ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~

夢・風魔

文字の大きさ
26 / 52
2章

第──26

しおりを挟む
 朝の俺仕事は、ノームと一緒に野菜の収穫だ。

「しかし……もうこれ食べきれないぞ」
『むぅ~』

 昨日だけでも10日分ぐらいの野菜を収穫したんだぞ。で、また同じ量を収穫したんだけど、どうすんだ。
 だけど収穫しなきゃ腐るし。里に持っていこうにも、向こうだって順調に収穫できているという。
 どこかに売りに行くか?

『むっ! むむむっ!!』
「どうした?」

 ノームが突然怒り出して、柵のほうに向かって駆け出す。
 畑を荒らす動物かな?

 動物の姿が見られるようになったとはいえ、その数はこの周辺だけでも十数頭程度。
 家や畑の周辺には雑草も生えてき始めたが、それでも足りないらしい。それとも野菜が美味そうに見えるのか?

『ききゅうっ』
『むむっ』

 警戒心が強く、近づくとすぐ逃げてしまって姿ははっきりと見たことがない。
 けど、柵越しにもっさもさした毛玉が見えた。
 大きさは兎ぐらいか?

「ノーム、どうせ柵の中には入れないんだ。そう怒るなよ」
『むむぅ』

 しょうがねーなという感じでノームが戻って来る。
 毛玉はそこから動かず、だけど柵で顔はよく分からない。

「そうだ。いらない葉っぱがあったよな。おーい、シェリルー」

 名前を呼びながら家に戻ると、彼女が嬉しそうに出迎えてくれる。隣でリシェルが少し拗ねているようにも見える。
 こんな出迎えられ方したら、嬉し過ぎるだろ。

「なに、空」
「あ、うん。昨日使った野菜のさ、いらない葉っぱとかないかな?」
「葉っぱ? スープに使おうかなって思ってたんだけど。いるの?」
「あ、いや。使うならいいんだ」

 毛玉には悪いが、シェリルは食材を無駄使いしないからなぁ。

「待って空。何に使うか知らないけど、昨日の野菜、葉っぱは先に取ってしまおうと思うの。葉物はすぐ痛むし」
「そうですね。勿体ないですけど、あんなにたくさんあったら、食べるのも追いつきませんし。今日の収穫もあったのでしょう?」
「昨日と同じぐらい」

 苦笑いでそういうと、二人もつられて同じように笑った。

「実はさ。柵の外に毛玉がいて」
「「毛玉?」」
「まぁあいつらもひもじい思いしてるだろうし、少しぐらいお裾分けしようかなと思って」

 顔を見合わせた二人は、俺について外へと出る。
 お、まだ毛玉いるようだな。
 少し近づくとビクりと体を震わせたが、それでもやっぱり動こうとしない。
 根性の座った奴だな。

「あれ、パチパチ兎だわ」
「かなり汚れているけれど、パチパチ兎ですね」
「パチパチ……え? も、モンスターなのか!?」
「「え?」」

 首を傾げる二人。
 え? 違う?

「静電気を発生させる。ただの兎よ」
「森の動物です」

 この世界の動物は、静電気を起こすのか。そうなんですか。

「あれに食べさせるの?」
「ふふ。空さんは動物好きなんですね」
「ふふーん。優しいのねぇ~」
「そ、そういうんじゃなくって。ほら、野菜がいっぱい余ってるだろ? 分けやれば、あいつら畑を荒らそうとしなくなるかもしれないじゃん」

 柵はそれなりに頑丈ではあるけれど、ガンガン頭突きでもされればいつかは壊されるかもしれない。
 それなら餌付けして、柵を壊さないようにさせるのも手かもしれない。
 あとちょっと……。
 ペットへの憧れもあるんだよ。

「俺さ、ほら。空気清浄スキル使わなかったら、くしゃみ鼻水止まらなくなるって言ったじゃん?」
「そうですね。里に運んで意識を戻された時も、少しくしゃみなさってましたね」
「スキルがなかったら酷いの?」
「そりゃもう。花粉の時期は生き地獄だったよ」

 自然が豊か過ぎる異世界は、俺にとって死の世界みたいなもの。
 だけど空気清浄スキルで何事もなく暮らせている。マジありがたい。

「けど俺のアレルギーの原因って、花粉だけじゃなくって、ペット──動物にもあるんだ」
「動物?」
「ノミやフケとかでしょうか?」
「そそ。だからさ、動物に触りたくても触れなかったんだ」

 じゃあ触りたいのかと二人に尋ねられ、そりゃまぁ可愛い奴は触ってみたい。本当にもふもふなのか、確かめてみたい。

「ふふ。仕方ないわね。まぁ野菜はバカみたいに余るんだし、腐らせるよりいいわ」
「そうですね。森の動物たちが増えれば、生態系も戻ります。分け与えて共存できるなら、それがいいと思います」
「ありがとう二人とも。そうだ。暑さ対策で木を植えようって話したじゃないか? どうせなら実のなる木にしたらどうだ?」
「動物が食べれるように?」
「いいですね、それ」

 出来ればすぐにでも実をつける木を植林できるといいんだけどなぁ。

 シェリルが家の中へと戻って野菜の葉っぱを持って来てくれる。
 その葉っぱを俺たちは毛玉から少し離れた柵の外へと投げた。
 で、俺たちがいたら警戒するだろうしと思って家に入り、窓からそっと三人で覗いていると。

「あ、毛玉動いた。おっそいなぁ」
「葉っぱの方に向かってますね」
「あぁっ。他の動物来ちゃったぁ~」

 なんと。
 毛玉が到着する前に他の動物たちがダッシュでやって来て、全部食われてしまった。
 か、可哀そうな毛玉。
 あいつのために用意してやったのに。

 いや、野菜ならまだある。さっき収穫した奴が。
 急いで外に出、野菜を持ってキッチンへ。

「シェリル、頼む!」
「任せて! はっ」

 見事な包丁さばきを披露してくれたシェリル。彼女から葉っぱを受け取り、俺はひとり外へと出た。
 すぐに動物たちは逃げていく。ただ毛玉だけが動かず、まるで俺のことを待っているかのようだった。

 今度は離れた所になんか置かない。こいつはきっと俺を待っている。いや葉っぱか。
 刺激しないようにゆっくり歩いて行き、柵まであと数歩。
 
 そこで俺は気づいた。
 こいつ、動かないんじゃない。動けないんだ。

 怯えてプルプルしている毛玉の体は、あちこち赤い染みが付いていて。
 怪我をしているんだな。それで歩くのも遅かったんだろう。

「ごめんな。気づかなくてさ。ほら、いっぱい食え」
『きゅ、きゅうぅぅ』

 もさっとした毛の隙間から赤い目が見えた。
 すぐに顔は伏せられ、柵越しに俺が落とした葉っぱへと向けられる。
 シャクシャクという音が聞こえてきて、それは葉っぱが全部なくなるまで続いた。
  
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...