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32話 ダンテに会いに ①
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私とハロルドはダンテ様の居る、宮殿の地下牢を目指していた。許可は既に、ソシエを通してライドウ皇帝陛下からもらっている。
「地下牢って寒いイメージがあったけど……暖房が効いているのね……」
私のイメージしていた地下牢そのものの外見ではあったけど、意外と温かい……それに、罪人を入れておく牢屋にはそれぞれ、ちゃんとした毛布が敷き詰められていた。なんだか、こういう所は私の想像する光景とは、かなり異なっていた。
「一般的な国家の地下牢にしては、この帝国の牢屋は優遇されていると思うよ」
「やっぱり、そうなのね」
私が本などで見た地下牢の図。普通はあちらの方が正しいわけね。
「例え罪人であっても、最低限の人権の確保を……ライドウ皇帝陛下の父君がそう打ち出したのは知っているだろ?」
「ええ、聞いたことがあるわ」
ハロルドに言われるまでは忘れていたけど……。
「あそこがダンテ侯爵令息の居る場所……かな」
「そうみたいね……」
牢屋の造り自体は他の物と特に変わりはないけれど、守っている衛兵の数が違う。一つの牢屋に4人も待機するなんて異例のはずだから。
おそらくは、教会での事件での失態で、衛兵全体にきつくお灸が据えられたのか……それとも、ダンテ様を絶対に逃がさないようにしているのか。地下牢にトイレはあるけど、お風呂は地下牢の入り口にあるだけだ。ダンテ様が外に出る時にも、万全を期す為ってところかしら。
-------------------------------------------------
「これはハロルド様、シェル様。お疲れ様でございます」
「ああ、そちらこそ」
「ご苦労様」
私とハロルドは牢屋を守っている衛兵と軽く挨拶を交わした。既に、私たちが向かうことは連絡が入っているはず。彼らはすぐに、私たちに道を開ける。そして、私に一言。
「気を付けてください……鉄格子が守っているとはいえ、相手はあなた様に危害を加えようとした相手ですから」
「わかっています」
ハロルドも近くに居るし、まず大丈夫だと思う。ダンテ様が実は牢屋の鍵を隠し持っていたとかでもない限り、今回ばかりは何もできないだろう。
私がダンテ様に会いたかった理由……それは、単純に復讐の為。今はどんな気分かを島流しに遭う前に聞いておきたかったから。意地悪? そんなことはないでしょう……私は命の危険だって感じたのだから。
私たちの気配に気づいたダンテ様は、少しやつれた顔をこちらに向けていた。
「地下牢って寒いイメージがあったけど……暖房が効いているのね……」
私のイメージしていた地下牢そのものの外見ではあったけど、意外と温かい……それに、罪人を入れておく牢屋にはそれぞれ、ちゃんとした毛布が敷き詰められていた。なんだか、こういう所は私の想像する光景とは、かなり異なっていた。
「一般的な国家の地下牢にしては、この帝国の牢屋は優遇されていると思うよ」
「やっぱり、そうなのね」
私が本などで見た地下牢の図。普通はあちらの方が正しいわけね。
「例え罪人であっても、最低限の人権の確保を……ライドウ皇帝陛下の父君がそう打ち出したのは知っているだろ?」
「ええ、聞いたことがあるわ」
ハロルドに言われるまでは忘れていたけど……。
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牢屋の造り自体は他の物と特に変わりはないけれど、守っている衛兵の数が違う。一つの牢屋に4人も待機するなんて異例のはずだから。
おそらくは、教会での事件での失態で、衛兵全体にきつくお灸が据えられたのか……それとも、ダンテ様を絶対に逃がさないようにしているのか。地下牢にトイレはあるけど、お風呂は地下牢の入り口にあるだけだ。ダンテ様が外に出る時にも、万全を期す為ってところかしら。
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「これはハロルド様、シェル様。お疲れ様でございます」
「ああ、そちらこそ」
「ご苦労様」
私とハロルドは牢屋を守っている衛兵と軽く挨拶を交わした。既に、私たちが向かうことは連絡が入っているはず。彼らはすぐに、私たちに道を開ける。そして、私に一言。
「気を付けてください……鉄格子が守っているとはいえ、相手はあなた様に危害を加えようとした相手ですから」
「わかっています」
ハロルドも近くに居るし、まず大丈夫だと思う。ダンテ様が実は牢屋の鍵を隠し持っていたとかでもない限り、今回ばかりは何もできないだろう。
私がダンテ様に会いたかった理由……それは、単純に復讐の為。今はどんな気分かを島流しに遭う前に聞いておきたかったから。意地悪? そんなことはないでしょう……私は命の危険だって感じたのだから。
私たちの気配に気づいたダンテ様は、少しやつれた顔をこちらに向けていた。
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