7 / 14
7話
しおりを挟む
「アーズール王国のメリアス王女殿下側から開催を求めて来るとはな。なかなか興味深い話だ」
「費用も王女殿下側が支払っているとか……」
「そうだな、アニエ嬢。父上からもそのように伺っている」
私はネレイド河川事業の成功を祝う2回目のパーティーに呼び出されていた。1回目はヴェノム様と出席したけれど……今回はなんとクリス・トラシェル王子殿下と出席している。ハッキリ言って自分の現状を理解出来ていない。こんなことが現実に起こるなんて。
ある意味では婚約破棄以上の衝撃と言えるかもしれないわね。私も侯爵令嬢という立場上、上位の貴族との交流があったりするわけだけれど……流石に第一王子殿下は上位過ぎる存在だわ。
「大丈夫か、アニエ嬢? かなり緊張しているようだが……」
「だ、大丈夫です。クリス様……はい。ご心配ありがとうございます」
「そうか? 特に体調に問題ないのなら安心なんだが」
クリス様は自分が近くにいるから、というところを失念されているようね。それだけ普通に付き合ってくれということなのだろうけれど……少し難しいわ。
「既にメリアス・アーズール王女殿下は会場に来ているようだな」
「そうですね……美しいですわ」
「ふむ、確かに美しいか」
? クリス様はしばらく無言になっていた。彼女に見惚れているのかと思ったけれど、どうやらそうではないらしい。先ほどから私とメリアス王女殿下とを交互に見ていたから。
「外見の美しさで言えば、君も負けていないんじゃないか?」
「えっ? クリス様……!?」
予想外のことを言われて私は驚いてしまった。同時に顔が紅潮していくのを感じる。
「そ、そんなことは……クリス様、ご冗談を……その……」
「いや、冗談なんかじゃないさ。本当に美しいと思っているよ」
メリアス王女殿下はその美貌でも有名なお方だ。両国の架け橋などと呼ばれていたりもするし。それだけに、数々の貴族から狙われているらしい。彼女をゲットできれば、自分達の家系の名が上がると考えている人が多いのだそうだ。
「ふ~む。私の好みが入ってしまうが……私はアニエ嬢の方が好きかもしれないな」
「クリス様……!」
私の顔の紅潮は限界を迎えていた。これ以上は大変なことになってしまう。
「まあ、本気ではあるが冗談半分に聞いておいてくれ。せっかくのパーティーだし、楽しもうじゃないか」
「は、はい……クリス様」
このお方は気持ちの切り替えが非常に早いようだわ。私はまだドキドキしているのに……。でも、彼の言う通りだ。せっかくパーティーに呼ばれたのだから楽しまなければ。
「費用も王女殿下側が支払っているとか……」
「そうだな、アニエ嬢。父上からもそのように伺っている」
私はネレイド河川事業の成功を祝う2回目のパーティーに呼び出されていた。1回目はヴェノム様と出席したけれど……今回はなんとクリス・トラシェル王子殿下と出席している。ハッキリ言って自分の現状を理解出来ていない。こんなことが現実に起こるなんて。
ある意味では婚約破棄以上の衝撃と言えるかもしれないわね。私も侯爵令嬢という立場上、上位の貴族との交流があったりするわけだけれど……流石に第一王子殿下は上位過ぎる存在だわ。
「大丈夫か、アニエ嬢? かなり緊張しているようだが……」
「だ、大丈夫です。クリス様……はい。ご心配ありがとうございます」
「そうか? 特に体調に問題ないのなら安心なんだが」
クリス様は自分が近くにいるから、というところを失念されているようね。それだけ普通に付き合ってくれということなのだろうけれど……少し難しいわ。
「既にメリアス・アーズール王女殿下は会場に来ているようだな」
「そうですね……美しいですわ」
「ふむ、確かに美しいか」
? クリス様はしばらく無言になっていた。彼女に見惚れているのかと思ったけれど、どうやらそうではないらしい。先ほどから私とメリアス王女殿下とを交互に見ていたから。
「外見の美しさで言えば、君も負けていないんじゃないか?」
「えっ? クリス様……!?」
予想外のことを言われて私は驚いてしまった。同時に顔が紅潮していくのを感じる。
「そ、そんなことは……クリス様、ご冗談を……その……」
「いや、冗談なんかじゃないさ。本当に美しいと思っているよ」
メリアス王女殿下はその美貌でも有名なお方だ。両国の架け橋などと呼ばれていたりもするし。それだけに、数々の貴族から狙われているらしい。彼女をゲットできれば、自分達の家系の名が上がると考えている人が多いのだそうだ。
「ふ~む。私の好みが入ってしまうが……私はアニエ嬢の方が好きかもしれないな」
「クリス様……!」
私の顔の紅潮は限界を迎えていた。これ以上は大変なことになってしまう。
「まあ、本気ではあるが冗談半分に聞いておいてくれ。せっかくのパーティーだし、楽しもうじゃないか」
「は、はい……クリス様」
このお方は気持ちの切り替えが非常に早いようだわ。私はまだドキドキしているのに……。でも、彼の言う通りだ。せっかくパーティーに呼ばれたのだから楽しまなければ。
0
お気に入りに追加
1,181
あなたにおすすめの小説
婚約破棄までの半日をやり直す話
西楓
恋愛
侯爵令嬢のオリヴィアは婚約者の王子にパーティーで婚約破棄を宣言され、国外追放となる。その途中で野盗に襲われて命を落としたと思ったら、パーティーの朝に戻っていた。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
君を自由にしたくて婚約破棄したのに
佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」
幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。
でもそれは一瞬のことだった。
「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」
なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。
その顔はいつもの淡々としたものだった。
だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。
彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。
============
注意)ほぼコメディです。
軽い気持ちで読んでいただければと思います。
※無断転載・複写はお断りいたします。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
冤罪により婚約破棄されて国外追放された王女は、隣国の王子に結婚を申し込まれました。
香取鞠里
恋愛
「マーガレット、お前は恥だ。この城から、いやこの王国から出ていけ!」
姉の吹き込んだ嘘により、婚約パーティーの日に婚約破棄と勘当、国外追放を受けたマーガレット。
「では、こうしましょう。マーガレット、きみを僕のものにしよう」
けれど、追放された先で隣国の王子に拾われて!?
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる