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11:無限。
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解体作業までやってくれるタブレット! 何て万能チートアイテムなんだ!
そしてますますルティには、
「それの事、絶対に人に知られるな!」
と念を押される始末。
まぁ仕方ない。便利アイテムは誰だって手にしたいだろうし、唯一無二のアイテムなら高値が付くだろう。
金を持っている者は自分が使うために、持っていない者は金の為にタブレットを奪いに来るだろう。殺してでも――だ。
しかし、今のところはルティと二人っきりだ。隠す必要も無い。
『ルナティックの肉』と『ルナティックの毛皮』の二つに分けられ、DLファイルに入れられたファイル。その上には今でも盗賊1から13のファイルが入ったままだ。
いっそ『削除』してしまおうかとも思う。だが削除すれば、それはすなわち彼らを殺す事になるのだろうかと不安にもなる。
「どうしたユウト殿」
「あ、うん……。この盗賊たちをどうしようかと思って」
「どうしようかって……まだ入っていたのか」
タブレットを覗き込むルティに、ここからここまでが盗賊だとファイルを指差し教える。
ルティも数字は読めるようだ。どうやら数字は共通らしい。
「生きているのか?」
「中には空気があると説明書きにあったので、生きてると思います」
「なんて無駄な……。盗賊などさっさと殺してしまえば良かったのに」
「いや、でも幾ら悪人だからって、殺してしまうとこっちも犯罪者になりませんか? あ、ならないんですか……そうですか……」
基本的に盗賊などには賞金首が掛けられた者も居るほどだ。殺して町にその首を持って行けばお金が貰える。
そんな世界で、盗賊を殺したからと罪に問われるはずも無い。
まして都や町、その近くの村ならいざ知らず、衛兵すらやってこない所で誰が殺されようがみな知ったこっちゃないのだ。
「削除……してもいいのかなぁ」
「削除? 消せるなら消してしまえ。邪魔になるのだろう?」
「そ、そうなんだけど……」
「間違って桃のように取り出しても、面倒なだけだぞ」
「そうなんだよねぇ……」
「あ! まさかこの中で奴らが桃を食べたりしないだろうなっ」
「いや、それは無いだろうけど……」
そもそも盗賊たちはインストールされていない。ただファイルとして中にあるだけだ。
だがルティには死活問題だったようで、桃の為に削除しろと迫って来る。ずい、ずいっと。
「削除だ」と言ってずい。
「うっ」
「削除」と言ってずい。
「うぅ」
「削除!」と言ってずいっ。
今や彼女の顔は悠斗のそれにくっつくほどの距離にあった。
負けた。
悠斗は迫りくるルティに負けた。
ついさっきお互い顔真っ赤にした記憶が蘇り、ドキムネに耐えられず敗北した。
盗賊ファイル1をぽちって『削除』をタップ。
【本当に削除しますか?】『はい」『いいえ』の『はい』を選び、パサっという音と共にファイルが消えた。
【盗賊1の削除が完了しました。悪の撲滅に感謝します】
そんなメッセージが浮かぶ。
そのメッセージが、悠斗の罪悪感を和らげてくれた。
これは輪廻ちゃんの心使い。もしこういう事があった場合にと、組み込んだシステムメッセージだ。
もちろん、悪党ではない何の罪も無い人を取り込んで削除した場合には、きつーいお仕置きが待っている――事は、悠斗は知らない。
幸いにも悠斗はそういった人間ではないので、この先もお目に掛かることは無いだろう。
翌朝、テントから出てくると、その周囲を獣が取り囲んでいた。
取り囲っていたというか、そうせざるを得なかったのだ。中に入れないから。
昨夜寝る前、ルティが周囲に結界魔法を張っている。中から外に出ることは出来るが、外から中へと入ることは決してできない鉄壁の魔法だ。
で、眠っている間に二人の匂いを嗅ぎつけ、ご馳走だ! と喜び勇んでやって来た魔物たちだろう。
「"俺の剣""俺の剣""俺の剣"」
三本の剣がヒュンヒュン飛んで行って、魔物を瞬殺していく。
臆病な魔物はそれを見ただけで我先にと逃げ出し、結局倒せたのは10匹程度だった。
「肉はもう……要らないもんなぁ」
魔物=食料という考えが浮かんでいる辺り、悠斗も強くなったものだ。
魔物の悲鳴を聞いて、もう一つのテントから出て来たルティは惨状に目を細める。
「そいつらの肉は臭くて食べられない。毛皮の質も良くないし、そのまま捨てておけばいい。他の魔物が始末してくれるだろう」
食べれるか食べれないか。それが基準でいいのだろうか。
死体が転がるその場での食事は流石に嫌だという意見で一致した二人は、僅かに移動して食事の準備に取り掛かった。
二人が移動する間、周囲の低級魔物たちがガクブルしていたのは言うまでもない。
あっさり目の食事を終えた二人は、タブレットの地図を確認しながら山へと登り始めた。
森がそのまま続くような山には登山道すらなく、なんとか歩けそうな所を選んで進むしかない。傾斜が比較的緩やかなのが救いだろう。
だが昼になる頃にはルティが根を上げてしまった。
「む、無理……これ以上歩けない」
「うぅん。さすがに山道はきついかぁ」
と言ったものの、悠斗はまったく疲れた様子も無い。
「ユ、ユウト殿は元気だな。いったいどんな鍛え方をしているんだ」
「いや、特に鍛えては無かったけど……」
社畜なのでジムに通う時間なんてありません。
だが毎日のように営業で外回りをしていたので、それでかもしれないと悠斗は考える。
が、それでもこの半日の山登りで疲れを感じないのも不思議なものだ。
「何かのスキルだろうか? ユウト殿、スキルを見せて貰ってもいい?」
小首を傾げ上目遣いで見つめられ、嫌とは言えない。
悠斗はタブレットを取り出そうとしたが、ルティがそれを制す。
「鑑定スキルを持っているのでね。それを使えば他者のステータスも見れるから」
「あ、鑑定スキルってそんな風に使う事も出来るんですね」
「ん」
鑑定スキルは特に呪文の詠唱も無いようだ。ルティはじぃーっと悠斗を見つめ、見つめられている悠斗は頬を赤らめた。
「ぶっ。な、なんだそのスキルは!」
「え?」
突然ルティは吹き出し、悠斗をビシっと指差す。
いったい何をそんなに驚いているのかと、悠斗は自分のステータスを確認。
言語スキルが加わって、現在はこうだ。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
葉月悠斗 16歳 人族 男
血液型:O型
【習得スキル】
『筋力強化・∞』『肉体強化・∞』『敏捷性強化・∞』
『魔力強化・∞』『鑑定』『タブレット』『ダウンロード』
『インストール』『ライフポーション』『俺の剣』
『異世界言語』『ルーン語』『精霊語』
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
何かおかしいところはあるだろうか?
首を傾げルティを見れば、彼女は察したようにこめかみを押さえ説明した。
「ユウト殿のスキルに、強化系があるだろう」
「あぁ、ありますね」
「その横に、数字の8を横にしたようなマークがあるだろう」
「あぁ、これですか。これは……ん? 無限?」
無限を記号にすると∞だ。
となると、無限に強化される――そういう意味になる?
「もしかしてこれって……珍しいスキルだったり?」
「珍しいどころか、私が知る限り無限を付けたスキルを持っていたのは、歴史上、勇者や英雄だ、もしくはその真逆の人物だけだな」
「あぁ……」
これはとんでもないスキルを与えられてしまった。その事に気づいたが、最初からこんなスキルだったのだろうか。
輪廻ちゃんは、1001回分のスキルをくれると言って、タブレットやDLスキルをくれた。ついでに若返らせてもくれた。
そういえば、残りポイントは既存スキルの強化に使うと言っていたハズ。
その結果がこの無限なのだ。
悠斗は頭を抱えた。そしてルティは……。
「ふふ……ふふふふふふ」
笑い出した。
「さすが勇者殿! 無限スキルを一つならまだ分かるが、四つも持っているなんて!」
「え? よ、四つって凄いんですか?」
「歴史上、複数の無限スキルを持っていた者の記録は――無い」
悠斗は規格外勇者認定を受けた。
そしてますますルティには、
「それの事、絶対に人に知られるな!」
と念を押される始末。
まぁ仕方ない。便利アイテムは誰だって手にしたいだろうし、唯一無二のアイテムなら高値が付くだろう。
金を持っている者は自分が使うために、持っていない者は金の為にタブレットを奪いに来るだろう。殺してでも――だ。
しかし、今のところはルティと二人っきりだ。隠す必要も無い。
『ルナティックの肉』と『ルナティックの毛皮』の二つに分けられ、DLファイルに入れられたファイル。その上には今でも盗賊1から13のファイルが入ったままだ。
いっそ『削除』してしまおうかとも思う。だが削除すれば、それはすなわち彼らを殺す事になるのだろうかと不安にもなる。
「どうしたユウト殿」
「あ、うん……。この盗賊たちをどうしようかと思って」
「どうしようかって……まだ入っていたのか」
タブレットを覗き込むルティに、ここからここまでが盗賊だとファイルを指差し教える。
ルティも数字は読めるようだ。どうやら数字は共通らしい。
「生きているのか?」
「中には空気があると説明書きにあったので、生きてると思います」
「なんて無駄な……。盗賊などさっさと殺してしまえば良かったのに」
「いや、でも幾ら悪人だからって、殺してしまうとこっちも犯罪者になりませんか? あ、ならないんですか……そうですか……」
基本的に盗賊などには賞金首が掛けられた者も居るほどだ。殺して町にその首を持って行けばお金が貰える。
そんな世界で、盗賊を殺したからと罪に問われるはずも無い。
まして都や町、その近くの村ならいざ知らず、衛兵すらやってこない所で誰が殺されようがみな知ったこっちゃないのだ。
「削除……してもいいのかなぁ」
「削除? 消せるなら消してしまえ。邪魔になるのだろう?」
「そ、そうなんだけど……」
「間違って桃のように取り出しても、面倒なだけだぞ」
「そうなんだよねぇ……」
「あ! まさかこの中で奴らが桃を食べたりしないだろうなっ」
「いや、それは無いだろうけど……」
そもそも盗賊たちはインストールされていない。ただファイルとして中にあるだけだ。
だがルティには死活問題だったようで、桃の為に削除しろと迫って来る。ずい、ずいっと。
「削除だ」と言ってずい。
「うっ」
「削除」と言ってずい。
「うぅ」
「削除!」と言ってずいっ。
今や彼女の顔は悠斗のそれにくっつくほどの距離にあった。
負けた。
悠斗は迫りくるルティに負けた。
ついさっきお互い顔真っ赤にした記憶が蘇り、ドキムネに耐えられず敗北した。
盗賊ファイル1をぽちって『削除』をタップ。
【本当に削除しますか?】『はい」『いいえ』の『はい』を選び、パサっという音と共にファイルが消えた。
【盗賊1の削除が完了しました。悪の撲滅に感謝します】
そんなメッセージが浮かぶ。
そのメッセージが、悠斗の罪悪感を和らげてくれた。
これは輪廻ちゃんの心使い。もしこういう事があった場合にと、組み込んだシステムメッセージだ。
もちろん、悪党ではない何の罪も無い人を取り込んで削除した場合には、きつーいお仕置きが待っている――事は、悠斗は知らない。
幸いにも悠斗はそういった人間ではないので、この先もお目に掛かることは無いだろう。
翌朝、テントから出てくると、その周囲を獣が取り囲んでいた。
取り囲っていたというか、そうせざるを得なかったのだ。中に入れないから。
昨夜寝る前、ルティが周囲に結界魔法を張っている。中から外に出ることは出来るが、外から中へと入ることは決してできない鉄壁の魔法だ。
で、眠っている間に二人の匂いを嗅ぎつけ、ご馳走だ! と喜び勇んでやって来た魔物たちだろう。
「"俺の剣""俺の剣""俺の剣"」
三本の剣がヒュンヒュン飛んで行って、魔物を瞬殺していく。
臆病な魔物はそれを見ただけで我先にと逃げ出し、結局倒せたのは10匹程度だった。
「肉はもう……要らないもんなぁ」
魔物=食料という考えが浮かんでいる辺り、悠斗も強くなったものだ。
魔物の悲鳴を聞いて、もう一つのテントから出て来たルティは惨状に目を細める。
「そいつらの肉は臭くて食べられない。毛皮の質も良くないし、そのまま捨てておけばいい。他の魔物が始末してくれるだろう」
食べれるか食べれないか。それが基準でいいのだろうか。
死体が転がるその場での食事は流石に嫌だという意見で一致した二人は、僅かに移動して食事の準備に取り掛かった。
二人が移動する間、周囲の低級魔物たちがガクブルしていたのは言うまでもない。
あっさり目の食事を終えた二人は、タブレットの地図を確認しながら山へと登り始めた。
森がそのまま続くような山には登山道すらなく、なんとか歩けそうな所を選んで進むしかない。傾斜が比較的緩やかなのが救いだろう。
だが昼になる頃にはルティが根を上げてしまった。
「む、無理……これ以上歩けない」
「うぅん。さすがに山道はきついかぁ」
と言ったものの、悠斗はまったく疲れた様子も無い。
「ユ、ユウト殿は元気だな。いったいどんな鍛え方をしているんだ」
「いや、特に鍛えては無かったけど……」
社畜なのでジムに通う時間なんてありません。
だが毎日のように営業で外回りをしていたので、それでかもしれないと悠斗は考える。
が、それでもこの半日の山登りで疲れを感じないのも不思議なものだ。
「何かのスキルだろうか? ユウト殿、スキルを見せて貰ってもいい?」
小首を傾げ上目遣いで見つめられ、嫌とは言えない。
悠斗はタブレットを取り出そうとしたが、ルティがそれを制す。
「鑑定スキルを持っているのでね。それを使えば他者のステータスも見れるから」
「あ、鑑定スキルってそんな風に使う事も出来るんですね」
「ん」
鑑定スキルは特に呪文の詠唱も無いようだ。ルティはじぃーっと悠斗を見つめ、見つめられている悠斗は頬を赤らめた。
「ぶっ。な、なんだそのスキルは!」
「え?」
突然ルティは吹き出し、悠斗をビシっと指差す。
いったい何をそんなに驚いているのかと、悠斗は自分のステータスを確認。
言語スキルが加わって、現在はこうだ。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
葉月悠斗 16歳 人族 男
血液型:O型
【習得スキル】
『筋力強化・∞』『肉体強化・∞』『敏捷性強化・∞』
『魔力強化・∞』『鑑定』『タブレット』『ダウンロード』
『インストール』『ライフポーション』『俺の剣』
『異世界言語』『ルーン語』『精霊語』
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
何かおかしいところはあるだろうか?
首を傾げルティを見れば、彼女は察したようにこめかみを押さえ説明した。
「ユウト殿のスキルに、強化系があるだろう」
「あぁ、ありますね」
「その横に、数字の8を横にしたようなマークがあるだろう」
「あぁ、これですか。これは……ん? 無限?」
無限を記号にすると∞だ。
となると、無限に強化される――そういう意味になる?
「もしかしてこれって……珍しいスキルだったり?」
「珍しいどころか、私が知る限り無限を付けたスキルを持っていたのは、歴史上、勇者や英雄だ、もしくはその真逆の人物だけだな」
「あぁ……」
これはとんでもないスキルを与えられてしまった。その事に気づいたが、最初からこんなスキルだったのだろうか。
輪廻ちゃんは、1001回分のスキルをくれると言って、タブレットやDLスキルをくれた。ついでに若返らせてもくれた。
そういえば、残りポイントは既存スキルの強化に使うと言っていたハズ。
その結果がこの無限なのだ。
悠斗は頭を抱えた。そしてルティは……。
「ふふ……ふふふふふふ」
笑い出した。
「さすが勇者殿! 無限スキルを一つならまだ分かるが、四つも持っているなんて!」
「え? よ、四つって凄いんですか?」
「歴史上、複数の無限スキルを持っていた者の記録は――無い」
悠斗は規格外勇者認定を受けた。
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