2 / 6
2話
しおりを挟む
「フリーダ、帰って来たのか? 久しぶりだな……お、おい……!」
「お兄様……申し訳ありません!」
御者と共に帰って来た私だけれど、お兄様に合わせる顔がなくてすぐに私室へと走って行った。涙を見られたくなかったからだ。
「ふ、フリーダ様……?」
私の部屋を清掃していたであろうメイドも、急に入って来た私に驚いているようだった。
「ごめんなさい、外してもらえるかしら?」
「か、畏まりました」
今は一人になりたい気分だった。お父様達にはもちろん、大好きなお兄様にも会いたい気分ではなかった。私はベガ・ストーム侯爵令息に捨てられたのだ。由緒正しきジェノス家の汚点……私はその存在になりかけていた。いや、過去を遡ってみても、婚約破棄をされた令嬢がどの程度いるだろうか?
もしかするとジェノス家始まって以来のことかもしれない。私はただベッドに横たわって何も考えないように過ごした。
それからどのくらい時間が経っただろうか? 何も食べていないのでお腹も空いて来た。どうしよう、メイドに言って何かを持ってきてもらおうかしら。そんなことを考えていると……。急にノックの音が聞こえて来る。
「フリーダ、入っても大丈夫かい?」
「お兄様……?」
「食事を持ってきたよ」
「は、はい。すぐに開けます」
私はベッドから起きて扉を開けた。扉の外には笑顔のお兄様……アンデル・ジェノス伯爵令息の姿があった。
「入らせてもらうよ。食事にしよう」
「か、畏まりました……」
兄さま自らが食事を運んできてくれた。私は慌てて座席の用意をする。といっても既にソファは用意されているわけだけど。
「お腹が空いているだろう。冷めないうちに食べようか」
「は、はい……アンデル兄さま」
兄さまは私の現状について無理に聞き出そうとはしない。私は温かいシチューを口に運んだ。
「美味しい……」
美味しいのは当然だと思うけれど、なんだか今の私には心の中が癒される味だった。しばらくの間、食事に集中することにする。
-----------------------------
「さて、父上や母上も心配していたぞ?」
「うっ……やはりそうでしたか。申し訳ございません……」
やはり無駄に心配を掛けてしまったようだ。申し訳ない気持ちになってしまう。
「まあ、大丈夫さ。それでベガ様と喧嘩でもしたのか? 良ければ話してくれないだろうか?」
「アンデル兄さま……」
私の帰って来た時の態度から、ベガ様絡みのことだとは予想していたようね。隠していてもいずれはバレることだわ。私は兄さまに全てを話すことにした。
「お兄様……申し訳ありません!」
御者と共に帰って来た私だけれど、お兄様に合わせる顔がなくてすぐに私室へと走って行った。涙を見られたくなかったからだ。
「ふ、フリーダ様……?」
私の部屋を清掃していたであろうメイドも、急に入って来た私に驚いているようだった。
「ごめんなさい、外してもらえるかしら?」
「か、畏まりました」
今は一人になりたい気分だった。お父様達にはもちろん、大好きなお兄様にも会いたい気分ではなかった。私はベガ・ストーム侯爵令息に捨てられたのだ。由緒正しきジェノス家の汚点……私はその存在になりかけていた。いや、過去を遡ってみても、婚約破棄をされた令嬢がどの程度いるだろうか?
もしかするとジェノス家始まって以来のことかもしれない。私はただベッドに横たわって何も考えないように過ごした。
それからどのくらい時間が経っただろうか? 何も食べていないのでお腹も空いて来た。どうしよう、メイドに言って何かを持ってきてもらおうかしら。そんなことを考えていると……。急にノックの音が聞こえて来る。
「フリーダ、入っても大丈夫かい?」
「お兄様……?」
「食事を持ってきたよ」
「は、はい。すぐに開けます」
私はベッドから起きて扉を開けた。扉の外には笑顔のお兄様……アンデル・ジェノス伯爵令息の姿があった。
「入らせてもらうよ。食事にしよう」
「か、畏まりました……」
兄さま自らが食事を運んできてくれた。私は慌てて座席の用意をする。といっても既にソファは用意されているわけだけど。
「お腹が空いているだろう。冷めないうちに食べようか」
「は、はい……アンデル兄さま」
兄さまは私の現状について無理に聞き出そうとはしない。私は温かいシチューを口に運んだ。
「美味しい……」
美味しいのは当然だと思うけれど、なんだか今の私には心の中が癒される味だった。しばらくの間、食事に集中することにする。
-----------------------------
「さて、父上や母上も心配していたぞ?」
「うっ……やはりそうでしたか。申し訳ございません……」
やはり無駄に心配を掛けてしまったようだ。申し訳ない気持ちになってしまう。
「まあ、大丈夫さ。それでベガ様と喧嘩でもしたのか? 良ければ話してくれないだろうか?」
「アンデル兄さま……」
私の帰って来た時の態度から、ベガ様絡みのことだとは予想していたようね。隠していてもいずれはバレることだわ。私は兄さまに全てを話すことにした。
0
お気に入りに追加
423
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる