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8話

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「あら、これはクリス王子殿下。お久しぶりでございますね」

「メリアス王女殿下。はい、お久しぶりでございますね」


 わお、互いの国の超重要人物……その挨拶の場に同席できるなんて。私はなんだか得した気分になっていた。


「あら、そちらの方は?」

「こちらは侯爵家のアニエ・ウィルバークですよ」

「なるほど……トラシェル王国の侯爵令嬢ですのね。アニエ様、私はメリアス・アーズールと申します。以後お見知りおきを」

「は、はい! メリアス王女殿下! よろしくお願いいたします!」


 やや緊張した様子で私は挨拶をした。パーティーに来ていきなりメリアス様と会話をすることになるとは思わなかったわ。う~ん、やっぱり緊張感は拭えないわね。


「うふふ、そんなに緊張する必要はないですよ。まあ、こう言っても難しいとは思いますが……」

「は、はい……すみません」

「いえいえ、大丈夫ですよ」


 挨拶は完了したけれど、とても緊張してしまうわね。でも……彼女は知らないようだけれど、私からすると浮気相手に近い存在なのよね。でも良かった、とても良い雰囲気の人で。ヴェノム・サイランス侯爵様の相手には勿体ないと言うか……まあ、決まっているわけではないけれど。


「さて、メリアス王女殿下。聞きたいことがあるのですが……よろしいですか?」

「はい、クリス王子。なんでしょうか?」

「今回のパーティーなのですが……なぜ、開かれたのですか?」

「ああ、そのことですか」

「ええ、以前にも同じようなパーティーを開いているでしょう。それから何カ月も経過したならともかく、これほど短期間に開く必要性はあったのでしょうか?」

「そうですわね……ネレイド河川事業の成功はそれだけ大きな事柄だった、というところでしょうか。以前に参加出来なかった各貴族の為のパーティーでもありますわ」

「なるほど、そういうことでしたか」


 今回のパーティーが開かれた経緯を説明してくれるメリアス様。でも、その表情はどこか笑っているようだった。


「うふふ、というのが表向きの話になります。裏の話が真実といったところでしょうか」

「やはり裏がございましたか。よろしければ聞かせていただけますか?」

「はい、よろこんで」


 メリアス様はクリス様に質問されることも読んでいたみたいだ。なんというか……ここを見るだけでも非常に聡明な方だということが伺えるわ。美貌の他に頭のキレも相当なものなのかもしれないわね。


「実はそろそろ身を固めたいと思っておりまして……出来ましたらこのパーティーで将来の殿方を見繕いたいと思っておりますの。幸いなことに良き縁談の話は複数ありますので……」

「なるほど……それが真の狙いでしたか。だからこそ、これ程大規模なパーティーを行ったのですね。納得致しました」

「ありがとうございます、クリス王子殿下。この機会になんとか相手を見つけたいと思っておりますわ」


 そういうことか。人生の相方を見つける……それはとても重要なことだ。ただし、ヴェノム様みたいな人も狙っているようだけれど。でも、彼女ならそんな人に引っ掛かる心配はなさそうね。
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