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7話

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「というわけでジェームズさん! 私はシーザー・カンタゴル侯爵様と婚約しました~~~!」

「そうか……しかし、確か貴殿は……」

「……」


 能天気なレイナは気付いていないみたいだけど、ジェームズやシーザー様の空気は微妙に変化していた。おそらく、ジェームズは私とシーザー様が婚約していたことを知っているだろうから。

「色々と事情がありまして。現在はレイナと婚約をしております」

「なるほど、深い事情があるのなら仕方ないな」

「お気遣い感謝いたします」

「いや、気にしないでくれ」


 本当は深い事情なんてないんだけど。ややこしい事情はあるけれど、婚約破棄になっても仕方ない事情なんかじゃない。ただ、レイナがシーザー様を欲しいと言ったから、高圧的なシーザー様とくっつくよう仕向けただけ。

 なんだか私って悪女みたいかしら? でもレイナの自業自得だし仕方ないわね。

 不穏な空気はそれだけじゃない。先ほどから、シーザー様自身の様子もおかしかった。こちらは形容しがたいけれど……能天気にしゃべっているレイナを睨んでいるような。

「レイナとシーザー殿の婚約か。おめでとう、と言えばいいのかな?」

「ありがとうございます! ジェームズさん! ジェームズさんにそう言ってもらえて幸せです!」


 レイナはこれ見よがしに明るい笑顔をジェームズに向けていた。子爵階級でしかない私達がジェームズと親しく出来るのは幼馴染の関係にあるからだ。もちろんその中にシーザー様は含まれていない。

「……」

 先ほどからシーザー様の様子がおかしいのは、蚊帳の外に居ることを寂しく感じているのかしら? いえ、私の知っている高圧的なシーザー様はそんなことを感じないはず。そこにはもっと大きな感情が渦巻いているように思えた。


 仕方ない……助け舟を出してあげよう。


「レイナ。ジェームズと話せることが嬉しいのは分かったけれど、少し落ち着きなさい」

「なによ、お姉ちゃんは! そんなの私の勝手でしょ? あ、分かった! ヤキモチ妬いてるんでしょ?」

「いえ、そういうわけじゃなくて……」

「あやしい~~~~!!」


 駄目だこの妹……早くなんとかしないと。シーザー様の顔色がどんどん変化していっているような気がする。この場にジェームズが居なかったら、どんな行動に出るか分からない程に……。よく考えたら、私が何かしてあげる必要なんてないんだけど。


「ジェームズ、ちょっといいかしら?」

「どうしたんだ、アリス?」

「ごめんなさい。少しだけ外へ……」

「一緒にか? 分かった」


 私はジェームズを連れて外へ出ることにした。シーザー様の様子の変化を見る為に。さて……どうなるか見物だわ。
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