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16話 トーマスの回答
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「トーマス様、あなた様がハッキリと言ってください。私との婚約を解消していただけますね?」
「り、リリム……! 本当に駄目なのか……? 俺に対する愛情はもうないのか?」
「ないです。以前にも申し上げた通りでございますが……トーマス様は自分の心は私だけの物とおっしゃっていましたが、そんなセリフなどもう聞きたくありません。あなた様はまた、浮気をするでしょう。トーマス様の言葉はそれだけ信用出来ない、ということになります。いい加減に分かってください」
「そ、そんな……リリム……!」
トーマス様はソファの上でガックリと肩を落としていた。これでハッキリと伝わったはずだ。後は……トーマス様の言葉を待つだけ。その時間はそれ程長くはなかった。
「……分かりました。婚約解消を了承致します……」
「と、トーマス……!」
トーマス様の言葉にカエサル様は驚いていた。彼の肩を掴み、強く揺すっている。トーマス様は疲れ切った表情になっていた。
「もう良いです……父上。リリム嬢に婚約関係を続ける意志は皆無のようでございますので……私は彼女の意志を尊重したいと考えています」
「そ、そうか……」
カエサル様は残念そうにしていたけれど、トーマス様の表情と言葉を聞いて、それ以上は何も言わなかった。ファング王子殿下とお父様も聞いている……もう、後から覆すことは出来ないだろう。私はようやく、トーマス様から解放されることになるのだ。
「リリム……1ついいかな?」
「なんでしょうか、トーマス様?」
「舞踏会などで会った際には……挨拶くらいはしても、構わないかな?」
「はい、そうですね。ベイル公爵家とは無関係の立場になりますが、公爵令息であるあなた様を無視することは、失礼に当たると存じますので。それは構いません」
「わかった。それを聞けて安心したよ」
「……」
トーマス様は何か、憑き物が取れたような顔つきに変わっていた。その変化には私だけでなく、お父様やファング王子殿下も無言ながら驚いているようだった。彼の中で何らかの心境の変な化があったのかもしれないわね。盛大な婚約解消話が成立したわけだから、仕方ないのかもしれないけれど……。
その変化で少しでもトーマス様がまともになってくれるように、私は願っている。
「り、リリム……! 本当に駄目なのか……? 俺に対する愛情はもうないのか?」
「ないです。以前にも申し上げた通りでございますが……トーマス様は自分の心は私だけの物とおっしゃっていましたが、そんなセリフなどもう聞きたくありません。あなた様はまた、浮気をするでしょう。トーマス様の言葉はそれだけ信用出来ない、ということになります。いい加減に分かってください」
「そ、そんな……リリム……!」
トーマス様はソファの上でガックリと肩を落としていた。これでハッキリと伝わったはずだ。後は……トーマス様の言葉を待つだけ。その時間はそれ程長くはなかった。
「……分かりました。婚約解消を了承致します……」
「と、トーマス……!」
トーマス様の言葉にカエサル様は驚いていた。彼の肩を掴み、強く揺すっている。トーマス様は疲れ切った表情になっていた。
「もう良いです……父上。リリム嬢に婚約関係を続ける意志は皆無のようでございますので……私は彼女の意志を尊重したいと考えています」
「そ、そうか……」
カエサル様は残念そうにしていたけれど、トーマス様の表情と言葉を聞いて、それ以上は何も言わなかった。ファング王子殿下とお父様も聞いている……もう、後から覆すことは出来ないだろう。私はようやく、トーマス様から解放されることになるのだ。
「リリム……1ついいかな?」
「なんでしょうか、トーマス様?」
「舞踏会などで会った際には……挨拶くらいはしても、構わないかな?」
「はい、そうですね。ベイル公爵家とは無関係の立場になりますが、公爵令息であるあなた様を無視することは、失礼に当たると存じますので。それは構いません」
「わかった。それを聞けて安心したよ」
「……」
トーマス様は何か、憑き物が取れたような顔つきに変わっていた。その変化には私だけでなく、お父様やファング王子殿下も無言ながら驚いているようだった。彼の中で何らかの心境の変な化があったのかもしれないわね。盛大な婚約解消話が成立したわけだから、仕方ないのかもしれないけれど……。
その変化で少しでもトーマス様がまともになってくれるように、私は願っている。
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