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9話 ハンニバルとエリー ③
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「な、なんで王子殿下がこんな所にいるのよ……!」
「知らねぇよ! 大体、この中に入る言い出したのはお前だろうが、エリー!!」
「私のせいにしないでよ! 煽りまくってたのはあんたでしょうが!」
騎士たちに囲まれた状況下であるにも関わらず、二人は喧嘩を始めた。その内容については、どっちもどっちの不快なものだったけれど。変に魔物たちの相手をしているはずだから、こういう状況には慣れているのよね……本当に性質が悪いわ。
「さて、詳しい話しは詰め所の方でゆっくり聞くとしようか。あまり抵抗しないでくれよ? 公務執行妨害と不敬罪も追加したいなら、話は別だけどね」
カイル様は本気の視線だ。いくらハンニバルとエリーでも二人だけで、この数の相手は無理でしょうね。それに、王子殿下とその護衛相手に抵抗なんてしたら、下手すれば死刑になるかもしれないわ。
「くそ……エメラダ、お前……この店で働くんだよな?」
騎士たちに連行されるのを覚悟したハンニバルは手錠を掛けられた時に、私に話しかけて来た。どういうつもりかしら……?
「そうだけど……なによ、一体……?」
「いや、なんでもねぇよ……じゃあな……」
「? どういうこと?」
捕まったのは自業自得なのに、復讐とかしてくるのかしら? そんなことをすれば、今度は大変なことになると思うけど……。
「エメラダ」
そんな時、カイル様が私の名前を呼んだ。私はすぐに反応する。
「は、はい、なんでしょうか? 王子殿下」
「まあ、この者達の処遇については、私の方で任せておいてくれ。決して、二人に復讐などはさせないつもりだ」
カイル様は私の心情を汲み取ってくれたのか、優しく微笑んでくれていた。こういうことで、一番怖いのは復讐だしね。でも、王子殿下率いる、国の精鋭に捕まってここまで言われたら、流石のハンニバルたちも何も出来ないでしょうね。
私とアミルの二人はホッと胸を撫で下ろした。この二人は私だけじゃなく、友人アミルにも酷いことを言ったんだから。しっかりと反省してもらわないと困るわ。
「ほら、歩け二人共」
「てめぇ、押すんじゃねぇよ……! 俺を誰だと思って……!」
「冒険者のハンニバル、だろう? もう、冒険者ではなくなってしまうかもしれんがな」
騎士たちに文句を言いながら、ハンニバル達は連行されて行った。
「それではまた、機会があれば訪れるとするよ。それまで達者でな……」
「ありがとうございました、カイル王子殿下。またいつでもお越しくださいませ」
「私からもお礼を申し上げますわ。ありがとうございました」
私とアミルは去って行くカイル様に頭を下げた。なんていうか……色々なことが連続して起きた1日だったわね……疲れたわ……。
「知らねぇよ! 大体、この中に入る言い出したのはお前だろうが、エリー!!」
「私のせいにしないでよ! 煽りまくってたのはあんたでしょうが!」
騎士たちに囲まれた状況下であるにも関わらず、二人は喧嘩を始めた。その内容については、どっちもどっちの不快なものだったけれど。変に魔物たちの相手をしているはずだから、こういう状況には慣れているのよね……本当に性質が悪いわ。
「さて、詳しい話しは詰め所の方でゆっくり聞くとしようか。あまり抵抗しないでくれよ? 公務執行妨害と不敬罪も追加したいなら、話は別だけどね」
カイル様は本気の視線だ。いくらハンニバルとエリーでも二人だけで、この数の相手は無理でしょうね。それに、王子殿下とその護衛相手に抵抗なんてしたら、下手すれば死刑になるかもしれないわ。
「くそ……エメラダ、お前……この店で働くんだよな?」
騎士たちに連行されるのを覚悟したハンニバルは手錠を掛けられた時に、私に話しかけて来た。どういうつもりかしら……?
「そうだけど……なによ、一体……?」
「いや、なんでもねぇよ……じゃあな……」
「? どういうこと?」
捕まったのは自業自得なのに、復讐とかしてくるのかしら? そんなことをすれば、今度は大変なことになると思うけど……。
「エメラダ」
そんな時、カイル様が私の名前を呼んだ。私はすぐに反応する。
「は、はい、なんでしょうか? 王子殿下」
「まあ、この者達の処遇については、私の方で任せておいてくれ。決して、二人に復讐などはさせないつもりだ」
カイル様は私の心情を汲み取ってくれたのか、優しく微笑んでくれていた。こういうことで、一番怖いのは復讐だしね。でも、王子殿下率いる、国の精鋭に捕まってここまで言われたら、流石のハンニバルたちも何も出来ないでしょうね。
私とアミルの二人はホッと胸を撫で下ろした。この二人は私だけじゃなく、友人アミルにも酷いことを言ったんだから。しっかりと反省してもらわないと困るわ。
「ほら、歩け二人共」
「てめぇ、押すんじゃねぇよ……! 俺を誰だと思って……!」
「冒険者のハンニバル、だろう? もう、冒険者ではなくなってしまうかもしれんがな」
騎士たちに文句を言いながら、ハンニバル達は連行されて行った。
「それではまた、機会があれば訪れるとするよ。それまで達者でな……」
「ありがとうございました、カイル王子殿下。またいつでもお越しくださいませ」
「私からもお礼を申し上げますわ。ありがとうございました」
私とアミルは去って行くカイル様に頭を下げた。なんていうか……色々なことが連続して起きた1日だったわね……疲れたわ……。
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