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21話 舌戦 その1

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「リードフ殿……久しぶりだな」

「これはこれは……セシル王太子殿下。まさか、この舞踏会にご出席されるとは思っていませんでしたよ」

「急遽決まった出席なのでな。何かマズイことでもあったかな?」

「いえいえ、そのようなことは一切ござませんよ」


 セシル様は幾つかの攻め手となるカードを用意して、この場に臨んでいる。いきなり、リードフ様に話し掛けたのは舌戦に持ち込むつもりなのだろうか。私は今は様子を窺うことしかできないけれど。


「おやおや……今回もネフィラ嬢と一緒でございますか、セシル王太子殿下」

「もちろんだ。ああ、貴殿には言っていなかったか。彼女は私の婚約者になる予定なのだよ。あくまで、まだ予定の段階だがな」

「な、なんと……!」


 リードフ様はかなり驚いているようだった。もちろん、私やセシル様の狙い通りではあるけれど……。

 リードフ様は隣に立っている、セルゲイ・マグレフ公爵のことが気になって仕方がないのだろう。セルゲイ様の前で恥をかくことは避けたいと考えているはずだ。その辺りが私達の狙う部分でもあったのだ。王家としては、他国の王に弱みを見せるのは当然、避けたいところだけれど、リードフ様を野放しにした時の危険の方が、デメリットが大きいと判断していた。

「おや、そのような重要な案件をハルベルト公爵は知らなかったのですかな?」

「あ、いや……マグレフ公爵。それは……ははは」


 笑って誤魔化しているけれど、明らかに誤魔化し切れていない。


「セルゲイ・マグレフ公爵。お久しぶりでございます……会えて光栄でございますよ」

「セシル王太子殿下、ありがとうございます。私も同じ気持ちでございます。しかし……そちらのお方と婚約をされていらっしゃったとは、初めて伺いました。おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「セルゲイ・マグレフ公爵、初めまして……ネフィラ・アルカイックと申します。以後、お見知りおきを……」

「ええ、こちらこそよえおしくお願い致します」


 マグレフ公爵との挨拶は無事に終わったわね。後は、徐々に攻勢に転じれば良いだけ。ここまでは順調に進んでいると言えるかしら。
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