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「ミャーニー! モグラキング倒してきたぞ~っ」

 リリーチェさんのテレポートで凱旋した俺たちを、ミャーニーたちは笑顔で出迎えてくれた。

「ミャー。それで、どんなボスでしたかミャ?」
「えっと……あ」

 ボスの情報、ミャーニーに話してもいいものだろうか。
 
「どうする?」
「もう倒しちゃったし、いいと思う」
「ギルドがあれば情報を買ってくれるらしいんだけどね」
「ご安心くださいミャ。私が知り合いのギルド職員に、情報を買って貰いますミャから。代金はこちらで支払いミャすミャよ」

 おぉ!
 じゃあミャーニーに情報を売ろう。
 こうして俺たちは情報料として、15000Gをゲットした。

「さぁ、清算しましょ」
「モグラキング、意外と良い物出してくれたよね」

 二人はワクワクした様子でにゃんごたちの近くに腰を下ろす。俺も同じように、彼らの向かい側に座った。その隣にワオールだ。
 空が薄暗くなりはじめる微妙な時間。
 焚火に火を灯し、それを囲んでお互いのアイテムゲット報告会だ。

 ティト君は土竜籠手という、手の防具をゲットしていた。防御力も高く、追加されるHPも普通の手袋より断然高いとのこと。
 これはそのままティト君が使う方が良いだろう。

 リリーチェさんはサングラス。

「え、まさかあのサングラス?」
「そうかも。遮光効果って書いてある。一応MP+10だけど……微妙」
「え……割と俺欲しいんだけど」

 効果とかMPとかではなく、お洒落として。

 そして俺がゲットしたのは、大地のリング。
 指輪のアクセサリーで――。

「え!? 『ロック』レベル1が使えるようになるの!?」
「うん、そう書いてある。ただしスキルのレベルは上がらないようだよ」
「だけど欲しいっ」
「じゃあサングラスと交換しないか?」

 ロック――土系の攻撃魔法のようだ。
 俺には必要ない。魔力1の俺が魔法を使ったって、ロクなダメージは出ないだろう。しかもスキルレベルは上がらないんだ。いつまでたってもゴミみたいなダメージしか出せないってことになる。
 サングラスならMPも10だが増える。そうなるとMPは合計60に。
 エナジーディストビューでMPを分けられる量も、25から30に増えて有難い。

「性能としては、リングの方が圧倒的に良いよ?」
「でも俺には必要ない装備だし、サングラスの方が俺個人としては良い物だよ」
「そ、それじゃあ……あ、これも貰って! お兄さんだと絶対喜びそう。なんで私がこんなの持ってたんだろう」

 リリーチェさんとアイテム交換をし、そこには『よく掘れるスコップ』という道具が。
 鑑定すると、『穴掘りモグラが使っていたスコップで、土を掘る効率が二倍になる』と書いてあった。

「効率二倍!! す、凄いっ」
「お兄さんの目、キラキラしてるわね」
「うん。嬉しそう。そのスコップ、たぶんワオールが倒したモグラが落としたんだろうね」
「リリーチェさんっ、ワオール、あとティト君も、ありがとう!!」

 受け取ったスコップを取り出してみると、なんともまぁ、柄の部分に『スコップ魂』という文字が。
 あぁ、イイ。すっげーイイ。めっちゃかっこイイ。

「じゃあ、夕飯になるまでにゃんごのお家を建てましょう」
「え……穴掘り……」
「お・う・ち。真っ暗になるんだからぁ」

 確かに空には星が浮かんでいた。

「ニャー。有難いニャー」

 にゃんごが笑顔でこちらを見ている。
 顎、撫でてやろう。

「ニャー。ゴロゴロゴロ」





 この世界の月は、いつ見ても丸い。
 そんな満月の下、リリーチェさんのホーリーライトに照らされて作業は続く。

「筋力なんて上げたくないもんっ」

 そう言うリリーチェさんは灯りと、屋根材に青い顔料を塗る作業を手伝ってくれた。

「私でも出来るの?」
「塗る作業は誰でもできますミャ。丁寧に塗れば綺麗に塗れミャすし、大雑把に塗ればムラが出来ミャすミャよ」
「つまり塗装技術はリアル重視なんだな」

 刷毛とローラーの二種類を、にゃんごは販売している。
 刷毛は当たり前だが、細かい部分用。
 屋根材は大きいので、ローラーを購入してリリーチェさんに渡す。

「お兄さん、私ペンキ塗りとかしたことないんだけど……」
「あぁ、うん。コツはね、一度に塗ろうとしないことだ」

 ローラーにたっぷりとペンキを染み込ませ、木材にWを描くように乗せていく。
 W一回ごとにペンキを点けなおし、全体に配り終えたら塗る向きを変え伸ばしていく。
 再び向きを変えジグザグに伸ばしていって、最後は一方方向から伸ばせば色むらも少なく綺麗に塗れる。

「ふぅん。手間がかかるのねぇ」
「ローラーをコロコロするときは、床のゴミ取りのアレみたくやらず、スピードは遅めにね」
「うわぁ、時間掛かりそう」
「うん。そうだねぇ」
「でも頑張る! にゃんご、待っててね」

 リリーチェさんの笑顔に、にゃんごは照れ臭そうに顔を赤らめていた。
 そして――。

「ニャー。あっしもペンキ塗りぐらいニャら、お手伝いするニャ」
「え、いいの!?」
「ニャー」

 おぉ。NPCも手伝ってくれるとか、このゲーム凄くない?
 仲良く向い合わせに作業を進める二人。
 こっちも負けていられないな。

 ティト君は一度手伝ってくれているのもあって、何をどうすればいいのかよく理解してくれている。
 コピーした図面を見ながら、重い木材をテキパキと設置してくれた。

 俺はというと……ティト君が立ててくれた柱に筋交いのように木材をかませ、ベニヤ板のように薄い木材を釘で打ち付けていく。
 そのベニヤ板に土壁材を塗り込んでいって――。
 塗り込んだ場所に、ペンキ塗りを早くも終えたリリーチェさんが薄い煉瓦を、地面から50センチのところまで貼り付ける。
 そこに柱立てを全て終えたティト君もやってきて、煉瓦作業に加わる。

 空が白み始めた頃、壁を完成させた俺は青い屋根材を釘打ちし――。

『ワオオオオォォォォォォォッ!』
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!」
「やったぁ~♪」
「で、出来たあぁぁっ」
「ニャー」
「お疲れ様ですミャー」
「おやおや、完成しましたかぴょん?」
「どれどれ――おぉ、良い店ですの」

 青い屋根の平屋建て店舗は、完成した。
 そのうちキョウの奥さんやガチャ君、ウドマーの奥さんもやってきて、みんなで完成を祝う万歳三唱が始まる。

「ばんざーい!」
「ばんさいニャー」
「ぴょん」
「万歳ですミャ」
「は? え? な、何事!?」
「ばんざー……うわっ、なんか出てきた!」

 青い家の前に、突如人が現れた!?
 こ、これはもしや……。

「お、俺ってそんなに、歓迎……されてるの?」

 照れ臭そうに顔を真っ赤にしたその男は、紛れもなくプレイヤー。
 
 全員が顔を見合わす。
 そして全員が彼を見た。

「え?」

 俺たちは呼吸を整え、声を合わせる。

「「ようこそ! 出来立てほやほやの町《・》へ!!」」
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