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6話 視点変更

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(ウィル・スモーク侯爵視点)


「ねえ、ウィル」

「どうかしたのか、リノア」

「今日の誕生日パーティーは重要なの? 相手はアレクセイ・ドロワット侯爵でしょう?」

「ああ、そうなるね」


 リノアはどこか面倒くさそうに話していた。パーティーに出席すること自体が面倒なようだが……。公爵令嬢の彼女とは違って、私にとっては重要な人物である。彼との繋がりは今後、必ず活きて来るだろうからな。

「君はハーテル公爵家の人間だからそうでもないかもしれないが……同じ侯爵である私にとっては大切な案件なのだよ。ドロワット侯爵に呼ばれたことを含めてね」

「なるほど……そういうものかしら」


 リノアは特に興味がなさそうだった。まったく……彼女の気まぐれ気質は困るというものだ。あまり強くは出れないが、なんとかパーティーに興味を持ってもらわないとな。食べ物で釣るとしようか。


「今日のパーティーは食事が豪勢なようだぞ。リノアも興味が出て来るんじゃないか?」

「なによそれ。私がそんなに大食いに見えるかしら?」

「いや……全く見えないな」


 リノアは驚くほどに端正な顔立ち、そしてスタイルをしている。明らかにそれほど食べていない証拠だ。


「まあ、食べること自体が嫌いなわけじゃないけれど。豪勢な料理は食べ慣れているからね。いまさらどうと言うことはないわ」

「それは確かに……」


 公爵家の人間であればそれは間違いないだろう。下手をすると王族に匹敵する料理も食べているかもしれないのだから。マズいな……食べ物で釣るのが難しくなってきたぞ……どうするか。


 そのまま私達は会場に入った。豪勢な料理は並んでいたが、どれもリノアを引きつけるほどの魅力はなかった。仕方がない……別の話題を提供しなくてわな。


「そういえば、リノア。例のシルメリアについての話なんだが」

「ええ、シルメリアね。あなたが浮気の末に放り捨てた令嬢でしょう?」

「言い方が失礼だな……」

「だって事実じゃない。何事もないから文句はないけれど……面倒なことだけは引き起こさないでよね」

「わかっているさ」


 リノアはまだ私を信じ切ってはいないようだった。シルメリアがなにか復讐をしてくるのではないかと、警戒をしているのだろうか。そんなことはあり得ないというのに。慰謝料だって支払うんだ。いまさら何かを言って来たとしても跳ね除ければ問題ない。


「今頃は悲しみに暮れているだろうな。そういう彼女を思い浮かべて楽しもうじゃないか」

「勝手にすればいいと思うけれど……悲しみに暮れている、ね」


 リノアはどこまでも否定的であった。まあいい。それよりもドロワット侯爵への挨拶を先に済ませないとな……。
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