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3話 大切な幼馴染 その2
しおりを挟む「そうか……バクラード殿がそんなことを……」
「はい……エリック様」
私はバクラード様にされたことを全てエリック様に伝えた。本来は伝える気はなかったのだけれど、ミーナのカミングアウトがあったから仕方ない。エリック様は怪訝な表情をしていた。
「とても残念だ……バクラード殿は我がボトムス王国においても重要な人物。ロンバルト王国に向かうに当たって、最も近い国境線の管理をしている人物だからな……」
「そうですね、エリック様……」
エリック様の気持ちはなんとなくではあるけれど、理解することは出来た。エリック様のとってはバクラード様の領地は非常に重要な存在だからだ。ロンバルト王国の中央に最短で向かう際は、どうしてもバクラード様の領地を通らないといけない。
それを考えるだけでも、エリック様にとってはデメリットだと思えた。
「申し訳ありません、エリック様……このような話をしてしまって……」
「いや、それについては問題ない。むしろ、知れて良かったと思うまであるさ」
「さ、左様でございますか……それなら良いのですが……」
エリック様は全く私を責める様子はなかった。こんな態度を見せられては、申し訳なく思う方が失礼に感じてしまう。
「バクラード殿は別の女性と付き合うことを選んだわけか……信用できるかどうか、非常に怪しいことになるな」
「エリック様……そうですね、バクラード様を全面的に信用するのは危険かと思われます」
政治的な面とプライベートは違う……それは分かっているのだけれど、プライベートがだらしない人は、公務に於いてもだらしない可能性が高い。ロンバルト王国の貴族令嬢としては良くないけれど、私はエリック様の味方になっていた。
「バクラード様は色々な意味で危険な人物かと思われます。十分にお気をつけ頂いた方がよろしいかと……」
「わかった、気を付けることにするよ。貴重な意見に感謝するよ、ルミネ」
「いえ、とんでもないことでございます」
エリック様のお役に立てる助言が出来ただけでも非常に嬉しい。その上、彼からのお礼の言葉を受け取り、私は舞い上がってしまっていた。悟られないように、表向きは平常を保っていたけれど……。
「大体、内容については理解した。そのこととは別の話になるのだが……」
「はい? エリック様?」
「今度、私がロンバルト王国に出向く時に会えないだろうか? 出来れば二人きりで……」
「ええっ、それって……!」
「ま、まあ……そういうことだ……ははっ」
エリック様の恥ずかしそうな態度が全てを物語っていた。これは俗にいうデートの誘いみたいなものだろう。婚約破棄をされた直後の私にするのはどうかと思うけれど……でも、私としては断れるはずもなかった。
「ありがとうございます、いつでもお呼びくださいませ」
「そうか! よかったよ、ルミネ! ありがとう!」
「いえ……そんなことは……」
エリック様はとても喜んでいるようだった。そこまで喜ばれては変な期待も生まれてしまう……でも駄目だ。これはあくまでもエリック様の同情から来ている感情なんだ。そう思わなければ、彼に対しても失礼だし……。
ただ、エリック様と過ごせるという事実だけで、とても心が晴れやかになるのを感じていた。
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