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17:やっぱり暗記なんだ
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「では、わたしの魔法を受け入れてください」
「あ、はい。受け入れるって、その、力を抜けばいいですか?」
「そんな感じです。手が暖かくなると思いますが、恐れずに」
謎の黒い人の頼みで、私たちは大神殿へとやって来た。
ここへ来た理由は簡単。
彼の剣に掛けられた呪いを解くため、だ。
「この剣の呪いは複雑で、絡まったの問いの糸を解かなくてはならないのです」
「呪いの解き方にも、いろいろあるということでしょうか?」
「はい。一般的なものは、わたしどもの神聖力をぶつければ消すことが出来ます」
神聖力というのも、魔法の一種。
魔法の中でも、神に祈ることで具現化するタイプの魔法を総じてこう呼んでいる。
祝福の魔法も神聖力の一つなの。
「呪いの糸は鑑定スキルや、鑑定眼でしか見ることが出来ません。ですので、我々神官だけでは、呪いを解除できないのです」
「それで私に、大神殿まで一緒に来てくれと仰ったのですね」
謎の黒い人に視線を向けると、彼は不愛想な表情で頷いた。
ぽつりぽつりと短い単語で彼は語り、実は一カ月近くずっと、呪いを解いてくれる人物を探していたらしい。
「わたしの聖なる手がちゃんと掛ったようです。これで呪いの糸に触れることが出来るでしょう」
「はい、やってみます」
聖職者の中でも高位の階級である司祭様が、まず私の両手に『聖なる手』という魔法を付与する。
それを付与されることで、呪いに触れられるようになる。そうじゃなかったら黒い糸を手がすり抜けて、呪いの解除も出来ない。
絡まった糸を解くだけ──簡単だと思ったけど、これがまたずいぶんとごっちゃごちゃで難しい。
「これまではあの方の魔力で、無理やり呪いを抑え込んでいたのでしょう。時間の経過とともに、呪いはより複雑になりますから」
「確かに複雑です……いっそハサミで切ってしまいたいぐらい」
「それが出来れば、呪いの解除も楽なのですけどねぇ」
つまりダメってことね。
はぁ……ま、仕方ないわ。でもこれで恩を返せるんだもの、頑張んなきゃ。
それに──
「し、司祭様っ。この方は確かに祝福の魔法の持ち主のようです」
「おぉ、そうですか! ご令嬢、もしよろしければ、我々が魔法の覚醒のお手伝いをいたしますが、どうでしょうか?」
祝福の魔法は神聖力のひとつ。その中でもとても重宝される魔法。
魔法陣の範囲内にいる人の体力を向上させ、怪我と疲れを癒してくれる力がある。
恐怖といた感情も抑え、高揚感すら与えてくれるとも言われているのよね。
「は、はいっ。誰かのお役に立てるような魔法でしたら、ぜひ使えるようになりたいですっ」
エリーシャがやる気を出している。
大聖堂に来たことで、ダメもとで彼女の事を話してみたの。
そしたら直ぐに調べてくれることになって、そのうえ彼女の魔法の覚醒にも協力して貰えることになった。
結果として、ここに来てよかったみたい。
しかし、呪いは簡単には解けず──
「数日かけて解くしかないようですなぁ」
「うぅ、すみません、直ぐに解除できなくって」
ほんと、申し訳ない。
ずっと鑑定スキルを発動させてなきゃいけないから、私の少ない魔力では三十分ごとに同じ時間休憩しなきゃいけない。
今日一日で、糸の絡み具合からすると三割、解けたかなって感じ。
「……次、いつ……」
「明日も来れます」
「そうかっ」
うっ。またぱぁっと表情が明るくなった。
そして一瞬で元に戻る。
ひ、表情、コロコロ変わるわね。
「迎えに行く」
「迎えにって、どこに来ればいいか分かるんですか?」
謎の黒い人が頷く。
「カイチェスター侯爵令嬢。スリを捕まえた時」
「あぁ、衛兵さんに名乗ったんだっけ。んー、では明日の朝九時でよろしいでしょうか?」
彼が頷く。
すると剣を腰に差して、直ぐに行ってしまった。
「ルシアナ様、私も明日、また来ます!」
「エリーシャさんも頑張っているのですね」
「はい! 魔法陣の暗記、頑張ってますっ」
あ、やっぱり暗記なんだ。
が、頑張ってね。
「あ、はい。受け入れるって、その、力を抜けばいいですか?」
「そんな感じです。手が暖かくなると思いますが、恐れずに」
謎の黒い人の頼みで、私たちは大神殿へとやって来た。
ここへ来た理由は簡単。
彼の剣に掛けられた呪いを解くため、だ。
「この剣の呪いは複雑で、絡まったの問いの糸を解かなくてはならないのです」
「呪いの解き方にも、いろいろあるということでしょうか?」
「はい。一般的なものは、わたしどもの神聖力をぶつければ消すことが出来ます」
神聖力というのも、魔法の一種。
魔法の中でも、神に祈ることで具現化するタイプの魔法を総じてこう呼んでいる。
祝福の魔法も神聖力の一つなの。
「呪いの糸は鑑定スキルや、鑑定眼でしか見ることが出来ません。ですので、我々神官だけでは、呪いを解除できないのです」
「それで私に、大神殿まで一緒に来てくれと仰ったのですね」
謎の黒い人に視線を向けると、彼は不愛想な表情で頷いた。
ぽつりぽつりと短い単語で彼は語り、実は一カ月近くずっと、呪いを解いてくれる人物を探していたらしい。
「わたしの聖なる手がちゃんと掛ったようです。これで呪いの糸に触れることが出来るでしょう」
「はい、やってみます」
聖職者の中でも高位の階級である司祭様が、まず私の両手に『聖なる手』という魔法を付与する。
それを付与されることで、呪いに触れられるようになる。そうじゃなかったら黒い糸を手がすり抜けて、呪いの解除も出来ない。
絡まった糸を解くだけ──簡単だと思ったけど、これがまたずいぶんとごっちゃごちゃで難しい。
「これまではあの方の魔力で、無理やり呪いを抑え込んでいたのでしょう。時間の経過とともに、呪いはより複雑になりますから」
「確かに複雑です……いっそハサミで切ってしまいたいぐらい」
「それが出来れば、呪いの解除も楽なのですけどねぇ」
つまりダメってことね。
はぁ……ま、仕方ないわ。でもこれで恩を返せるんだもの、頑張んなきゃ。
それに──
「し、司祭様っ。この方は確かに祝福の魔法の持ち主のようです」
「おぉ、そうですか! ご令嬢、もしよろしければ、我々が魔法の覚醒のお手伝いをいたしますが、どうでしょうか?」
祝福の魔法は神聖力のひとつ。その中でもとても重宝される魔法。
魔法陣の範囲内にいる人の体力を向上させ、怪我と疲れを癒してくれる力がある。
恐怖といた感情も抑え、高揚感すら与えてくれるとも言われているのよね。
「は、はいっ。誰かのお役に立てるような魔法でしたら、ぜひ使えるようになりたいですっ」
エリーシャがやる気を出している。
大聖堂に来たことで、ダメもとで彼女の事を話してみたの。
そしたら直ぐに調べてくれることになって、そのうえ彼女の魔法の覚醒にも協力して貰えることになった。
結果として、ここに来てよかったみたい。
しかし、呪いは簡単には解けず──
「数日かけて解くしかないようですなぁ」
「うぅ、すみません、直ぐに解除できなくって」
ほんと、申し訳ない。
ずっと鑑定スキルを発動させてなきゃいけないから、私の少ない魔力では三十分ごとに同じ時間休憩しなきゃいけない。
今日一日で、糸の絡み具合からすると三割、解けたかなって感じ。
「……次、いつ……」
「明日も来れます」
「そうかっ」
うっ。またぱぁっと表情が明るくなった。
そして一瞬で元に戻る。
ひ、表情、コロコロ変わるわね。
「迎えに行く」
「迎えにって、どこに来ればいいか分かるんですか?」
謎の黒い人が頷く。
「カイチェスター侯爵令嬢。スリを捕まえた時」
「あぁ、衛兵さんに名乗ったんだっけ。んー、では明日の朝九時でよろしいでしょうか?」
彼が頷く。
すると剣を腰に差して、直ぐに行ってしまった。
「ルシアナ様、私も明日、また来ます!」
「エリーシャさんも頑張っているのですね」
「はい! 魔法陣の暗記、頑張ってますっ」
あ、やっぱり暗記なんだ。
が、頑張ってね。
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