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13話 

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 もう完全に包囲されている状況ね。私以外にクリス王子殿下、メリアス王女殿下にと重鎮が控えているからね。

 現にヴェノム様の顔色はこの世の終わりみたいになっていた。


「アニエ嬢とクリス王子殿下……役者も揃ったことですし、真実をお話しいただけますか? ヴェノム様。アニエ嬢に対して婚約破棄をしたことの真実を……」

「そ、それは……いや、あの、その……!」


 ヴェノム様はクリス様も来た反動なのか、まともに話せないでいるようだった。緊張で言葉が出て来ないのだろうか。私も似たような経験はしたことがあるので分かるけれど。さらに、ヴェノム様の場合は後ろめたいことがあるので猶更厳しいのだろう。

「ヴェノム殿。この場で嘘を吐くのは非常にマズいということくらいは分かるだろう? 下手をすれば王族の前で嘘を言ったことになり、不敬罪に問われても仕方がないからな。隣国の姫にも嘘を吐けばさらに罪は重くなるだろう。真実を話してくれることを願っているぞ」

「く、クリス殿下……は、はい。承知致しました……」


 クリス様なりの脅しの言葉なのだろうか。クリス様の言葉と表情に驚きを見せているヴェノム様。その場限りの嘘を吐くのは命取りになるとわかったようね。同情するつもりはないけれど、少しだけヴェノム様が可哀想に見えた。周りの貴族達も何事かとこちらを伺っているし……公開処刑みたいなものだ。

「ヴェノム様、アニエ嬢との話し合いは何日かかったのかしら?」

「それは……」


 重要な話ならそれなりの期間を設けたはず。メリアス王女殿下はきっと、そう言っているのでしょうね。当たり前のことだけど、ヴェノム様の表情は強張っていた。


「私は……権力を振りかざしてアニエと婚約破棄を致しました。それも全てはメリアス王女殿下に求婚をするためです」

「ということは……その場での話し合いなんてなく、権力で強制的に婚約破棄をしたということね?」

「も、申し訳ありません……その通りです」


 ヴェノム様も隠し通すことはできないと判断したのだろうか。素直に吐露していた。


「予想はしていましたけれど……まさか、ここまで性根の腐った人だとは思いませんでしたわ! 私に求婚ですって? バカは休み休み言ってください!」

「メリアス王女殿下……!」


 メリアス王女殿下からの恫喝はとても鋭く、汚物を見るような目でヴェノム様を見下していた。自業自得とはいえここまで転落するなんて……ヴェノム様も考えていなかったでしょうね。
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