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11話

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(ヴェノム視点)


「ではヴェノム様。あなた様はアニエ・ウィルバーク侯爵令嬢と婚約していましたのね。それで……婚約破棄をしてしまったと?」

「も、申し訳ありません。アニエとはその……婚約破棄を致しました」

「いえ、責めているわけではありません。そんなに謝罪されなくてもよろしいのですよ」

「は、はい。ありがとうございます」

「……」


 くっ……メリアス王女殿下は不審な目で私を見ているようだ。口では責める気はないと言っても、本心では違うと言うことなのだろうか。なんとか彼女から不信感を拭わなくてはならない。どうしたらいいのか。会話の中で正解を模索するしかないな。

「それにしても驚きました。先ほど、アニエ嬢とは会っておりますが。そうですか、彼女と別れたということなんですね」

「そういうことになります」

「あまりこのような場所でするお話しではなかったですね」

「た、確かに」


 む、これはチャンスかもしれない。メリアス王女殿下はこれ以上この場での話を避けたがっているようだな。

「しかし……ネレイド河川事業に影響が出なければ良いのですが」

「そ、それは……もう既に事業自体は成功しているのですし。問題ないかと思われますが」

「そうは言っても、事業は継続されて初めて利益になるでしょう? レジャー施設の運営など、今後への影響が重要でしてよ」

「はい、そうですね」


 メリアス王女殿下は心配しているのだ。私とアニエの婚約破棄が世間に知れ渡り、さらに事業への投資を両家がしていることも知れ渡ることを。そうなれば何かの拍子に施設の運営に影響が出る恐れがあると思っているのかもしれない。

 今のところはそんな心配はないだろうが、今後、集客し続けることが出来るかは分からないから余計に心配ということか。

「ところで……婚約破棄した理由はなんですの?」

「えっ……」

 やはりその質問が飛んできたか。さて、なんと答えたら良いものか。

「相当な事情があったのではないのですか? 貴族の婚約破棄なんて、なかなかないでしょうし」

「ええ、実は……。私は他に好きな女性が出来てしまいまして……」


 ここで嘘を吐くことは簡単だが、それではすぐにバレてしまう。アニエもこの会場にいるようだからな。なるべくオブラートに包んでみせるぞ! 私の腕の見せ所だな。
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