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23話

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「がーっはっはっは。あんちゃんむちゃくちゃだなぁ」
「アンドンムカデの女王ってのはな、冒険者ランクがBでも手こずるモンスターだぜ」

 まぁスキルが当たりさえすれば、どんな敵でも穴を空けられるって能力だもんな。
 けど相手がドラゴンとかだと、当てる前に攻撃されてこっちが死ぬだろう。
 ほどほどの敵を倒して、スキルレベルを上げなきゃな。

 アントンムカデの女王を倒したことで、急に他のムカデの動きも鈍くなった。
 俺が開通させた女王ルームには卵がいっぱいあって、それらは全部潰すことに。
 それも終わると来た道を戻る。もちろん女王ルームへの穴は塞いだ。

「あとは冒険者にこのことを知らせて、全員を退避させてから穴を塞ぐだけだ」
「あんちゃんのそのスキルだと土も消滅させちまうから、穴塞ぎには使えんなぁ」
「あぁ、すみません」

 まぁそういうデメリットもあるよな。
 採掘とかには使えない。

 冒険者への連絡を任され、俺とルナ、ネフィにスーモが洞窟を進む。

「スーモ、鉢植えをどうするんだ?」

 スーモがツリーハウスの苗を貸してくれというので持たせているが……。

「こ、こうするの」

 鉢を突き出すと、中の土から触手のような根っこが飛び出してきた。
 え、ちょっと待て。なんで小さな鉢からそんな長い根っこが出てくるんだ?
 鞭に見間違うほど長く、そしてしなる根っこ。長さは3メートル以上ありそうだ。

「そ、それをどうするんだスーモ?」
「えい、やぁってするの」

 えいやぁって……え、この子ちょっと怖い。
 そのえいやってのはすぐに見ることが出来た。

 ムカデがやって来ると、スーモが鉢を前に突き出し根っこが躍り出る。

「おい、さっきより根っこが太いぞ!」
「えいっやぁ!」

 ぶんっとしなった根っこが、ムカデの胴を真っ二つにしていく。

 つ、強い……。
 役目を終えた根っこは、しゅるしゅると縮んで鉢の中へ。
 
「スーモって、最強精霊なんじゃないか?」
「ボ、ボクたちもスーモがこんな風に戦えるなんて、知らなかったわ」
「スーモちゃん凄いですぅー」
「ス、スーモも頑張るの」

 俺のユニークスキルも真っ青な強さじゃないか。

 穴を進みながら見つけた冒険者に声を掛けて行く。

「女王は討伐しました! ドワーフたちは穴を塞ぐ作業をしているので、引き返してくださいっ」
「え!? も、もう倒したのかっ」
「まだ掃討作戦を開始して一時間も掛かってねーぞっ」
「いや、さっきからムカデどもの動きが明らかに鈍ってたし、倒されたんだろう」
「兵隊ムカデを女王から引きはがす作戦は、成功したようだな」

 なるほど。冒険者が暴れて女王ムカデの護衛をしている兵隊ムカデをおびき出す。女王ムカデの部屋が手薄になっただろうタイミングで、ドワーフたちが直通ルートを掘って直接叩くって作戦だったのか。
 
 全員で協力して他の冒険者にも引き返すように伝える。
 あまり奥までは誰も言っておらず、先頭だというパーティーと一緒に穴を引き返した。

「よし、これで全員じゃな」
「点呼はオッケーだ。やってくれドワーフさんよ」

 穴は天井を崩落させて塞いだ。それも一カ所ではなく、数カ所で。

「奴らは穴も掘れるが、今はその命令を出す女王もいねぇー。このまま放っときゃそのうち勝手に死ぬだろう」
「よーっし! これにて掃討作戦終了!! 予定よりかなり早く終わったが、何かあったのか?」

 冒険者チームのリーダーっぽいのがドワーフにそう声を掛ける。
 ドワーフは「すぐに穴が開通しただけさ」と説明した。
 俺の隣に立っていたドワーフが「異世界から来たってことは内緒にしとけ」という。

「ヒューマンに知れると、権力者に連れて行かれて面倒だぜ」
「あぁ、なるほど」
「それに強い力もってっと、なにかと面倒ごとに巻き込まれるからな」

 だから俺のことを冒険者には話さなかったんだろう。

 穴を塞ぎ、お互いの勝利と無事を祝った後は解散となる。

「あんちゃんが倒した分は、クリスタルがよく落ちてるな」
「ほれ、お前さんたちのだ」

 渡されたクリスタルはそれほど大きなものではない。フォレスト・リザードの物より小さい。
 働きムカデは雑魚に分類されるようだ。ただし数が多いので、冒険者も好んで相手にしたいモンスターじゃないそうだ。

「おい、ルドル。このあんちゃんとエルフのお嬢ちゃんたちをそっちの町に案内してやってくれねーか」
「ん? エルフとは珍しい……坊主はヒューマンか?」
「森に入って迷子になったんだと。それをこの二人のお嬢ちゃんが保護したのさ」

 なんかそういうことになったらしい。
 転移者だって話せないなら、そうするしかないか。

「助けて貰ったお礼に、エルフの里の開拓を手伝いたいと思って」
「開拓?」
「畑作りです。その為に野菜の種とか苗とか、買おうと思って」
「なるほどねぇ。よし、案内してやるからついてきな。半日でここは出られるからよ」

 こうして俺たちは道に迷うことなく、ヒューマンの町へ向かうことが出来た。


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