1 / 16
1話
しおりを挟む「どういうことでしょうか、グランド様? いきなり婚約破棄だなんて……!」
私は婚約者のグランド・ネテス侯爵令息に呼び出された。そこで言われたのは婚約破棄というものだ。信じられなかった。
「聞いての通りだ、ランゼ。私も気が滅入るのだがな……まあ、分かってくれ。私には侯爵令嬢のウィルナが似合っているのだよ」
「そんな……そんなことって……!」
私は伯爵令嬢で、ウィルナ様は侯爵令嬢に該当している。確かに並べた場合、どちらの地位が上かは明白だけれど。
「ですが、グランド様。私達は婚約をして半年にもなります。いきなり婚約破棄だなんて……そんなこと許されるはずが……」
「それについては申し訳ないと思っているよ。だが、分かって欲しい。私も侯爵令息という地位にいるんだ。より優れた女性を選んだだけのこと。慰謝料などはちゃんと支払うさ。後で文句を言われても面倒臭いのでね……」
「面倒臭い……そんな……」
そんな言い分ってあるだろうか? 婚約破棄をする相手からの言葉だとは到底思えない。普通ならグランド様は土下座をして謝罪するべきではないだろうか? 慰謝料を支払うことなど当たり前のことだ。わざわざ、確認するまでのレベルですらない。
「まあ、すまないが分かってくれランゼ」
「グランド様……」
グランド様はこれ以上話し合いをするつもりはないようだ。表情が冷めきっているし、私が何を言っても意見を変える気はないのだろう。彼の態度には確かにそれが出ていた。
「まあ、ランゼ。君が今から私に身体を捧げるというのなら……考えて上げても良いかな。愛人など、別の選択肢だってあるだろう」
「あくまでもウィルナ様が優先で私は影の存在……ということでしょうか?」
「まあ、そういうことになるかな。伯爵令嬢だし、そのくらいの地位でも問題ないだろう?」
私は影から身体を捧げて入れば良いということか……要するにグランド様の慰み者になるわけだ。ふざけないで欲しい……あまりにも私を、いえ、女性を馬鹿にしている言葉だわ。
「ふざけないでください、グランド様……あなたがそのような人間だとは思いませんでした! 私は婚約破棄に応じたいと思います! あなたに身体を捧げるなんて絶対にごめんです!」
「そうか……とても残念だよ、ランゼ。では、婚約破棄は成立ということか。本当に残念だよ……」
明らかに残念がっていない。これほどに言葉と態度が違う人も珍しいだろうか。私は涙を流しながら彼の部屋を飛び出した。こんな人と婚約を半年もしていたなんて……最悪だわ……!
10
お気に入りに追加
1,219
あなたにおすすめの小説
婚約なんてするんじゃなかった——そう言われたのならば。
ルーシャオ
恋愛
ビーレンフェン男爵家次女チェリーシャは、婚約者のスネルソン伯爵家嫡男アンソニーに振り回されていた。彼の買った時代遅れのドレスを着て、殴られたあざを隠すよう化粧をして、舞踏会へ連れていかれて、挙句にアンソニーの同級生たちの前で「婚約なんてするんじゃなかった」と嘲笑われる。
すでにアンソニーから離れられやしないと諦めていたチェリーシャの前に現れたのは、長い黒髪の貴公子だった。
婚約破棄令嬢ですけど、幼馴染王子と結ばれました~私を捨てた公爵様のことはもう知りません~
ルイス
恋愛
オルガス王国の貴族で、伯爵令嬢という立場にあったマドレーヌ。
公爵と婚約をしていたが、身勝手な理由により婚約破棄を言い渡されてしまった。
そんな彼女を救うのは、幼馴染でもあり第一王子殿下のカール。
二人は幼少の頃のような関係に戻り、幸せを享受していくのだった。周囲の助けも借りながら……。
一方で婚約破棄を言い渡した公爵はこれが原因となり、黒い噂などが出回ることになり……。
婚約破棄までの半日をやり直す話
西楓
恋愛
侯爵令嬢のオリヴィアは婚約者の王子にパーティーで婚約破棄を宣言され、国外追放となる。その途中で野盗に襲われて命を落としたと思ったら、パーティーの朝に戻っていた。
馬鹿王子にはもう我慢できません! 婚約破棄される前にこちらから婚約破棄を突きつけます
白桃
恋愛
子爵令嬢のメアリーの元に届けられた婚約者の第三王子ポールからの手紙。
そこには毎回毎回勝手に遊び回って自分一人が楽しんでいる報告と、メアリーを馬鹿にするような言葉が書きつられていた。
最初こそ我慢していた聖女のように優しいと誰もが口にする令嬢メアリーだったが、その堪忍袋の緒が遂に切れ、彼女は叫ぶのだった。
『あの馬鹿王子にこちらから婚約破棄を突きつけてさしあげますわ!!!』
こんなに馬鹿な王子って本当に居るんですね。 ~馬鹿な王子は、聖女の私と婚約破棄するようです~
狼狼3
恋愛
次期王様として、ちやほやされながら育ってきた婚約者であるロラン王子。そんなロラン王子は、聖女であり婚約者である私を「顔がタイプじゃないから」と言って、私との婚約を破棄する。
もう、こんな婚約者知らない。
私は、今まで一応は婚約者だった馬鹿王子を陰から支えていたが、支えるのを辞めた。
婚約者に婚約破棄かお飾りになるか選ばされました。ならばもちろん……。
こうやさい
恋愛
その日女性を背にした婚約者さまに婚約破棄かお飾り妻になるか選ばされました。
これ書いたらネタバレな気もするが、余命付きの病人が出るので苦手な方はお気を付け下さい。Rはまだ死んでないからとりあえず保留。
……てかコイツ、しれっと余命ぶっちぎりそうな気がする。
前作の止めたところがエグかったのか(通常だと思うけどなー、ヤバいか?)再開条件説明しとけと言われましたが……他の更新出来ない時なのは前提であと思い出したヤツというか気分(爆)。
いきなり理由が分からずお気に入りが複数入ってそれが続く(短期なら上のほう作品のこの作品を読んでる人は~に入ってて一応チェックするためのとりあえず目印あたりの可能性が高いと判断)とかしたらびびって優先はするだろうけどさ、それ以外のしおりとかエール(来たことないから違ってるかもしれん)とかポイントとか見に行かなきゃ分からないから更新している最中以外は気づかない可能性あるし、感想は受け付けてないしだからアルファ的な外部要因ではあんま決まらない。決めても基本毎日連続投稿再開するわけでもないし。
あと大賞開催中のカテゴリとかは優先度下がる。下の方だし、投票作品探してる人は投票ページから見るだろうから邪魔にはならないと分かってるんだがなんとなく。今とか対象カテゴリが多くてファンタジーカップまで重なってるから恋愛カテゴリが更新される可能性は地味に高い(爆)。ほっこりじんわりは諦めた。
辺りで。最終的にはやっぱり気分。今回既に危なかった。。。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/442748622
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる