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1章

第──10

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 目の前に浮かぶのは超巨大シャボン玉。
 どれだけ大きいかって言うと、高校の体育館ぐらい。
 俺の目の前に浮かんで、腐王の屍らしき団子まですっぽり収まっている。

 なんで急に巨大化したんだ?
 他にシャボン玉はないようだけど──そう思って手を伸ばした。
 なんとなく触れてみようかなぁって思ったんだろうな。

 指先がちょんと当たった瞬間、弾けた!?
 そして爆風キタアァァァァァーッ!

「「きゃあぁぁっ」」
「リシェル、シェリル!」

 咄嗟に二人の手を掴み引き寄せ、そして両手で包み込んだ。

「うわあっぁぁっ」
「あ、ニキア──マスター!」

 でも俺、両手塞がっちゃっててもう助けられないよ。
 いいよね。ニキアスさん転がって行ったの腐王とは反対方向だし。
 ニキアスさんだし。

 それに爆風はすぐに収まった。

 弾けたシャボン玉は小さな光の粒となって降り注ぎ、それが地面へと吸い込まれていく。
 すると今度は地面がキラキラ輝き始め──。

「綺麗……何が起こったの?」
「地面の精霊力が……回復していきます。空さん、今のは?」
「この輝き、二人にも見えるのかい?」

 シャボン玉は俺以外誰にも見えない。でもこの光は見えている?

「今のはスキルレベルがカンストした時に起こる現象だね。カンストした瞬間に使ったスキルは、普段の数十倍の効果を発揮するんだ。俺も何度か経験あるから、間違いないよ」
「あ、やっぱりご無事でしたかマスター」
「やっぱりって……酷い弟子だ」
「心配する必要性を感じなかったので。それよりスキルカンストって、今朝の時点でまだ96だったんですよ? 半日でレベル3つも上がるなんてそんなこと……」

 ニキアスさんは有り得なくない話だと言う。
 
「ここの瘴気はとてつもなく濃かった。一度の浄化で通常の何十回、いや何百回分にも相当したのだろう。それでこの短期間でレベルが上がったのだよ」
「そ、そうなんですかね」
「そんなの、ステータスを確認すればいいじゃないっ」
「空さん、ステータスをご覧ください」

 俺を挟むようにぴったりと寄り添うリシェルとシェリル。
 二人に見つめられちょっとぐっとくるものがあるけれど、まずは言われた通りステータスを確認する。

「ステータスオープン──」


 由樹 空 17歳 男
 職業:空気師 LV12
 属性:空気
 筋力:125 体力:113 敏捷:116
 器用:125 魔力:99 幸運:30

●スキル●
 空気清浄99★ / 空気操作1


 ほ、本当にスキルがカンストしている!?
 そ、それに──。

「新しいスキルが出てる!?」
「え? 見せて見せてっ」
「空気、操作? これはどんなスキルでしょう?」
「さ、さぁ?」

 攻撃系スキル……には見えないな。
 強力な攻撃スキルでモンスターをばったばったと蹴散らし、森に平和をもたらす勇者に。
 なぁんて夢見たこともあったけど、俺はそういう役柄ではないらしい。

 いやいや。空気清浄の力で瘴気を浄化しているんだ。今でも英雄みたいな扱いをされることもあるし、十分じゃないか。
 ま、加湿機能じゃなかっただけ、ラッキーだよな。

「リシェル、土を触ったりしてどうしたんだ?」
「はい空さん。土の状態を見ておりました。これならここでもノームを召喚できそうです」
「ノームって、土の精霊?」
「はい」

 にこりとほほ笑んだリシェルは、さっそく精霊魔法を行った。
 俺には分からない言語でごにょごにょ唱えると、足元の地面がぼこぼこっと盛り上がった。
 そこから出てきたのは雪だるまを土にして、手足を生えさせたような形の物体。スノーマンの土バージョンだろうか。
 大きさは俺の掌にギリギリ乗りそうな物で、高さは30センチもないだろう。

『んニー』
「穴を掘って欲しいの。お願いできる?」
『ニっ』

 短い手で敬礼しているが、全然頭に届いてない。
 ヤッベ。これちょっとかわいいぞ。

 と思ったら足元がノームだらけ!?

「い、いつのまに出てきたんだ!?」
「あんたがリシェルをじっと見ている間によ。ふんっ」

 ぷいっとそっぽを向いたシェリル。なんで機嫌悪いんだよ。

 何十体ものノームが腐王の屍の近くに集まると、何故か円を作って踊りだした。
 うんどこどこどこ、うんどこどこどこ。そんな感じ。
 で、ぼこっと穴があく。

 おいおい、嘘だろ。
 そんなんで穴が掘れるのかよ!!
 
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