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1:チョコ・ミント

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「名前はチョコ・ミントでお願いしますっ」
『重複チェックを行います──該当キャラクターネームの使用者は他にいらっしゃいませんので、使用可能です。決定いたしますか?』
「はい!」

 推薦高校へ合格したから、あとは高校入学まで遊べる!
 この『World Skill Fantasy Online』が、わたしにとって人生初のVRMMOになる。
 中学では新体操をやっていたから、ゲームをする暇もなかったし。
 やぁっと遊べるようになったも~ん。

 名前の次は種族選び。いろいろあるけど、私が選ぶのは──

「ハ、ハーフリングでお願いします」
『ハーフリングでございますね。それではキャラクターメイクを開始いたします』

 身長が低いっていうのが、地味にコンプレックスなの。
 このハーフリングっていうのは、大人でも身長120センチから130センチ。小さな体の種族なんだって。
 つまり身長147センチのわたしは、ハーフリングでは巨人に相当するのだー。わーはっはっは。

『ハーフリングですと130センチまでしか設定できません。そのように身長バーを必死に弄っても、システムとして不可能です』
「はう!? す、すみません……」

 じ、じゃあ130センチに設定っと。
 い、いや。小さいハーフリングさんを見下しているんじゃないんだからね。
 お、大きいからって優越感に浸ったりはしないんだよ。

 やっぱり125センチにしよう。
 うん。十分大人な範囲だね。ふっふっふ。
 
 ホログラムディスプレイの放つ光りだけが辺りを照らす空間に、ブンっと音を立ててわたし・・・が浮かんだ。
 ううん。わたしっぽいけど、ちょっと違う。
 身長が!

 ふ、ふふふ。本物のわたしの方が背が高いんだから~。
 
『キャラクターメイクはこのままでよろしいですか?』
「はうっ。ま、待ってください。えと、えっとぉ──」

 淡々と仕事をこなすできるOLみたいな感じの声に、慌ててキャラクターの外見を決めていく。
 声はAIだっていうけど、本当に中の人とかいないのかなぁ。まぁ姿も見えなくって、声しか聞こえないんだけど。

「んじゃー、名前をチョコ・ミントにしたしぃ。やっぱり髪は水色だよね! あ、メッシュとか入れられますか?」
『可能です。メッシュを入れたい部分の髪に触れてください──いえ、アバターキャラの髪に触れてください」
「ふぇっ。ご、ごめんなさいっ」

 思わず自分の髪触っちゃった。
 目の前の小さなわたしの髪に触れると、カラーを選択するウィンドウが出てきた。
 チョコだし、黒……すこーしだけ茶色を混ぜた感じかなぁ。
 
 ゲームをするにあたって、動きやすいほうがいいよねってことで髪はツインテールにしてあるの。
 横上を少し残して耳のところから垂らしてるんだけど、その一部に色を付けた。

「うん。なんだか触角みたい。ふへへ」

 あとは目の色は薄い赤紫にして、目力を付けようっと。
 ヨシ!
 水色の髪に赤紫は映えるね。

「これでオッケーです」
『続きまして、職業を決定してください。各職業の説明をお聞きになられますか?』
「あ、いえ。わたし、錬金術師って決めていますから」
『承知いたしました』

 モンスターと戦って冒険もしたいけど、可愛いお店屋さんも憧れちゃう。
『World Skill Fantasy Online』は正式サービスが始まって、二週間過ぎてて、情報サイトも結構あったりするんだよね。
 それを見ながら、錬金術師だとポーションが作れるし、お供のホムンクルスと一緒に冒険も出来るって書いてあったの。

 イメージした形のものを作れる『錬成』。
 これ一つでいろんなことが出来るんだって!
 
 でも何故か錬金術師は、不遇職だって言われているみたい。
 
 うん。そんなの気にしないもん!

『それではステータスポイント100を、それぞれのステータスに割り振りしてください。各ステータスは、最低でも1振ることが原則となります』

 ナビゲーターさんの声が終わると、新しくホログラムディスプレイが出てきた。
 名前と職業が書かれた下に、STRとかVITとかある。それぞれの横に『+』『-』があって、これでステータスを振り分けられるってことね。
 今は全部0。一番下にステータスポイント:100って書いてある。

「ステータス……で、DEXっていうのが、錬金術師にはお勧めなんですよね?」
『スキル『錬成』を使用する際、プレイヤーがイメージしたビジュアルに対し、システム側で自動修正が入ります。DEXが低いと下方修正が、高いとより正確な造形となります』

 他にも、錬成の純粋な成功率に関わってくるんだって。
 失敗すればぐにゃ~っとした謎の物体が出来上がったりするんだとか。
 じゃあ他を最低限必要だっていう1にして──残りは全部DEXにしちゃえいっ。

「こうこう、こうっと。できましたー」
『再設定は出来ませんが、よろしいですか?』
「はい。よろしいですっ」
『続きまして、武器の選択を行ってください。ここで選択した武器には、専用のマスタリースキルを習得できます』

 ぐっ。ここからが問題なんだよね。
 職業ごとに装備できる武器は決まってるんだけど、ここで選んだ武器だけは、最初から武器性能を上げるスキルってのが貰えるんだって。

 この『World Skill Fantasy Online』には職業レベルが存在しない。
 じゃあどうやって強くなっていくのか──それは全てがスキルで左右されるゲームなの。
 いかに早い段階で必要なスキルを手に入れられるか、それが重要なんだって。

 武器はもちろん持ち替え自由だけど、基本性能を上げるためのマスタリースキルが無いとゴミだって情報サイトにあったわ。
 剣とか槍とか弓、杖なんかのメジャーな武器なら、どこでマスタリーを学べるかって情報は出てるけど、それ見ると最初の町とは違う場所なんだよね。
 だからここで選択する武器で『World Skill Fantasy Online』をずっと遊ぶ方がいいんだって。

『どの武器の使い勝手がいいか、模擬戦にて確認いたしますか?』
「模擬戦?」
『実際に使用可能武器を使って、スライムとの戦闘が行えます。ご自身で一番使いやすいと感じた武器を選ぶほうが、よりプレイしやすくなりますよ』

 おお!

「じゃあ、お願いします!」





「ふえぇぇ。直接斬ったり突いたり叩き割ったりって、ぶにゅって感触があって怖いよぉ」
『とても残念ですが、チョコ・ミントさまは前衛スタイルは不向きだと思われます』
「わたしもそう思います」

 最初に使ったのは短剣。それでえいやっと、ぷるぷるするスライムさんを斬ったんだけど……。
 ぶにゅんってなって、ぱーんってなって。
 手にその感触がダイレクトに伝わるから、その次に持った片手剣でスライムさんを斬るのが気持ち悪くなっちゃったよぉ。
 斧も──槍も──同じ!

 最後に残ったのは……。

「鞭ですか?」
『中距離タイプの武器となります。攻撃力は短剣にも劣りますが、敵の動きを封じたり、近づく前に攻撃ができたりとお得な仕様です』
「おぉ! いいですねそれ」

 ブンっと現れた鞭。
 それを手に取って──。

 鞭……鞭って言ったら、やっぱり女王様だよね。

「おーっほっほっほ。じょ、女王様とおよ──はっ!?」
『ではスライムを出現させます』

 ほえぇぇ!?
 そ、そこスルーしちゃうの?
 突っ込んでくれないのぉー?

 ぐすん。なんだか余計に恥ずかしいです。

 もう、スライムさんが悪いんだからぁーっ。

「えいっ──あ」

 扱いやすい。凄く手に馴染んでるし、ぶにゅって感触もあんまりない。
 そうか。
 新体操やってて、一番得意なのってリボンだったんだ。

 鞭って──リボンだったんだ!!
 
『最後に、ボーナススキルの選択を行ってください』
「はいっ」

 職業専用のスキルの中から、一つだけここで貰えるスキル。
 それ以外は各職業のギルドっていうところから、お金を払って覚えたり、ヒントを貰って自分で探したりするんだって。
 楽して貰えるスキルはこの一つだけってこと。

 もちろん、ここは──

「『錬成』をください!」
『畏まりました。これにてキャラクター作成を終了しますが、全て決定でよろしいですか?』
「もっちろん!」

 そう返事をすると、それまで開いていたホログラムディスプレイも閉じちゃって、真っ暗に!

「ほ、ほえぇっ。何にも見えないよぉ」


 ──『World Skill Fantasy Online』
 ──神々の大戦から幾百年の月日が過ぎ、しかし世界は未だ混沌に包まれていた。
 ──あなたはひとりの住民として、この世界で生きていくことになります。
 ──さぁ、旅たちの時がきました。
 ──あなたの行く未来に、どんな冒険が待っているのでしょう。

 
 そんなメッセージが浮かんで、そして──

 真っ暗だったわたしの世界に、色が生まれた。



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ジャンルは違いますが、新作に異世界転生物を投稿しております。
こちらもぜひよろしくお願いいたします。

https://www.alphapolis.co.jp/novel/475542718/845381751
『錬金BOX』で生産チート+付与無双~無能と罵られ侯爵家を追放されたが、なんでも錬成できる箱のおかげで勝ち組人生を送れそうです~
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