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9話
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「ドロワット侯爵、失礼致します」
「ん? おお、これはバルト殿! お久しぶりですな! 来ていただけるとは思っていませんでしたので……」
「いえ、ドロワット侯爵には父の代からお世話になっておりますので、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
ウィル様とリノア様からしてみれば、いきなり現れた私達。リノア様はそうでもなかったけれど、ウィル様は明らかに動揺していた。でも、私は彼を敢えて無視する。ドロワット侯爵に挨拶しないといけないしね。
「こんにちは、ドロワット侯爵。シルメリア・ラダトームと申します。本日はお誕生日おめでとうございます」
「ラダトーム侯爵家のご令嬢ですか。ありがとうございます」
ドロワット侯爵は私にも笑顔で返してくれた。これだけで、同じ侯爵であるウィル・スモーク侯爵とは人種が違うのではないかと思える。どうして私はこんな人と婚約したのだろうか? 本当に後悔しかないわね。
「おや、どうかされましたかな? ウィル殿?」
怪訝そうな様子のウィル様にドロワット侯爵が話し掛けていた。私に視線を向けているウィル様は明らかに様子がおかしい。先ほどまでの笑顔が消えていたのだから……。
「い、いえ……なんでもありません」
「ウィル殿、お久しぶりですね」
「バルト様……お元気そうで何よりですよ」
「ええ、ありがとうございます」
ドロワット侯爵と話していたら、急にバルト様と私が来た。ウィル様とすれば歓迎していない客人ということになるだろうか。でも、相手は公爵様になるから何も言えないわけで……公爵様の地位の高さが改めてわかった気がした。
「ウィル殿はドロワット侯爵との関係強化に必死ですか?」
「ん? バルト様……?」
「バルト様……?」
いきなり切り込んだ質問に私は驚いてしまった。なにやら皮肉も混じっている様子だし。
「どういうことですかな? バルト様。貴族たる者、関係強化は普通に行うでしょう。必死で行うというのは語弊があると思われますが……」
「ええ、確かに貴族であればそれは普通でしょうね。ねえ、リノア嬢? 先ほどから眉をひそめているようだが」
「バルト様。ご冗談が過ぎますわ。別に私は……」
リノア様もなんだか様子が変だった。私のことを歓迎していないのは事実でしょうね。ウィル様とは別の意味で歓迎していない感じだけれど。
「それで? 何が言いたいんでしょうか?」
「ウィル殿はこちらのシルメリアと別れてから、随分と早くリノア嬢を見つけたようだな。私が何を言いたいかは分かると思うのだが?」
「な、何を言っているんですか……ははは」
「ちょっと……ウィル! 面倒事は起こらないって言ったじゃない! どういうこと!? これは!」
明らかに焦っているウィル様だった。ドロワット侯爵の前で浮気がバレるのは流石に厳しいということかしらね。なぜだか、リノア様にも責められているけれど。
「ん? おお、これはバルト殿! お久しぶりですな! 来ていただけるとは思っていませんでしたので……」
「いえ、ドロワット侯爵には父の代からお世話になっておりますので、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
ウィル様とリノア様からしてみれば、いきなり現れた私達。リノア様はそうでもなかったけれど、ウィル様は明らかに動揺していた。でも、私は彼を敢えて無視する。ドロワット侯爵に挨拶しないといけないしね。
「こんにちは、ドロワット侯爵。シルメリア・ラダトームと申します。本日はお誕生日おめでとうございます」
「ラダトーム侯爵家のご令嬢ですか。ありがとうございます」
ドロワット侯爵は私にも笑顔で返してくれた。これだけで、同じ侯爵であるウィル・スモーク侯爵とは人種が違うのではないかと思える。どうして私はこんな人と婚約したのだろうか? 本当に後悔しかないわね。
「おや、どうかされましたかな? ウィル殿?」
怪訝そうな様子のウィル様にドロワット侯爵が話し掛けていた。私に視線を向けているウィル様は明らかに様子がおかしい。先ほどまでの笑顔が消えていたのだから……。
「い、いえ……なんでもありません」
「ウィル殿、お久しぶりですね」
「バルト様……お元気そうで何よりですよ」
「ええ、ありがとうございます」
ドロワット侯爵と話していたら、急にバルト様と私が来た。ウィル様とすれば歓迎していない客人ということになるだろうか。でも、相手は公爵様になるから何も言えないわけで……公爵様の地位の高さが改めてわかった気がした。
「ウィル殿はドロワット侯爵との関係強化に必死ですか?」
「ん? バルト様……?」
「バルト様……?」
いきなり切り込んだ質問に私は驚いてしまった。なにやら皮肉も混じっている様子だし。
「どういうことですかな? バルト様。貴族たる者、関係強化は普通に行うでしょう。必死で行うというのは語弊があると思われますが……」
「ええ、確かに貴族であればそれは普通でしょうね。ねえ、リノア嬢? 先ほどから眉をひそめているようだが」
「バルト様。ご冗談が過ぎますわ。別に私は……」
リノア様もなんだか様子が変だった。私のことを歓迎していないのは事実でしょうね。ウィル様とは別の意味で歓迎していない感じだけれど。
「それで? 何が言いたいんでしょうか?」
「ウィル殿はこちらのシルメリアと別れてから、随分と早くリノア嬢を見つけたようだな。私が何を言いたいかは分かると思うのだが?」
「な、何を言っているんですか……ははは」
「ちょっと……ウィル! 面倒事は起こらないって言ったじゃない! どういうこと!? これは!」
明らかに焦っているウィル様だった。ドロワット侯爵の前で浮気がバレるのは流石に厳しいということかしらね。なぜだか、リノア様にも責められているけれど。
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