上 下
7 / 26

7話 王家に呼ばれて その2

しおりを挟む

「コーデリア嬢の家族……アレイオン伯爵達の件についても、シムルグからは聞いている」

「は、はい……エルグ国王陛下」

「本当に……大変だったな」


 エルグ国王陛下は神妙な顔つきで私を見ていた。とても心配してくれているようだ。


「そんな……勿体ないお言葉でございます、陛下」

「ここは非公式の場だ、もっと甘えてくれても良いのだぞ?」

「そ、それはとても光栄なのですが……甘えるというのは……」

「お父様、コーデリアが困っていますよ」

「む? そうか? まあいい、話を戻そうか」

 なんだか微笑ましい会話に映ってしまった。血の繋がりのないはずの二人の方が、よっぽど私を心配してくれているのだから。私も陛下に甘えることが出来たら、どれだけ心が救われるだろうか。むしろ本音では甘えさせてもらいたい……本当の家族には甘えることなんて出来ないのだから。

「ストライド公爵、アレイオン伯爵の態度は明らかに常軌を逸している。コーデリア嬢の為にも少し、話を聞く必要がありそうだな」

「話……でございますか?」

「ああ、話だ。シムルグを向かわせよう」

「シムルグ様をですか……それはまさか……」

「うむ、アレイオン家の屋敷にという意味だ。コーデリア嬢さえ良ければ、すぐにでも……」


 何という話の早さだろうか……陛下は私の状況を察してくれて、最善の行動を考えてくれている。私はそれが嬉しくて堪らなかった。

「はい! 是非、お願いいたします!」

「よし、決まりだな」

「コーデリア、私も一緒に行っても良いかしら? 婚約破棄されたばかりのあなたを叱責するなんて、許せないもの」

「アーシャ様……はい、是非お越しください。ありがとうございます」


 私はアーシャ様にも頷いて答えた。シムルグ様だけでなくアーシャ様も来てくれる……これは私にとって、大きな追い風になっているような気がした。王家の方々には本当に感謝だ。


------------------------------


 ヨーゼフ・アレイオン伯爵視点……。


「はあ……それにしても、ミストマ様との婚約がなくなるとは、本当に残念だ」

「本当ですね、父上」

「ブラウン、お前だけが頼りだぞ? アレイオン家の当主の名に恥じないように、しっかりとした働きを期待している」

「お任せください、父上。役立たずのコーデリアなどとは違い、私と婚約者のイスカとの関係は良好ですので……」

「うむ、それならば問題はない」


 イスカ嬢は隣国の伯爵令嬢に当たる。隣国との関係強化という意味でもブラウンとの婚約は重要だった。婚約破棄をされたコーデリアの存在は極力隠さなくてはならない。本当に修道院に送ってしまうのが手っ取り早いな。公爵家との縁談を反故にする奴など、私の家系に必要ないからな。

「コーデリアはもう必要ない。いや、最初からあんな娘は居なかったのだ」

「その通りですね、父上。私に妹は存在しません」

「うむ、そういうことだな……」

 非常に心苦しいが、これがアレイオン家の考えだ。今日も奴は出掛けているようだしな……まったく、自分の立場を分かっているのか? のんびりと散歩している暇があったら、新しい縁談の1つでも確定させて来て欲しいものだ。

 私のイライラは収まることはなかった……。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

【完結済】いじめ?そんなこと出来ないわよ

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 なんか、いじめてたとかどうとか言われてますが、私がいじめるのは不可能ですわよ。

婚約破棄と言うなら「時」と「場所」と「状況」を考えましょうか

ゆうぎり
恋愛
突然場所も弁えず婚約破棄を言い渡された。 確かに不仲ではあった。 お互い相性が良くないのは分かっていた。 しかし、婚約を望んできたのはそちらの家。 国の思惑も法も不文律も無視しての発言。 「慰謝料?」 貴方達が払う立場だと思うわ。 どれだけの貴族を敵に回した事か分かっているのかしら? 隣国で流行りだからといって考えなしな行動。 それとも考えての事だったのか? とても不思議な事です。 ※※※ゆるゆる設定です。 ※※※オムニバス形式。

婚約なんてするんじゃなかった——そう言われたのならば。

ルーシャオ
恋愛
ビーレンフェン男爵家次女チェリーシャは、婚約者のスネルソン伯爵家嫡男アンソニーに振り回されていた。彼の買った時代遅れのドレスを着て、殴られたあざを隠すよう化粧をして、舞踏会へ連れていかれて、挙句にアンソニーの同級生たちの前で「婚約なんてするんじゃなかった」と嘲笑われる。 すでにアンソニーから離れられやしないと諦めていたチェリーシャの前に現れたのは、長い黒髪の貴公子だった。

婚約破棄して支援は継続? 無理ですよ

四季
恋愛
領地持ちかつ長い歴史を持つ家の一人娘であるコルネリア・ガレットは、婚約者レインに呼び出されて……。

冤罪により婚約破棄された令嬢は、どん底から幸せをつかみ取りました。

香取鞠里
恋愛
冤罪により婚約破棄されたニーナは、肩身の狭い思いをしていたが、ある日ある大物の人物に求愛されて──!?

元婚約者は入れ替わった姉を罵倒していたことを知りません

ルイス
恋愛
有名な貴族学院の卒業パーティーで婚約破棄をされたのは、伯爵令嬢のミシェル・ロートレックだ。 婚約破棄をした相手は侯爵令息のディアス・カンタールだ。ディアスは別の女性と婚約するからと言う身勝手な理由で婚約破棄を言い渡したのだった。 その後、ミシェルは双子の姉であるシリアに全てを話すことになる。 怒りを覚えたシリアはミシェルに自分と入れ替わってディアスに近づく作戦を打ち明けるのだった。 さて……ディアスは出会った彼女を妹のミシェルと間違えてしまい、罵倒三昧になるのだがシリアは王子殿下と婚約している事実を彼は知らなかった……。

婚約破棄?上等よ!─気づいたときにはもう遅いんですよ?

R.K.
恋愛
一人の女の子の復讐までの物語 婚約破棄を告げられ、私は復讐することを誓った。

婚約してる彼が幼馴染と一緒に生活していた「僕は二人とも愛してる。今の関係を続けたい」今は許してと泣いて頼みこむ。

window
恋愛
公爵令嬢アリーナは、ダンスパーティの会場で恋人のカミュと出会う。友人から紹介されて付き合うように煽られて、まずはお試しで付き合うことになる。 だが思いのほか相性が良く二人の仲は進行して婚約までしてしまった。 カミュにはユリウスという親友がいて、アリーナとも一緒に三人で遊ぶようになり、青春真っ盛りの彼らは楽しい学園生活を過ごしていた。 そんな時、とても仲の良かったカミュとユリウスが、喧嘩してるような素振りを見せ始める。カミュに繰り返し聞いても冷たい受け答えをするばかりで教えてくれない。 三人で遊んでも気まずい雰囲気に変わり、アリーナは二人の無愛想な態度に耐えられなくなってしまい、勇気を出してユリウスに真実を尋ねたのです。

処理中です...