上 下
85 / 97

85

しおりを挟む
 金髪碧眼の、まさに美少女と呼べるような子がそこに居て。だけどそれを口に出して言ってはいけない奮起が、ソディアにはあった。
 怖い……。
 別に下心なんて微塵も無いのに、可愛いと思うのもダメなのだろうか。

 けど……あの少女はどこか雰囲気が違う。
 どう違うかと言うと、そりゃあもう、人間じゃないのがハッキリとわかるぐらい神々しかった。

『初めまして。私は生を司る女神リトラでございます』

 あ、うん。やっぱり女神だったね。
 命を司るってのは、どういう意味なんだろうか?

『これから産まれる命や、生まれた者の命の管理をする神だと思ってください』
「ん? 女神さまは俺の考えていることがわかるとか?」
『あ……申し訳ありません。私、その子たちとの会話が、いつも念話でしたもので』

 その子たちってのはノームのことで、やっぱり精霊のノームかな?
 俺の心の声に応えるように、女神さまは頷く。

 で、この女神さまと樫田たちと、なんの繋がりが?

『お久しぶりですリトラ様』
『は。お久しぶりですディカート。しかしあなた、体はどうしたのですか?』
『いやぁ。お恥ずかしいことに、滅ぼされてしまいまして。あはははは』

 あははははって、なんて軽い魔王なんだ。
 しかもこの二人、知り合いなのか?

『ディカートには私から頼んで、この神殿の入り口を封印して貰っていますので。もちろん、顔見知りですよ。貴方の後ろに居るアブソディラスともね』
「え、アブソディラスも知っているのか?」
『んー、そうじゃのう。神々の大戦の際、随分とこき使われた記憶しかないがのぉ』
『うふふふふふふふ』

 さ、さすが神様……。

「それで、女神リトラ様。俺の知り合い……その、クラスメイトの樫田と高田、戸敷の三人を救えるんでしょうか?」

 魔王を殺したのは樫田だが、高田と戸敷も何かしらされてしまっているのだろうと思う。
 中身は別人だったという魔王。その意味は若干わからない。

『貴方と共にこの世界に召喚された者のうち、三人の魂は肉体から引きはがされ彷徨っています』
「え? 引きはがされて? 殺されたってことですか!?」
『いいえ、少し違います。肉体から魂だけを抜き取られ、霊体として彷徨っているのです。死んではいませんが、その器には既に別の者が入っていますので……』
『その別の者というのがね、冥府の女神デストラの配下である、四天王のうちの三人なんだ』

 し、四天王。
 なんかいっきに厨二臭くなってきたぞ。

 けど、三人が死んでいないって言うなら、助け出しようがあるってことか?
 そんな疑問に女神は頷く。

『だけど簡単ではありません。まず彷徨っている三人の魂を見つけ、保護してください』
「保護?」
『まぁ暫くはあなたの背後霊にでもして頂ければよろしいかと』
「え……」
『嫌じゃのぉ。まぁーた狭くなるではないか』
『あははははは。賑やかになるねぇ』

 俺の背後霊……どこまで増やせばいいんだ。





『では、この"反魂の玉"をお持ちください。いいですか。この玉を使うときは、必ず器から四天王の魂を追い出してからですよ。玉を使えば次は「よういドンッ」ですからね』
「その四天王の魂を、どうやって追い出せばいいんですか?」
『それはディカートが知ってますので、彼に聞いてね♪』

 魔王のノリも軽いけど、この女神さまも軽いな。
 この世界ってこういうものなんだろう。

 女神さまから貰った反魂の玉を使えば、次に入った魂が器――つまり肉体に定着する。
 この時、冥府の女神の四天王に入られてしまえば……もう樫田たちを救う手立てが無くなってしまうことになる。
 失敗は許されないってことか……。

 女神にお礼をいい、別れを告げ地上へと向かおうとしたとき――。

『妹が……デストラが迷惑を掛けてしまって、申し訳ありません』
「妹?」
『はい。私と冥府の女神デストラは、姉妹神なのです。私は生まれてからの命を、妹は死して生まれ変わるのを待つ魂を、それぞれ慈しみ、次の世に繋げる神でした』

 太陽と月。そんな関係だった姉妹は、神々の大戦中に仲たがいしてしまったのだと。
 元は悪しき神ではなかっらデストラは、闇の女神の入れ知恵によって邪神になってしまったと話す。

『本当は優しい子なんです……だけどあの子の犯した罪は大きく、もう元のデストラには戻れないでしょう……あの子を復活させてはなりません』
「復活……ヴァルジャスの王子様は、冥府の女神を復活させようとしているのか」
『はい。デストラを復活させれば、冥王の力を得ることができます。死者を自由に操れる力です』

 それは死霊使いの比ではないらしい。
 俺の死霊術は、声が届く範囲の死者にしか使えない。
 だけど冥府の王の力であれば、国単位の範囲で死霊術を使えるんだそうだ。

 いや、それヤバいでしょ。
 しかもだ。モンスターにも使えるってんだからヤバさが半端ない。
 世界征服も簡単に出来ちゃいそうだ。

 あの王子さまはそれが目的なのか……。

 こりゃ早いところ樫田たちを探して、王子様の悪行を阻止しなきゃな。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

処理中です...