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9:少し減ってくれるといいなぁ

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「こ、侯爵令嬢!?」

 子爵家に到着して、わざと家人が出てくるのを待っていた。
 だって私がエリーシャのバックに付いてんだぞってアピールするためには、本人たちに姿を見せなきゃ意味ないし。

 侯爵家の家紋を付けた馬車だから、彼女の義母も姉も面白いぐらい慌てて飛び出して来たわ。

「え? ルシアナ様──」
「エリーシャさん」

 彼女には爵位のことを話していなかったので、飛び出してきた夫人の言葉で初めて知ることになった。
 でも最初から話してたら、きっと馬車の中でギクシャクしただろうしね。

「言ったでしょ。私、お友達が欲しかったのよ」

 ルシアナには確かに友達はいない。
 爵位が高い者に媚びへつらうようなのはたくさんいるけど、ルシアナはそんな令嬢たちと友達になりたいとは思わなかった。
 だけど実際には爵位こそ全てだという令嬢や、高い地位にいる令嬢に媚び売る者たちしかいない。

「ごきげんよう、ラドグリン子爵夫人。ご令嬢をお連れするのは遅くなってしまい、申し訳ありませんでした」
「あ、あの、こ、この娘が、何か侯爵令嬢の気に障るようなことでも?」

 夫人がそう言うと、後ろに控えた娘の顔が歪む。
 怯えているんじゃない、笑っているのだ。
 うぅ、気味悪いぃ。

「いいえ、別に? 私たち、お友達になったんですよ。ね、エリーシャさん」
「あ、は……い。とても楽しい時間でした」
「私もよ。エリーシャさんが社交界デビューする時には、ぜひご一緒させてくださいね」
「は、はい。えっと、十日後の、ウリエーナ伯爵家で開かれるパーティーに……」

 十日後……あぁ、そうだったわね。
 これまた詳しく描写がなかったけど、伯爵家で開催されるパーティーがあったわね。
 このパーティーがエリーシャの社交界デビューになるんだっけ。しかも最悪の……ね。

「ローラ」
「はいお嬢様。ウリエーナ伯爵夫人から、招待状が届いておりました」
「そう。じゃあ帰ったらすぐお返事してちょうだい。私も出席しますって」

 それからエリーシャの手を取り、にっこり笑った。

「あなたの社交界デビューを、直ぐ隣で応援しますわね」
「ルシアナ様……ありがとうございます。右も左も分からなかったし、凄く……凄く嬉しいです」

 うんうん。子犬みたいで可愛い子ねぇ。
 
 最後に彼女とハグし、後ろに立つ夫人とその娘にも笑顔を見せてやる。
 もちろん、嘲笑だ。

 分かってんだろうな、ごるぁ。
 あたしの友達に手ぇ出したら、ただじゃおかねーぞごるぁ。

 こんな感じで。
 うんうん、二人の顔が青ざめたから、ちゃーんと察したみたいね。
 それじゃあ安心して帰りますか。

「それじゃあエリーシャさん。伯爵様のパーティーで会いましょう」
「はい、ルシアナ様」

 あくまで彼女にだけ挨拶をして、馬車へと乗り込んだ。
 窓から顔を出し、エリーシャへと手を振る。
 そんで止めのひと睨みを母子へと送った。

 虐めがこれでゼロになることはないかもだけど、少し減ってくれるといいなぁ。
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