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14話
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「しかし、メリアス王女殿下! 私は全て真実を話しております! どこかの貴族達のように嘘など吐いておりません!」
「……」
敵に包囲されてパニックになってしまったのか……ヴェノム様はとんでもないことを言いだした。どういう狙いがあるのかしら……?
「嘘を吐いていないのは事実なのでしょうね。それは信じても結構ですのよ」
「であれば……! 私のあなた様を愛する気持ちも嘘ではないと分かっていただけますか?」
「そうですね。そこも信じても構いませんよ。それで?」
「そ、それでって……ええと……あの、その……」
メリアス王女殿下は乾いた声を出していた。ヴェノム様の告白にも全く嬉しそうには思っていないようだ。まあ、それは仕方ないわね。ここまで酷い人に好かれても嬉しいはずがない。逆に迷惑なくらいなんじゃないかしら。
「ヴェノム殿……お前はさきほどから何を言っているんだ? 支離滅裂になっていることに気付いていないのか?」
「クリス王子殿下……それは……!」
この状況で発言したのはクリス様だ。彼も乾いた声になっており、ヴェノム様の言葉に感動している様子はない。なにを言っているんだ、この男は……という心境なのでしょうね。
「クリス王子殿下……私は嘘を吐いていません。しっかりとメリアス王女殿下にも告白を致しました……」
「それは分かっている。では、今までのことを水に流してメリアス王女殿下と付き合えないか、と考えているのか?」
「うっ……」
ヴェノム様は言葉を詰まらせていた。本気でそんなことを考えていたとしたらドン引きなんだけれど。そもそも、悪事を嘘偽りなく話すのは当たり前のことであって、クリス様やメリアス様に嘘を吐いたらその分罪が重くなるだけだ。
つまり、ヴェノム様は当たり前のことを言っているだけであって、何も褒められることはしていない。他の貴族のように嘘は吐いていないと言ったけれど、それは比べる対象を最初から間違えているだけだ。
「クリス王子殿下、この者の罪はどのくらいになるのかしら?」
「まだわかりません。まあ、侯爵家の当主という肩書きは剥奪されるでしょうが」
「なるほど……アニエ嬢の為にもこの男には最大限に罰を与えてほしいですわ」
「なるべくご要望に応えられるようにしますよ」
「ええ、ありがとうございます。クリス王子殿下」
もう完全に無視を決め込んでいるメリアス様だった。ヴェノム様のことも「この男」呼ばわりだし、視線を合わせるのも嫌なんでしょうね。ヴェノム様は今にも足から崩れ落ちそうになっていた……。
「……」
敵に包囲されてパニックになってしまったのか……ヴェノム様はとんでもないことを言いだした。どういう狙いがあるのかしら……?
「嘘を吐いていないのは事実なのでしょうね。それは信じても結構ですのよ」
「であれば……! 私のあなた様を愛する気持ちも嘘ではないと分かっていただけますか?」
「そうですね。そこも信じても構いませんよ。それで?」
「そ、それでって……ええと……あの、その……」
メリアス王女殿下は乾いた声を出していた。ヴェノム様の告白にも全く嬉しそうには思っていないようだ。まあ、それは仕方ないわね。ここまで酷い人に好かれても嬉しいはずがない。逆に迷惑なくらいなんじゃないかしら。
「ヴェノム殿……お前はさきほどから何を言っているんだ? 支離滅裂になっていることに気付いていないのか?」
「クリス王子殿下……それは……!」
この状況で発言したのはクリス様だ。彼も乾いた声になっており、ヴェノム様の言葉に感動している様子はない。なにを言っているんだ、この男は……という心境なのでしょうね。
「クリス王子殿下……私は嘘を吐いていません。しっかりとメリアス王女殿下にも告白を致しました……」
「それは分かっている。では、今までのことを水に流してメリアス王女殿下と付き合えないか、と考えているのか?」
「うっ……」
ヴェノム様は言葉を詰まらせていた。本気でそんなことを考えていたとしたらドン引きなんだけれど。そもそも、悪事を嘘偽りなく話すのは当たり前のことであって、クリス様やメリアス様に嘘を吐いたらその分罪が重くなるだけだ。
つまり、ヴェノム様は当たり前のことを言っているだけであって、何も褒められることはしていない。他の貴族のように嘘は吐いていないと言ったけれど、それは比べる対象を最初から間違えているだけだ。
「クリス王子殿下、この者の罪はどのくらいになるのかしら?」
「まだわかりません。まあ、侯爵家の当主という肩書きは剥奪されるでしょうが」
「なるほど……アニエ嬢の為にもこの男には最大限に罰を与えてほしいですわ」
「なるべくご要望に応えられるようにしますよ」
「ええ、ありがとうございます。クリス王子殿下」
もう完全に無視を決め込んでいるメリアス様だった。ヴェノム様のことも「この男」呼ばわりだし、視線を合わせるのも嫌なんでしょうね。ヴェノム様は今にも足から崩れ落ちそうになっていた……。
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