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3章

第──42

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「この指輪は、帰還の指輪という。どこかになお仕込んだはずだと、ここ数日ずっと探していてな」

 そしてやっと見つけたのだと、長老は笑いながら話した。

「転移魔法の力が封じ込められたものだ」
「え、めちゃくちゃ便利アイテムなんじゃ?」
「そう。だが大森林から出ない私には、まったく意味のないものだ」

 だから俺にくれるという。
 これがあれば自由にここへ戻ってこれるという訳だ。

「印の書き方を教えよう。まずは自宅に刻むといい」
「ありがとうございます!」

 出発したばかりだったが、俺たちは一度自宅へと戻ることになった。
 そして小一時間かけて印の書き方、魔力の込め方を教えてもらう。

「指輪を使ってここへ戻ってくるときには、向こう側でも印をつけるのを忘れぬように」
「分かりました。これなら行ったり来たりも楽そうですね」
「だが注意することがある。印は同時に二カ所まで。旅先で使った印は、移動する際に必ず消して行け」
「その都度、書き換える感じなんですね」
「そうだ」

 消し忘れたら、引き返さなきゃならなくなるな。

「大丈夫よ長老様。わたしたちがちゃーんと、消し忘れがないか見ておくから」
「そうです。私とシェリルで、空さんをサポートしますから」
「そうか。なら安心だろう」

 俺、信用されてない……。

『ぎゅふふぎゅ』

 くっ。ペットにまで笑われた!





「では気を付けてな」
「はい。長老さま、いろいろお世話になりました」
「いや、今生の別れでもないし。そもそも私はまだあと数百年は余裕で生きるのだぞ」
「あー、そうですね……」

 エルフの寿命、おそるべし。

 だけど……そう考えると、リシェルとシェリルはずっと若いまま、俺だけが老けていつか死ぬのか。

「どうしたのよ、空」
「さ、出発しましょう」
『きゅ~』
「ん、そうだな。行こう」

 先のことなんて考えても仕方がない。
 今を……今だけを考えて、二人と一緒に生きよう。

「よぉーし! まずは俺のパンツだ!」
「ちょっ。パ、パンツって言わないでよ恥ずかしい!」
「は? さっきシェリルが俺のパンツがどうこう言ってたじゃないか」
「そ、それとこれとは別っ」
「はいはい。さぁ空さんのパンツを買いに行きましょう」
「いや、女の子から言われると、なんか恥ずかしいです」

 旅の目標がまずパンツ、か。

 二日かけて町へと到着すると、直ぐにパンツを買いに行く。
 俺のパンツは、今穿いている一枚と着替えが二枚。
 否。既に使用済みのパンツが二枚だ!

 つまり今日買わなきゃ、今夜穿きかえるパンツが──ない!!!

 衣類屋に向かってパンツを買おうと思ったのだが──

「これも可愛い」
「いいですね、じゃあ色違いを買いましょう」
「そうね。あ、こっちはどう?」
「うぅん、ちょっと……えっちな気がします」
「そ、そうかしら。ねぇ、空はどう思う?」

 俺に聞かないでくれ。

 二人も新しい下着が欲しいからと先に女ものの衣類屋に来たのが間違いだった。
 いや、前回もこうだったじゃないか。
 少しは学習しようぜ俺。

 しかも今回は荷物持ちとして一緒に店内まで連れていかれ、女ものの下着をあれこれ見せられ持たされ恥ずかしいったりゃありゃしない!
 なんで男のパンツはトランクス一択なのに、女のほうはいろいろあるんだよ!
 シェリルが見せたのなんて、紐パンだぞ!!
 この世界の下着職人は神かよ!!
 
 1時間ほどあれこれ下着や服を選んでまたまた大荷物になる二人。

「か、買いすぎちゃいましたかね?」
「お、お金大丈夫よね?」
「ん。またギルドで素材を買い取って貰えば大丈夫」

 森のモンスターが減ったので、今回は道中で倒した分の素材しかない。
 代わりに大森林では上質の薬草なんかをたくさん採取してある。それらを売れば結構な金になるだろう──と思う。

 あとは俺のパンツとシャツ、ついでに着替えをさっさと買って宿へと向かった。

「二部屋お願いしま──「一部屋お願いしますっ」ちょ、おい」
「これからいろんなところを旅するのよ? お金、大事にしなきゃダメでしょ」

 い、いや。だからって同じ部屋は……。

「ツインかい。それとも四人部屋にするかい」
「「ツイン「四人部屋で!」ぶー」」

 なんで不貞腐れるんだよ。
 お、俺はなぁ、清い男女交際がしたいんだ。

 部屋へと入ると、結構狭く感じた。
 森の自宅は個室を使わせて貰っていたし、決して大きな部屋ではないが広々使える。なんせ置くものがないからな。

 なんて思っていると──

「なにをしているんだ、二人とも」
「うんしょ。ベッド引っ付けてるの」
「なぜ?」
「空さんと、並んで寝るためです。よいしょっと」

 左右にそれぞれ2つずつあるベッドを、片側の壁に3つ並ぶように動かしている。

「これでよしっと」
「……な、なにもしないからな俺は!」
「なっ。わ、わたしたちだって何もしないわよ!」
「空さん、えっちです」
『ぎゅふふぅ』

 ちがーうっ!
 毛玉も下品な声で鳴くな!

 結局その日はドキドキしすぎてなかなか眠れず。
 だけど気づけば熟睡していて、朝は少し遅めに目が覚めた。

 このまま俺、いつまで理性を保てるのかな……。

 昼を過ぎて屋台で美味いモノ食ってから冒険者ギルドへ。
 素材を買い取って貰おうとカウンターに向かうと、

「誰か手伝ってくださーいっ」

 俺の顔を見るなり、受付嬢のライナさんが助っ人を呼ぶために叫んだ。
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