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1話
しおりを挟む「どういうことでしょうか、グランド様? いきなり婚約破棄だなんて……!」
私は婚約者のグランド・ネテス侯爵令息に呼び出された。そこで言われたのは婚約破棄というものだ。信じられなかった。
「聞いての通りだ、ランゼ。私も気が滅入るのだがな……まあ、分かってくれ。私には侯爵令嬢のウィルナが似合っているのだよ」
「そんな……そんなことって……!」
私は伯爵令嬢で、ウィルナ様は侯爵令嬢に該当している。確かに並べた場合、どちらの地位が上かは明白だけれど。
「ですが、グランド様。私達は婚約をして半年にもなります。いきなり婚約破棄だなんて……そんなこと許されるはずが……」
「それについては申し訳ないと思っているよ。だが、分かって欲しい。私も侯爵令息という地位にいるんだ。より優れた女性を選んだだけのこと。慰謝料などはちゃんと支払うさ。後で文句を言われても面倒臭いのでね……」
「面倒臭い……そんな……」
そんな言い分ってあるだろうか? 婚約破棄をする相手からの言葉だとは到底思えない。普通ならグランド様は土下座をして謝罪するべきではないだろうか? 慰謝料を支払うことなど当たり前のことだ。わざわざ、確認するまでのレベルですらない。
「まあ、すまないが分かってくれランゼ」
「グランド様……」
グランド様はこれ以上話し合いをするつもりはないようだ。表情が冷めきっているし、私が何を言っても意見を変える気はないのだろう。彼の態度には確かにそれが出ていた。
「まあ、ランゼ。君が今から私に身体を捧げるというのなら……考えて上げても良いかな。愛人など、別の選択肢だってあるだろう」
「あくまでもウィルナ様が優先で私は影の存在……ということでしょうか?」
「まあ、そういうことになるかな。伯爵令嬢だし、そのくらいの地位でも問題ないだろう?」
私は影から身体を捧げて入れば良いということか……要するにグランド様の慰み者になるわけだ。ふざけないで欲しい……あまりにも私を、いえ、女性を馬鹿にしている言葉だわ。
「ふざけないでください、グランド様……あなたがそのような人間だとは思いませんでした! 私は婚約破棄に応じたいと思います! あなたに身体を捧げるなんて絶対にごめんです!」
「そうか……とても残念だよ、ランゼ。では、婚約破棄は成立ということか。本当に残念だよ……」
明らかに残念がっていない。これほどに言葉と態度が違う人も珍しいだろうか。私は涙を流しながら彼の部屋を飛び出した。こんな人と婚約を半年もしていたなんて……最悪だわ……!
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