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23話 舌戦 その3
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「セシル王太子殿下……どういうつもりですかな?」
「どういうつもり、だと? どういう意味だ?」
「分かっているでしょう……」
リードフ様とセシル様は一触即発の様相を呈している……でも、なんだろうか? 舌戦みたいになるのかと思っていたけれど、リードフ様が明らかに押されてるような気がした。
まあ、北の最高権力者のマグレフ公爵の前で、羞恥を晒すわけにはいかないということなのかもしれないけれど。
でも、こういう風になることを想定していなかったのかしら?
「セシル王太子殿下……よろしいですかな?」
「なんですか、マグレフ公爵? 私で答えられることであればなんありとどうぞ」
「ありがとうございます。クリンジ王国はもしかして……一枚岩ではないのですかな?」
聞きにくいことを平気で質問してくるマグレフ公爵だった。この肝っ玉の強さは流石としか言いようがない。セシル様の返答次第では相手国への牽制と取られかねないけれど……。
「一枚岩ですか……乱れているように見えますか?」
「失礼ながら……まあ、リードフ殿の態度からもそう言った印象は受けておりましたが」
セシル様の護衛とマグレフ公爵の護衛は、互いに距離を詰めているようだった。マグレフ公爵は紛れもないトップだし、セシル様もほぼそれに近い存在だ。やろうと思えば、お互いの首を狙える距離ではある。少しだけ怖い空気が流れているように思えた。
「この距離……我が護衛に命令を出せば、セシル王太子殿下を狙える距離ですな」
「ご冗談を……それは私も同じことです。しかも、この場所はクリンジ王国内。そんな危険を犯すような貴方ではないでしょう?」
「もちろんでございますとも。クリンジ王国と戦争状態になれば、我が国の民は甚大な被害を被るでしょう。それはやがて暴動へと変わり、戦争どころではなくなる。マグレフ公国はそこまで裕福な国家ではありませんからな」
「その言葉を聞けて安心しました。私としては、リードフ殿の独立の手助けをするのではないか、と思っていましたから」
セシル様の本音の言葉だ……そんなことを言ってしまって大丈夫なのだろうか? 緊張の一瞬である。
「ハルベルト家とは今後も仲良くしたいとは思っておりますが、独立の手助けは難しいですな。特に……自らの婚約者を蔑ろにするような家では猶更と言いますか」
「なっ……!?」
「おや、気付いていたのですか? 流石はマグレフ公爵、とても素晴らしい洞察力をお持ちだ」
「いえいえ、勿体ないお言葉ですよセシル殿。貴方の言葉を聞いていれば、フォルブース公爵家がここに居ない理由は大方想像が出来ます。王家の味方をしているのではありませんか?」
「話が早くて助かります。私が説明する必要は最早ないようだ」
トントン拍子に話が進んでいく。リードフ様はマグレフ公爵を後ろ盾にしたかったのだろうけれど、完全に当てが外れたようね。それにしても……フォルブース家の状況を容易に推理するとは、流石は最高権力者だけあるわ。
私は尊敬の眼差しでマグレフ公爵を、そしてセシル様を見ていた。リードフ様はこの二人にまったく及んでいなかったわね……。
「どういうつもり、だと? どういう意味だ?」
「分かっているでしょう……」
リードフ様とセシル様は一触即発の様相を呈している……でも、なんだろうか? 舌戦みたいになるのかと思っていたけれど、リードフ様が明らかに押されてるような気がした。
まあ、北の最高権力者のマグレフ公爵の前で、羞恥を晒すわけにはいかないということなのかもしれないけれど。
でも、こういう風になることを想定していなかったのかしら?
「セシル王太子殿下……よろしいですかな?」
「なんですか、マグレフ公爵? 私で答えられることであればなんありとどうぞ」
「ありがとうございます。クリンジ王国はもしかして……一枚岩ではないのですかな?」
聞きにくいことを平気で質問してくるマグレフ公爵だった。この肝っ玉の強さは流石としか言いようがない。セシル様の返答次第では相手国への牽制と取られかねないけれど……。
「一枚岩ですか……乱れているように見えますか?」
「失礼ながら……まあ、リードフ殿の態度からもそう言った印象は受けておりましたが」
セシル様の護衛とマグレフ公爵の護衛は、互いに距離を詰めているようだった。マグレフ公爵は紛れもないトップだし、セシル様もほぼそれに近い存在だ。やろうと思えば、お互いの首を狙える距離ではある。少しだけ怖い空気が流れているように思えた。
「この距離……我が護衛に命令を出せば、セシル王太子殿下を狙える距離ですな」
「ご冗談を……それは私も同じことです。しかも、この場所はクリンジ王国内。そんな危険を犯すような貴方ではないでしょう?」
「もちろんでございますとも。クリンジ王国と戦争状態になれば、我が国の民は甚大な被害を被るでしょう。それはやがて暴動へと変わり、戦争どころではなくなる。マグレフ公国はそこまで裕福な国家ではありませんからな」
「その言葉を聞けて安心しました。私としては、リードフ殿の独立の手助けをするのではないか、と思っていましたから」
セシル様の本音の言葉だ……そんなことを言ってしまって大丈夫なのだろうか? 緊張の一瞬である。
「ハルベルト家とは今後も仲良くしたいとは思っておりますが、独立の手助けは難しいですな。特に……自らの婚約者を蔑ろにするような家では猶更と言いますか」
「なっ……!?」
「おや、気付いていたのですか? 流石はマグレフ公爵、とても素晴らしい洞察力をお持ちだ」
「いえいえ、勿体ないお言葉ですよセシル殿。貴方の言葉を聞いていれば、フォルブース公爵家がここに居ない理由は大方想像が出来ます。王家の味方をしているのではありませんか?」
「話が早くて助かります。私が説明する必要は最早ないようだ」
トントン拍子に話が進んでいく。リードフ様はマグレフ公爵を後ろ盾にしたかったのだろうけれど、完全に当てが外れたようね。それにしても……フォルブース家の状況を容易に推理するとは、流石は最高権力者だけあるわ。
私は尊敬の眼差しでマグレフ公爵を、そしてセシル様を見ていた。リードフ様はこの二人にまったく及んでいなかったわね……。
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