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4話 錬金術のお店 その2
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「凄いですな、こんなところに仮設の錬金術店をオープンとは!」
「品揃えも豊富なようでございますね」
「ありがとうございます、そう言っていただければ光栄でございますわ」
私がオニキス伯爵家の屋敷の前で錬金術のお店をオープンさせて早、数日。噂を聞きつけてやって来たのは、同じく貴族街に住んでいる貴族の方々だった。傷薬や特効薬といったアイテム類を揃えており、お客様からの評判は良いと言えるだろうか。
「お嬢様、想定外の売り上げではございませんか?」
「そうね、アイテムの製造が追い付かないレベルだわ」
私のお店を手伝ってくれている、使用人も予想外の売り上げに驚いているようだった。アイテムの製造自体は私にしか出来ない為、正直、かなり忙しくなっている。事前に次の日の分の作り置きもしないといけないので、体力的な消耗も激しいが、私はなんだか楽しくなってしまっていた。
私のお店の噂が広まっているのは、スターク様やアリアンヌ姉さまのおかげだ。それに、お父様やお母様も情報展開をしてくれている。私は周りに支えられているのだ。この恩はお店を成功させることで返していけたら、と思っている。
というより、現段階ではそれ以外で返す方法が思いつかないけれど……。
アリアンヌ姉さまが言っていた通り、私は婚約破棄の一件を記憶の片隅に寄せることが出来るようになっていた。
------------------------
それからさらに何日か経過した。私は現在、お昼休憩を取っていた。
「お疲れ様でございます、メドロア様」
「ありがとう、お疲れ様」
使用人の一人である、メアリーが私に軽食を持ってきてくれた。何種類かの飲み物と一緒に。
「オープンの出だしとしては、成功していると言えるのではないですか?」
「そうかもしれないわね、まだ油断は出来ないけれど。これも、接客を担当してくれているメアリー達のおかげよ。本当にありがとう」
「勿体ないお言葉でございます、メドロア様」
私はアイテム製造に忙しいので、接客に出ることは稀だ。つまり、私一人で回すことは出来ない。お店の出だしの売り上げは使用人達の頑張りによるものでもあったのだ。
家族以外に屋敷の使用人達にもお世話になっている……本当に感謝しか出来ないわ。これらの根底には、私の婚約破棄があるから余計にね。
「それにしても……あら?」
「メドロア様、如何なさいましたか……?」
私がメアリーに話をしようかと思った時、一台の馬車がお店の前にやって来たのだった。明らかに高級な馬車だ。その辺りの貴族の物ではないことがすぐに分かる。
「ガイア、ここで間違いないのだな?」
「はい、シュタイン兄さま。この場所で間違いございません。最近オープンされた錬金術の店でございますね」
「えっ……あのお二人は……」
二人の人物が、何人かの護衛と共に馬車を降りて来た。その二人は……間違いない、この国の王子様だったのだ。
私の思考はその時、停止していた……。
「品揃えも豊富なようでございますね」
「ありがとうございます、そう言っていただければ光栄でございますわ」
私がオニキス伯爵家の屋敷の前で錬金術のお店をオープンさせて早、数日。噂を聞きつけてやって来たのは、同じく貴族街に住んでいる貴族の方々だった。傷薬や特効薬といったアイテム類を揃えており、お客様からの評判は良いと言えるだろうか。
「お嬢様、想定外の売り上げではございませんか?」
「そうね、アイテムの製造が追い付かないレベルだわ」
私のお店を手伝ってくれている、使用人も予想外の売り上げに驚いているようだった。アイテムの製造自体は私にしか出来ない為、正直、かなり忙しくなっている。事前に次の日の分の作り置きもしないといけないので、体力的な消耗も激しいが、私はなんだか楽しくなってしまっていた。
私のお店の噂が広まっているのは、スターク様やアリアンヌ姉さまのおかげだ。それに、お父様やお母様も情報展開をしてくれている。私は周りに支えられているのだ。この恩はお店を成功させることで返していけたら、と思っている。
というより、現段階ではそれ以外で返す方法が思いつかないけれど……。
アリアンヌ姉さまが言っていた通り、私は婚約破棄の一件を記憶の片隅に寄せることが出来るようになっていた。
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それからさらに何日か経過した。私は現在、お昼休憩を取っていた。
「お疲れ様でございます、メドロア様」
「ありがとう、お疲れ様」
使用人の一人である、メアリーが私に軽食を持ってきてくれた。何種類かの飲み物と一緒に。
「オープンの出だしとしては、成功していると言えるのではないですか?」
「そうかもしれないわね、まだ油断は出来ないけれど。これも、接客を担当してくれているメアリー達のおかげよ。本当にありがとう」
「勿体ないお言葉でございます、メドロア様」
私はアイテム製造に忙しいので、接客に出ることは稀だ。つまり、私一人で回すことは出来ない。お店の出だしの売り上げは使用人達の頑張りによるものでもあったのだ。
家族以外に屋敷の使用人達にもお世話になっている……本当に感謝しか出来ないわ。これらの根底には、私の婚約破棄があるから余計にね。
「それにしても……あら?」
「メドロア様、如何なさいましたか……?」
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「ガイア、ここで間違いないのだな?」
「はい、シュタイン兄さま。この場所で間違いございません。最近オープンされた錬金術の店でございますね」
「えっ……あのお二人は……」
二人の人物が、何人かの護衛と共に馬車を降りて来た。その二人は……間違いない、この国の王子様だったのだ。
私の思考はその時、停止していた……。
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