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5話

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(ウィング・アラート侯爵令息視点)


「ねえ、ウィング。本当に大丈夫なのかしら?」

「なにがだい、レイチェル?」

「噂のことよ。なんでも彼女……テレサに良くない噂が流れているのでしょう?」

「ああ、そのことか……」


 私は幼馴染のレイチェルと一緒に私室で過ごしていた。テレサの良くない噂が流れているのは事実だが、まあ仕方のないことだ。レイチェルと一緒になる為の理由はどうしても必要になるからな。彼女には犠牲になってもらう必要があったわけで。

「テレサには犠牲になってもらったんだよ。彼女との婚約破棄……その理由は彼女自身の性格に難があったということにしているからな」

「まあ、それは酷いわね。私と一緒になるためにしてくれたことには感謝しているけれど。テレサはこれから大変だと思うわ」


 レイチェルはこう言っているが、私を咎めたりはしない。流石は大切な幼馴染だ。彼女と一緒に暮らしているととても晴れやかな気分になってくる。まあ、多少の浪費癖があったりするわけだが。その辺りは父上にも内緒だ。すべてテレサが浪費しているという風に持って行った。これも婚約破棄をする上での重要な理由になっていたりもする。


「噂というものは怖い。私が流していないものも含まれていたりするからな」


 浮気癖、ヒステリー持ち、浪費癖、癇癪持ち……色々な噂がテレサの周辺では起こっている。レイチェルも言っていたがこれからの彼女はとても大変だろうな。今後、彼女と結婚したいという人間が現れるのか……もしかしたらミリオン家は彼女の代で終わってしまうかもしれないな。

 まあこれも私とレイチェルが幸せになる為の布石だ。テレサには悪いが犠牲になってもらうとしようか。

「レイチェル、幸せになろう」

「ええ、ウィング。私を幸せにしてちょうだいね」

「もちろんさ、任せておいてくれ」


 私達は身体を重ね合う。レイチェルはとても魅力的なスタイルをしていた。私の理性を奪うには十分だ……。
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