方々はそれについて賞賛してるのよ」
「な、なるほど……あの視線はそういうことだったのね」
素直に嬉しいと思えた。隣国のエラルド王国の貴族にも認められれば最早、お世辞ではないと考えて大丈夫だろうし。正確に言えば、自分のサポート能力等の高さには自信はあったけれど、フリック様との婚約破棄の一件で、自信を失くしていたってところね。
でも今回の舞踏会で、それを実感できた。こんなにも実感できたのはおそらく初めてだわ。
「あとは……フリック王子殿下がどう出るか、だけ心配していれば大丈夫だろうけど」
「そうね……」
シリカもちゃんと気付いている。フリック様は先ほどから、シャーリー嬢とは話しているみたいだけれど、特に何もしていない。エラルド王国の貴族が近づいても、無視を決め込んでいる状態だ。あれでは心象が悪くなりそうだけれど。
「私の大笑いが効いているのかしら? フリック王子殿下ってメンタル面、弱すぎない? せっかく、私がフォローしてあげたんだから、上手く利用して欲しかったのに……あれじゃあ、次期国王様なんて絶対に無理ね」
シリカは容赦がなかった。でも確かに、現在のフリック様が国王陛下になることは不可能だと思う。私の婚約者であるアルゼイ様が居るし。そして……第二王子殿下のジェイド様もいらっしゃるのだから。
「アルゼイ様とジェイド様が居る限りは、確かに難しいわね」
「姉さん、噂をすればっていうやつよ。第二王子殿下が来たわ」
シリカに促され、私は彼女と同じ方向に視線を向ける。舞踏会会場の入り口が大きく開かれ、ジェイド・サンマルト第二王子殿下が姿を現した。周囲の貴族達の顔色が明らかに変化していた。
この会場に王位継承権1位、2位、3位の全員が集まったのだから当然かもしれない。殺伐とした雰囲気にならないと良いけれど……大丈夫かしら。
52
お気に入りに追加
5,581
あなたにおすすめの小説
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
婚約者を追いかけるのはやめました
カレイ
恋愛
公爵令嬢クレアは婚約者に振り向いて欲しかった。だから頑張って可愛くなれるように努力した。
しかし、きつい縦巻きロール、ゴリゴリに巻いた髪、匂いの強い香水、婚約者に愛されたいがためにやったことは、全て侍女たちが嘘をついてクロアにやらせていることだった。
でも前世の記憶を取り戻した今は違う。髪もメイクもそのままで十分。今さら手のひら返しをしてきた婚約者にももう興味ありません。
ランプの令嬢は妹の婚約者に溺愛され過ぎている
ユウ
恋愛
銀髪に紫の瞳を持つ伯爵令嬢のフローレンスには社交界の華と呼ばれる絶世の美女の妹がいた。
ジェネットは幼少期の頃に病弱だったので両親から溺愛され甘やかされ育つ。
婚約者ですらジェネットを愛し、婚約破棄を突きつけられてしまう。
そして何もかも奪われ社交界でも醜聞を流され両親に罵倒され没落令嬢として捨てられたフローレンスはジェネットの身代わりとして東南を統べる公爵家の子息、アリシェの婚約者となる。
褐色の肌と黒髪を持つ風貌で口数の少ないアリシェは令嬢からも嫌われていたが、伯爵家の侮辱にも顔色を変えず婚約者の交換を受け入れるのだが…。
大富豪侯爵家に迎えられ、これまでの生活が一変する。
対する伯爵家でフローレンスがいなくなった所為で領地経営が上手くいかず借金まみれとなり、再び婚約者の交換を要求するが…
「お断りいたします」
裏切った婚約者も自分を捨てた家族も拒絶するのだった。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです
珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。
老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。
そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。
「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません
今川幸乃
恋愛
貧乏貴族の娘、エレンは幼いころから自分で家事をして育ったため、料理が得意だった。
そのため婚約者のウィルにも手づから料理を作るのだが、彼は「おいしいけど心が籠ってない」と言い、挙句妹のシエラが作った料理を「おいしい」と好んで食べている。
それでも我慢してウィルの好みの料理を作ろうとするエレンだったがある日「料理どころか君からも愛情を感じない」と言われてしまい、もう彼の気を惹こうとするのをやめることを決意する。
ウィルはそれでもシエラがいるからと気にしなかったが、やがてシエラの料理作りをもエレンが手伝っていたからこそうまくいっていたということが分かってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる