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3話

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「シルメリア、こっちの服なんて似合うんじゃないかしら?」

「私にでしょうか? 姉さまには似合うかもしれませんが、私には派手過ぎるような気がします」

「そうかしら? でも、パーティーなどで着て行けばいいじゃない。きっと、殿方が振り返ってくれるわよ?」

「いえ……もし、そうだとしても今は……」


 ウィル様に婚約破棄をされたのがすぐ前なので、今はそんな気分にはなれなかった。


「今の私に派手な服は必要ないと思います」

「そうかしら? う~ん」


 姉さまは納得いっていない感じだったけれど、それ以上何かを言うことはなかった。私の心情を察してくれたのかもしれない。はあ、前向きに貴族街での買い物を進めたいと思っていたけれど、いきなり暗礁に乗り上げている感じかしら。アーシェ姉さまにも悪いし……どうしようか。

「姉さま。レストランで食事でもしませんか? もうすぐお昼ですし……」

「そうね、シルメリア。付き合うわ」

「ありがとうございます」


 食事ならなんとか前向きに進めることができるだろう。そう思っての提案だった。と、私達がお店から出ようとしたところ……。

「おっと、すまない。当たってしまったか」

「あ……も、申し訳ございませんでした!」

「いや、こちらこそ……おや?」

「えっ?」

 入口の辺りでぶつかってしまった相手。あれ? どこかで見かけたような気がするわね。


「君は……シルメリア・ラダトーム令嬢じゃないか?」

「わ、私のことをご存知なんですか……? あなた様は……」


 ぶつかった相手は私のことを知っているようだった。ええと、どちら様でしたっけ。とても失礼なことをしてしまっているかもしれない……早く思い出さないと。

「私はバルト。バルト・ウェンデルだよ……思い出してもらえたかな?」

「バルト・ウェンデル……まさか、公爵閣下!?」

「ああ。まあ、公爵になれたのは最近だが、久しぶりの再会だな」

「バルト様……はい! お久しぶりでございます!」


 バルト様と初めて会ったのはいつだったかしら……忘れてしまったけれど、少女時代だったような気がする。それから何度か会っていたけれど、それからは会えなくなってしまったのよね。まさか……公爵閣下にまでなっていたとは。

「バルト・ウェンデル公爵……お久しぶりでございます。こうして再会できて、ほんとうに嬉しいです」

「ああ、ありがとうシルメリア。そちらにいるのは……確か姉君のアーシェ嬢だったかな?」

「私のことも覚えていただいているとは……ありがとうございます、バルト様」

「いや、美人姉妹のことを忘れるなんて出来ないさ」


 小粋なジョークなのだろうか。私は自然に笑ってしまった。なんだか、懐かしい人に再会できたわね。もしかして運命? なんてね……。
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