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2話 王太子殿下 その1
しおりを挟む「アラン・リクジール王太子殿下……ご機嫌麗しゅうございます」
「うん、ありがとう。それにしても……」
アラン王太子殿下がメトロポス伯爵家に来てくれた。アラン王太子殿下はリクジール王国の次期国王陛下だ。そんな人がたかが伯爵家に来る時点で凄いことなんだけれど。まあ、彼と私は幼馴染の関係だから、こういう奇跡が起きているのだと思う。
彼とは応接室で話をしている。お父様達の姿はない。
「はい? 如何なさいましたか?」
「なんでそんなに畏まっているんだ? 普通に話してくれて構わないぞ」
「え、ええと……」
アラン王太子殿下の性格的にそういうと思ったけれど……彼と普通に話すのはなかなか勇気がいる行為だ。でも、アラン王太子殿下が言っていることを無視するわけにもいかないし。
「本当に良いの……?」
「ああ、構わないよ。昔は私のことを叩いていたじゃないか。あの頃のフィリスに戻ってくれよ」
「い、いつの話をしているのよ、もう!」
「ははははっ、その意気だよ」
周囲に立っている護衛の人達も笑っているようだ。昔の思い出を話すのは良いけれど、時と場合を考えて欲しい。まったく……まあ、空気は和んだけれど。
「そ、それじゃあお言葉に甘えるけれど……アラン」
「なんだい、フィリス?」
「こうして話すのは久しぶりよね。あなたが王太子殿下になってからは初めてじゃないかしら?」
「そうだな……色々と忙しかったからね」
「ええ、そうでしょうね」
アランは私とは違って王太子になっている。まだ未婚みたいだけれど、そこに至るまではかなりの苦労があったはずだ。年齢は私と同じ18歳のはずなのに、彼の言動はもっと大人に見える。
「それで……本日の用件っていうのは……」
「大体分かっているかと思うが、オルドー・マークス公爵との婚約破棄に関してのことだよ。詳細を知りたい思ってね」
やっぱりその話か……まあ、タイミング的に彼が来る理由がそれしか考えられないけれど。
「聖女の能力は異端として私は追放されたの……本当にびっくりしたわ」
「異端? 聖女の能力が? オルドーは何を考えているんだ……国境線の守りの要だったんだろう、君の守護方陣は」
「そうらしいけれど、お前なんか居なくても自分の兵力だけで守りは完璧だと言われたわ。聖女を手にした幸運な公爵という呼ばれ方が嫌いだったみたいね」
「……それはつまり、オルドーはプライドが傷付けられるから、君を追放したのか?」
「そんな感じだと思うわ」
「なんということだ……そんなことで、フィリスと婚約破棄をするとは……」
アランはとても怪訝な表情をしていた。私としてもオルドー様の婚約破棄理由は信じられない。ハッキリ言って不快というか悲しいというか……そんな感情が渦巻いてしまっていた。
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